その本は
その本は、ぼくの日記である。
生まれてくる前に神様の国で書いていたものである。
神様の国では、ぼくには天使のともだちがいっぱいいた。
ある日神様がぼくにそろそろ冒険の旅に出て見なさいと言ったんだ。
ぼくはそれから毎日人間の世界を眺めて、ぼくが生まれるまちを探してた。ぼくはやさしいおとうさんとおかあさん、おにいちゃんをみつけたよ。
ぼくの仲良しのエンジェルちゃん。
ぼくたちはあっちの世界に行ってもまた一緒に遊べるかな。
向こうで会おうね。
神様はぼくに宿題を出した。
人間の世界に行って何がしたいのか。
どんなことを成し遂げて戻ってくるのか。
ぼくが天使として大きくなるチャンスだとも言った。迷うことがあれば日記を読めと。
ぼくは今2歳と11か月。
3歳の誕生日にこの本は消えてしまう。
神様の国のことをぼくは忘れてしまうだろうか。
エンジェルちゃんも探さなきゃ。
ぼくはまだ字が読めない。
日記が読めない。
ぼくの冒険はこれからだ。
8月の夏休み中に出会った本。「その本は」
又吉直樹さんのYoutube「渦プロジェクト」の「インスタントフィクション」にはまり、最新本を購入して読んだところ、なるほど!面白い!と思った。
そして、これは私にも書けるかも(質は別としてアイデアとしてありかも)と思い、インスタントフィクションとして挑戦してみた。
王様は私が差し出した「その本」をよろこんでくれるだろうか。