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「ウーマン・ネクスト 2021 」国際女性デー特別インタビュー 中村朱美さん(minitts代表取締役)

 3月8日は「国際女性デー」。女性への差別撤廃と地位向上を考える日です。この日に合わせて、上毛新聞社は女性活躍推進に取り組む企業・団体を応援するキャンペーン「WOMAN NEXT(ウーマン・ネクスト) 国際女性デーin群馬」を展開してきました。
 今回は、働き方改革や女性活躍の参考にしてもらうため、minitts代表取締役の中村朱美さん(36)を講師に招き、協賛社を対象にしたオンライン講演会を開催。1日100食限定をコンセプトにした「佰食屋(ひゃくしょくや)」を立ち上げ、飲食店でのワーク・ライフ・バランスとフードロスゼロを実現した中村さんに、「女性が働きやすい会社は誰もが働きやすい会社」と題して語っていただきました。

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(以下は3月8日付上毛新聞に掲載されたインタビューの転載です)

 京都で「佰食屋」という、1日100食限定の国産牛ステーキ丼専門店を経営している。大学卒業後、専門学校で事務の仕事をしていたが、28歳で起業した。なぜ飲食店を始めたのか。その発端は30年前にさかのぼる。

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「家族で晩ご飯を食べる」生活にあこがれ

 私の父親はホテルのレストランでシェフをしていたので、どうしてもディナー営業が終わらないと帰れない。「家族全員で晩ご飯を食べたい」。それが当時6歳だった私のささやかな願いだった。

 この30年で時代はとても便利になった。でも、飲食業や接客業はいまだに低賃金・長時間労働、土日祝日や年末年始は休めない、子どもの行事に参加できなくて当たり前。人ごとながら「何とかしないと」と思っていた。

 そんな時、料理上手の夫が作ってくれたステーキ丼のあまりのおいしさに、「もっと多くの人に食べてほしい」と思った。これまでの飲食店の常識を覆す新しいビジネスモデルができるのではないか、と思い立った。

佰食屋のステーキ丼

「1日100食限定」制約のメリット

 佰食屋は1日100食限定、ランチ営業のみ。関西なので「もっと売って稼いだら」とよく言われるが、100食という「制約」により、三つのメリットが生まれた。

 一つは「フードロスがほぼゼロ」。仕入れる量が決まっているため、毎日冷蔵庫が空になる。二つ目は、100食だけ、ランチのみという希少価値の組み合わせで「集客効果が上がる」。それだけでは弱いため、原価率を高くした。満足してくれたお客さんがSNSでどんどん発信してくれる。
 三つ目は「早く帰れる」。勤務時間は最長で9時~17時45分。残業は一切ない。子育て中の女性、高齢者、介護中の人などいろんな人が働けるようになった。現在、従業員の9割が女性で、70代で活躍している人もいる。

 私は子どもが2人いる。5歳の息子は生まれつき脳性まひの病気があり、右半身が動かしにくい。朝と夕方と寝る前の1日3回のリハビリが必要。でも、今の働き方なら、それができる。家族全員で晩ご飯を食べるという、子どもの頃の夢をかなえている。

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 働き方改革、鍵は自己決定権

 今、いろんな企業が働き方改革を推進している。残業を減らす、休みを取る、ということをメインにするところも多いが、もし「真の働き方改革」とは何かを尋ねられたら、私は「自己決定権」だと即答する。

 佰食屋では「出勤・退勤時間」「休み」の二つを各自で決められる。長く働く中で、結婚や出産、病気など、人生のフェーズはどんどん変わる。入社した時とずっと同じ条件で働くのは不可能。だから、勤務時間はいつでも何度でも変更可能にした。

 公休・有休も各自で指定できる。店舗に必要な人数は現場が一番分かっている。こちらが管理しなくても、休みが重なりそうな時は従業員同士で自然に調整してくれる。

 一方で、週に1日は出勤人数の多い日を設けている。「余白」があれば新しいアイデアが生まれる。余白が人のやる気を生み出すと考えている

中村朱美

 「取捨選択」と「鈍感力」で自分を幸せに

 かつて就職活動をした時、あらゆる業界の採用試験を受けた。その中で、「これだけは譲れない」というポイントが明確になった。私にとっては「早く帰れる」「転勤がない」ことだった。ポイントは人によって違う。それぞれ自分自身に問うてほしい。

 超多忙な毎日を過ごす人に必要なことは「取捨選択」と「鈍感力」。特に女性は真面目で一生懸命な人が多い。全てを完璧にこなす必要はない。もっと自分を許し、自分の心を大切にしてあげてほしい。自分が幸せになれないと、周りも幸せにできない。まずは自分が幸せになるために専念してほしい。

 私は失敗も多い。でも、守りたい人とかなえたい未来があるから頑張れる。誰もが自分の人生を自分で決められるように、持続可能な働き方を日本中に広げていきたい。

【プロフィール】なかむら・あけみ 1984年京都府亀岡市生まれ。2012年9月に飲食事業や不動産事業を行う「株式会社minitts」を設立。第32回人間力大賞農林水産大臣奨励賞、ForbesJAPANウーマンアワード2018新規ビジネス賞、日経WOMANウーマンオブザイヤー2019大賞など受賞多数

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