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音楽ライター新谷洋子さんに無茶ぶり→「㊗️40周年のモリッシーについて、わかりやすく教えて下さい(短めで)。」


モリッシー、2023年11月来日!

モリッシーの2016年10月以来、約7年ぶりとなる来日が発表されました。

ザ・スミスのデビュー40周年にあたる本年(2023年)、モリッシー”40 Years of Morrissey”と銘打ったワールド・ツアーをスタート。その一環として、東京での一夜限りの超レアな公演が実現する予定となります。
(※2023年9月執筆時点)

「40 Years of Morrissey」東京公演用ツアービジュアル

ソロ・キャリアを追いかけているモリッシー・ファンについては垂涎の来日になることは間違いないのですが。
更にチェックすべきはツアー・タイトルの通り、ザ・スミスを含むモリッシーのキャリアを網羅したセットリストを予定!という、ザ・スミスファンとしても垂涎の情報。なんとしてでも足を運びたくなる触れ込みとなっております。

とはいいつつ、この“モリッシー”というUKロック好きなら必ず一度は耳にする(?)アーティスト。あまり人物については知らないし、正直言うと、曲もそんなに聴いたことがないんだけど…という皆様へ。

ご安心ください。

1983年のザ・スミス初取材から2010年間で、全キャリアから厳選した珠玉のインタヴュー29本を一挙掲載したインタビュー集「モリッシー・インタヴューズ」翻訳者であり、音楽ライターとしても多方面でご活躍の新谷洋子さんに、厚かましくも↓

「㊗️40周年の孤高のカリスマ、モリッシーについて、わかりやすく教えて下さい(※比較的、短めでお願いします)。」

と、大変無礼なオファーを致しましたところ。

ご快諾を頂きました…(新谷さんありがとうございました!)。

というわけで以下より、新谷洋子さんによります、

「㊗️40周年の孤高のカリスマ、モリッシーについて、わかりやすく教えて下さい(※比較的、短めでお願いします)。」

への回答です。それでは、はりきってどうぞ汗!


”Morrissey” モリッシーとは?

Morrissey (モリッシー) ことSteven Patrick Morrissey (スティーヴン・パトリック・モリッシー) が2013年に出版した自伝『An Autobiography』は、自身の生まれ故郷の風景とその閉塞感を描くことから始まる。
それは、不況下の当時衰退しつつあったイングランド北部の一大工業都市マンチェスターであり、1955年5月22日、アイルランドからの移民であるワーキング・クラスの両親の間に誕生。

幼少期にテレビで「You've Lost That Lovin' Feelin' (ふられた気持)」を歌う The Righteous Brothers (ライチャス・ブラザーズ) を見たことをきっかけに早くも歌のパワーに目覚め、音楽に夢中になる。そしてNew York Dolls (ニューヨーク・ドールズ) から Marianne Faithfull (マリアンヌ・フェイスフル) までアウトサイダー的なアーティストたちの作品を愛聴し、灰色の現実から逃避して、自分らしさに忠実に生きる手段として音楽の道を志すようになった。

と同時に、図書館司書だった母から文学への深い愛情を譲り受け(動物愛護の大切さを悟ってヴェジタリアンになったのも母の影響だ)、中でもオスカー・ワイルドを敬愛していることはご承知の通り。
従って読書家ではあったものの、自分が通っていたカトリック系の学校の抑圧的教育を嫌って学業に関心を持たず、大学には進学しないで地味な事務職に就き、バンド活動や音楽関連の執筆活動に勤しむことになる。

そんなある日、共通の知人(現 The Cult (ザ・カルト)Billy Duffy (ビリー・ダフィ)を介してMorrissey に関心を抱いた Johnny Marr (ジョニー・
マー)
 に誘われて、ふたりは共作をスタート。


 The Smiths (ザ・スミス)の結成

1982年夏に Johnny(ギター)、Andy Rourke (アンディ・ルーク)(ベース)、Mike Joyce (マイク・ジョイス)(ドラムス)のラインナップで The Smiths (ザ・スミス) を結成し、インディ・レーベルのラフ・トレードと契約すると、83年5月にデビュー・シングル「Hand In Glove」を送り出す。

早速、BBCラジオの名物DJジョン・ピールの耳を捉えるなどして脚光を浴び、瞬く間に厚いファン層を築いて、84年ファースト『The Smiths / ザ・スミス全英チャート最高2位を記録。

『The Smiths / ザ・スミス』

以後、
Meat is Murder / ミート・イズ・マーダー』(85年/同1位)、
The Queen is Dead / クイーン・イズ・デッド』(86年/同2位)、『Strangeways, Here We Come / ストレンジウェイズ、ヒア・ウイ・カム』(87年/同2位)と、
続々傑作アルバムを生み、英国のインディ・ロックを象徴するバンドとして絶大な人気を確立する。

『Meat is Murder / ミート・イズ・マーダー』(左)『The Queen is Dead / クイーン・イズ・デッド』(中央)『Strangeways, Here We Come / ストレンジウェイズ、ヒア・ウイ・カム』(右)

だが、『Strangeways~』のリリース前に Johnny が脱退したことを受けて、The Smiths はあっけなく解散。

Morrissey はソロに転向し、88年2月にシングル「Suedehead」で再出発を切った。


ソロ・アーティスト”Morrissey”へ

モリッシー『Viva Hate / ビバ・ヘイト』(88年)を皮切りに、コラボレーターを変えながら13枚のアルバムを発表。

うち
- 『Viva Hate / ビバ・ヘイト』
- 『Vauxhall and I / ヴォックスオール・アンド・アイ』(94年)

