産“前”パパ産休を取得してみた結果
2023年度の厚生労働省の調査によると、男性の育児休業取得率は30%まで向上したようだ。
2022年度が17%であるから、倍近い数字だ。
育児休業は、出産後に取得する国の制度であり、
母親は出産前から産前休業を取得することができる。
そこで私は、父親ながら、産前休業を取得することにした。
産後パパ育休ではなく、産“前”パパ産休。もちろんそんな言葉はない。いま作った。
産後休業・育児休業が男女ともに制度化されて推奨されている中、
なぜ産前休業は女性しか制度化されておらず、男性の制度はないのか疑問であった。
産前休業は、母体の安全のため出産予定日の6週間前(公務員は8週間前)から取得できる制度だ。
また出産予定日の4週間前からは臨月となり、いつ出産してもおかしくない時期とされている。
突然何が起きるかわからない中、日常の暮らしを安全な環境で安心して過ごすためには、母子(母体)の近くに大人がいる必要はないのだろうか。
里帰り出産や、両親が同居・近居していればよかったが、さまざまな事情からかなう環境ではなかった。
「出産は交通事故にあうほどのダメージ」との話がある。
必ず交通事故にあうが、いつ起きるかわからない状況は怖ろしい。
こどもが産まれてくる喜びや楽しみと、いつ何が起きるかわからない不安。
ひとりで乗り切れるものだろうか。
出産によるダメージはしっかり休んで回復しなければ、長年ダメージが残るとの話もあり、出産直後から育児休業に入ることは決めていた。
しかし出産予定日はあくまでも「妊娠40週0日」というカウント上の話で、この日に生まれる子は20人に1人、5%ほどの確率だ。
いつ出産してもおかしくないとされる臨月は36周0日から、正産期は37週0日からと、予定日より3-4週も早い。
私は予定日を待って育児休業に入ることは、業務上のリスクだと考えた。
いつ出産するかわからない=いつ育児休業に入るかわからない=いつ引継ぎをすればよいかわからない、という単純発想。
出産予定日になってから引継ぎをすると、予定日より早い出産(育休開始)になったときに、急な負担が引継ぎ相手にもこちらにも発生する。
かといってあまり早くに行えば、出勤しているものの手持ち無沙汰の状態で、育児休業前ということもあってなんだか余計にバツが悪い。
中には、出産予定日の直前や、産後の入院期間中に引継ぎを行い、育児休業に入る男性もいるかもしれないが、慌ただしく引継ぎするものではなかった。
業務説明や進捗共有、客先への挨拶、実際に業務を行いながらの不明点解消など、1か月ほどかかるものと考え、引継期間をどこに設定するか当初は悩んでいた。
後述する出産準備を行うメリットもあり、
臨月までに引継ぎを終えて産前休業に入ることで、職場に迷惑をかけることもなく、自身も安心して業務から離れることもできると考えた。
いつ産まれるかわからない時期に少しずつ引継ぎをする形では、私の心情としては不安やもどかしさがあったと思う。
また産前休業は、当時の家族の形で過ごせる最後の時間にもなる。
臨月に入ってから1ヵ月、妻とともに過ごした時間は、かけがえのないものとなった。
出産時の入院用品の準備や、赤子の服やら何やらの支度、しばらく難しい外食を楽しみながら、とにかく毎日一緒に歩きながら話した。
歩くことで体力も付き、赤ちゃんが下りてくる効果もあるという話だったので、1日数時間、長いときは6時間ほど、いろいろなことを話しながら歩いていた。
私がいなくても妻は歩いていたかもしれないが、いつ何が起きるかわからない臨月に、長時間ひとりで外を歩かせる不安もあった。
それに妻も、足元も見えないほどにお腹が大きくなった不安定な身で、ひとりで黙々と歩いてばかりでは気持ちもしんどかったのではないかと思う。
産前休業前は、正直なところ「1ヵ月そんなにすることはあるか?」と思っていたため、日々の記録をつけていた。
見返してもわかるが、ボケーっとしていた日は1日もない。ソシャゲや動画を見て1日過ごした日がないどころか、そんなことをしている時間もなかった。
大人だけの生活空間には、赤子にとって危険なものも多い。
天井まである大きな書棚は解体し、腰高程度の家具を見に行って選び、注文し、組み立てた。
さらに地震で家具が転倒しないように耐震ストッパーを設置し、本が飛び出さないように耐震テープを貼るところまですれば、数日を要する。
こどもが過ごすスペースをつくるための模様替えがあれば、家具の移動を身重の女性一人で行うことは難しいだろう。
収納の中にある、本や書類、衣服などの整理にも数日を費やしている。
バウンサーやベビーベッド、ミルクづくり道具の準備、口にするものはすべて煮沸消毒、大量の赤子服の洗濯、家中を清潔にするための大掃除、育児書での知識習得など、それぞれ1日~数日かかるものも多くあった。
すでに用意していた入院グッズや赤ちゃん用品も、改めて確認すると足りないものも出てきて、急遽購入しに店まで行くこともあった。
それらの準備にあたっては「産前・入院・産後・新生児グッズ」のチェックリストを作成したが、101点の品数が候補になっていた。
それら一つひとつの要・不要を検討し、自分たちで購入するか・家族や友人がプレゼントしてくれるか・後に購入するか、そこまで決めていく。
すべてを完璧にする必要はないが、産後は赤ちゃんのお世話でてんてこ舞いになって、そうしたことは全くできないと想定していたため、
この時期に一気に事前準備ができたことは、とてもよかった。
これらのことを臨月の母ひとりで出来るのだろうか。
出来てしまうと「あ、旦那いらないね」となってしまわないだろうか。
鼻歌まじりに手編みの毛布を編むなんて、キラキラSNSの見過ぎですよ、おとうさん。
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