アステロイド・シティ
ウェス・アンダーソンは、独特な画面センス(構図と色彩)で知られる監督。語り口としては、『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)では「ホテル」、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ』では「新聞」のように、物語の「外枠」を設定して、その中に「愛すべきイカれた人々」の群像劇を詰め込むのが得意な監督だ。
本作は、トリッキーにも「『50年代アメリカ西部の町』を舞台にした演劇作品」という二重の物語構造。
『50年代アメリカ西部の町』部分はカラー、「それを演じている演劇」部分はモノクローム、という画面の色彩によってこの構造が明示されている。
アメ車、映画女優、核実験、宇宙人襲来、根底にある科学と未来への信頼……といった1950年代アメリカのスピリットが過剰に誇張されて散りばめられた「演劇」部分は、計算された構図とミントグリーンの色彩による「ウェスみ」炸裂。
劇中、演劇ワークショップ(ここで講師を勤めるのが、実際に前衛劇団の俳優として初期のキャリアを積んだウィレム・デフォーなのは嬉しい)に参加した俳優たちが「眠らなければ、目覚められない」とつぶやき始め、やがて大合唱となる場面が圧巻だった。
勝手な解釈だが「映画は夢だ。その夢に眠れ。眠ることで、現実の人生を生きる力が得られるのだから」というメッセージに思えた。
(2023.9.1)
http://www.wonosatoru.com
いいなと思ったら応援しよう!
サポートありがとうございます!
応援していただけたら記事を書くモチベーションがグッと上がる単純な人間です。