防災分野にも「女性リーダー」が必要だ
自然災害の発生頻度の高まりと激甚化が顕著となる中で、防災対策に男女共同参画の視点を取り入れる動きが加速している。災害の影響や必要な支援に男女で違いが生じることや、非常時に固定的な性別役割意識が強く反映されると懸念されるためだ。
政府は昨年5月、災害時の避難所における女性への配慮事項を盛り込んだ自治体向けの防災指針を改定。平常時から男女が一緒に訓練や計画に取り組むことで、対応力の強化が期待されている。
避難所運営に経験を反映
1月10日、群馬県高崎市内で開かれた新春恒例の市消防隊出初め式。新型コロナウイルス感染拡大の影響で規模を縮小したものの、消防隊員や消防団員らに続いて市女性防火クラブ(樋口啓子会長)の27人がそろって行進した。
女性防火クラブは家庭での火災予防を目的に1962年以降、全国で発足。県内には地域ごとに91のクラブがあり、高崎市は40~80代の833人が活動する。住宅用火災警報器の設置啓発をはじめ救命講習や救助訓練への参加、自主防災組織への協力など近年の活動は多岐にわたる。
樋口会長(67)は住んでいる地域の自主防災組織の副会長や市防災会議の委員も務める。「女性は災害時に気遣いができる。新型コロナで延期になっているが、避難所の開設訓練を実施して災害に備えたい」と語る。
意思決定の場への参画に課題
ただ、意思決定の場への参画には課題が残る。昨年4月現在、地域防災計画の見直しなどを審議する県防災会議の委員48人(会長を含む)のうち女性は12・5%の6人で、全国29位だった。委員名簿を見ると、公的機関や外郭団体の長が充て職で就いているため、結果的に男性が大多数を占めている状況だ。
(参考記事)
地方防災会議の女性委員比率目標 県内自治体達成ゼロ 全国も2%弱
全国的には女性委員の割合が4割を超える県も複数ある。委員の一人で、日本防災士会県支部副支部長の赤羽潤子さん(66)=高崎市=は県男女共同参画推進委員会委員も兼務。「団体のトップだけではなく役員や現場のリーダーまで目を向ければ、女性を増やせるのではないか」と指摘する。
自身は地域防災に加えて在宅介護や高齢者の見守り活動も続けている。「子育てや介護、看護を日常的に担っているのは女性であり、災害時の避難所運営ではその経験が生きる。女性がリーダーシップを取った避難所は快適な環境が維持され、復興が早いと言われている」と強調した。
「防災ノート」作製で分かりやすく
政府が昨年5月に改定した防災指針は「平常時からの男女共同参画の推進が防災・復興の基盤となる」など七つの基本方針を定め、段階ごとに取り組むべき事項をまとめた。県は今月、この改定指針などの内容を分かりやすく伝えるリーフレット「防災ノート」を作製した。
地域防災のリーダーや避難所となる学校施設の関係者が活用しやすいよう、避難所運営のポイントや女性が利用しやすい避難所の配置図、赤ちゃん用品などの備蓄チェックシートを盛り込んだ。
作製したぐんま男女共同参画センターは「日ごろの備えに役立て、防災分野への女性参画を増やすきっかけにしてほしい。ノートを使った出前講座なども開いていきたい」としている。
(2021年2月9日付上毛新聞『探る 考える 女性参画の現在地』より転載)