- 『Ringleaders of the Tormentors / リングリーダー・オブ・ザ・トーメンターズ』(06年)全英#1を獲得。

『Viva Hate / ビバ・ヘイト』(左)『Vauxhall and I / ヴォックスオール・アンド・アイ』(中央)『Ringleaders of the Tormentors / リングリーダー・オブ・ザ・トーメンターズ』(右)

全作品がトップ10入りを果たしている


この間、MorrisseyThe Smiths を聴いて育った次世代のアーティスト――Oasis (オアシス) を始めブリットポップ期の諸バンドから ASAP Rocky (エイサップ・ロッキー) まで――が続々デビュー。

音楽賞の類にはほぼ縁がない彼だが、ロック史上最も影響力を持つミュージシャンのひとりと目され、06年にBBCのカルチャー番組が行なった“偉大な生きる英国人アイコン”を選ぶ視聴者投票では、デヴィッド・アッテンボローに次ぐ2位にランクインしている。


こうも愛される ”Morrissey” の魅力はどこにあるのか?

まずは Johnny と作り出した、ルーツの特定が困難なくらい特異な The Smiths サウンドメロディ・センス、そして同等にエキセントリックなヴォーカル・スタイルが挙げられる。
が、それ以上に重要なのはやはり、キッチンシンク・ドラマ(50~60年代の英国で見られたありのままの日常を題材にする文学や映画のリアリスティックな表現スタイル)に強く影響を受けたその歌詞だろう。

モリッシーは、人間は誰もが孤独な生き物なのだという事実を見つめ、ワイルド譲りのウィットをもって、涙と笑いを同時に催すキッチンシンク・ポップをとめどなく綴ってきた。

悲観的と評されることも多々あるものの、一貫して権威と権力を象徴する存在(教師、王族、政治家ほか)への軽蔑を隠さず、個の自由と尊厳を高らかに歌う姿は孤独を受け入れた人間の強靭さを窺わせ、聞き手をエンパワーする。


最近の Morrissey(モリッシー)

2010年代に入って癌の治療を行なうなど不穏な報道が幾度かあったが、活動のペースは落としていない。
可能な限りツアーを続行しながらコンスタントにアルバムを送り出し(最新作は20年発表のI Am Not a Dog on a Chain / アイ・アム・ノット・ア・ドッグ・オン・ア・チェイン)、

『I Am Not a Dog on a Chain / アイ・アム・ノット・ア・ドッグ・オン・ア・チェイン』

前述した『Autobiography』と、初の小説『List of the Lost』(15年)を出版。

他方で伝記映画『イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語』(17年)も公開され、再評価の機運が高まった。

しかしトラブルとも無縁ではなく、今年2月に発売される予定だった14枚目『Bonfires of Teenagers』は、新たに契約したキャピトル・レコーズとの関係がこじれてお蔵入り。
その後さらにもう1枚、『Without Music the World Dies』と題されたアルバムを完成させたものの、こちらもレーベルが見つかっていない。

また、過去にも歯に衣を着せぬ発言でしばしば物議を醸してきた彼は、ここにきて人種差別と受け止められかねない発言を頻発。
19年には英国の極右政党への支持を表明して激しい批判を浴び、ボイコット運動にも発展したものだ。


元The SmithsのAndy Rourke(アンディ・ルーク)の逝去

かと思えば。2023年5月に Andy Rourke が亡くなった時には心の籠もった追悼文を発信し、Andy の人柄とミュージシャン・シップを讃えた。

モリッシー オフィシャル・サイトに投稿されたアンディ・ルークへの追悼文

「時として、私たちができる革新的なことの一つに、明確に言葉にすることが挙げられる。
誰かが亡くなると、つまらないお世辞を耳にする…まるでその陳腐な言葉のために誰かの死があるかのごとく。
私はアンディのためのお世辞は持ち合わせていない。私はただ…どこにアンディが行こうとも…彼には問題ないことだと願っている。
彼の音楽を人々が聴く限り、彼が死ぬことはないだろう。アンディの実力は彼自身も計り知れず、彼の音楽を演奏できる者は誰もいなかった。彼の独特の才能は、本当に素晴らしく、また型破りであり、アンディはそれを見事に体現した。
そして彼は、とても、とても、面白い男で、幸せな人間であり、ザ・スミス解散の後も、確固たるアイデンティティを貫いた。決して、消費型の音楽へ進むことはなかった。
最後に、私たちは、皆から認められた存在であったと願いたい。アンディはそれについては心配の必要はない」。

モリッシー

(モリッシー オフィシャル・サイトより訳出:
https://www.morrisseycentral.com/messagesfrommorrissey/beam-of-light )

The Smiths のデビュー40周年に記念して9月に始まるツアー『40 Years of Morrissey』では、かつてアンディとプレイした曲もセットに含まれるのだろうし、夜な夜な少なからず複雑な心持ちでステージに立つのだろう。

(新谷洋子)


(※文中見出しおよびYouTube等のlink選定につきましては
ワーナーミュージック・ジャパンのスタッフによるものです)


Morrissey の楽曲をプレイリストでチェック!

◆Apple Music - はじめての Morrissey

◆Spotify - This is Morrissey


来日公演/Morrissey 『40 Years of Morrissey』


Morrissey - Warner Music Japan アーティストページ


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