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災害への備えは万全ですか!?

 こんな問いを投げかけてみたとき、災害への備えとしてみなさんは何を見つめなおしますか?
 ・避難経路、避難所の場所や集合場所、家族との連絡方法??
 ・防災用品や非常持ち出し袋の中身??
 ・通信機器や方法の確認 ??
 いずれも欠かせない準備ですね。ですが今日はもう一つ重要な災害への備えをお伝えしたいと思います。それが…。

被災時にケガや病気になったときの対応法

 通常ケガや病気をした場合、現場にいる人の判断で119番通報によって救急車を要請されることが多いですね。(救急車要請の多くは軽症だという、適正利用…という論点はまた今度として…)
 ここでクイズです!119番通報をしてから、救急車が到着するまでの時間は全国平均でどれくらいがご存知ですか?

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正解は約8分。令和元年の統計だと8.7分と言われています。

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 これが平時の救急システムです。世界でもトップレベル(世界一といってもいいかもしれない)すごい幸せな国に私たちは住んでいます。
 ところが、日本で一番の消防力をもつ東京を事例に、ひとたび大規模災害が起きたと仮定して考えてみましょう。
 
【想定ケース】
 東京都心で首都直下地震(震度7:M7.3)が発生。
 負傷者想定147,600人(うち重傷者想定21,900人)※多摩直下地震が追加で起きると負傷者想定+10,000人。

 つまり、約15万人の負傷者が発生する見通しになっています。ここで冒頭の話に戻しますが、「災害×負傷」となると救急隊や救助隊を求めたくなりますよね。ところが…。
 〇東京都の総人口:約140万人
 〇東京消防庁職員数:約1万8400人(総人口カバー率1.3% 約76人に1名)
 〇想定ケース被災想定負傷:147,000人
 〇東京消防庁保有救急車251台(単純計算フル稼働で585出動が必要)
こうしてデータをパッと見比べたただけでも、圧倒的に足りなさそうです。 
数字だけでなくこれに複雑な状況が加わります。
・携帯電波が圏外で連絡がつかない
・消防署や車両自体の被災、消防官が参集できない状況
・倒壊や液状化による道路の変形、激しい渋滞による走行不能
世界一とも呼ばれる規模を誇る東京の消防力でもやはり大規模災害には耐えられないのです。このような時には消防の他にも警察や自衛隊、近隣部隊との連携もありますが、規模感からしておそらく満足に、とはいかない。災害とはそういうものです。

求められるのは、自助・共助の「救急力」

 つまり、本当の大規模災害がやってきたとき、119を求めたくても「できない」可能性が高いということです。もし自力で医療機関までたどり着いたとしても、次に待ってるのは「トリアージ」とよばれる命の選択。医療機関は限られたリソースを最大限に発揮するため、傷病の程度の深さを判断し、受診できる順番を分別します。4色で分けられ、一番軽症の「緑」に分類された人は、数時間または数日順番が回ってこないかもしれません。
 だまってそのまま待っていて、結果ジワリジワリと重症化してしまい、気づいたときには手遅れ…こんなことも多く起きる可能性もあるわけです。でも、誰も悪くありません。災害とはそういうものです。
 
 では、ここで市民レベルで何かできることはないのか。今日の問いの答えは、多くの市民が「救急救助が来られない時を想定した救急法(野外災害救急法)を平時のうちに習得しておくこと」です。

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野外災害救急法によって例えばこんなことが判断できるようになります。
・命の危機に瀕しているか、否かの判断
・今は大丈夫そうでも、「実は大丈夫ではない」人を見分ける方法
・骨折、打撲、捻挫等の長時間医療機関にかかれないときの処置法
・感染を予防する傷の手当方法、そして感染の兆候を判断する方法
・低体温症やひどい熱中症にならないための判断基準
・避難所等での内科的問題「深刻さ:すぐに医療機関にかかるべき」状態の判断
など

 想像してみてください。もし避難所や町中に多数の傷病者が発生していて、みんな医療機関にかかりたいと思っている。しかし医療機関はパンク状態でトリアージもしている。救助隊の到着もなかなか見込めない。おそらくそうなります。
 そんな時、市民の中に多くの野外災害救急法習得者がいたらどうでしょうか。困難な状況でも医療的な視点から的確な判断や処置がされ、「本当に必要な人が迅速に医療機関に運ばれる」ことが実現できるかもしれません。避難所で待機している傷病者も冷静に重症度を判断されることで安心感が生まれるかもしれません。

 この救急法はよくアウトドアの人のプログラムと呼ばれることがありますが、半分合っていて半分間違っています。災害大国日本では、誰しもが知っているべき内容であり、地域の中ではまず自主防災会のメンバーや消防団員の方々にはぜひ、いや必ずや知っていてもらいたい内容です。なぜなら、これらの方々は大規模災害時に真の力を問われるからです。

「救急力」を高める、WMAカリキュラム

 WMAの野外災害救急法は医師や救助救急隊員らがつくった、医学的根拠がハッキリしているカリキュラムです。個人で参加できる国際資格取得コースから、防災会ごと、消防団ごとにインストラクターを派遣してトレーニングするワークショップまで幅広くカリキュラムの普及に努めています。

 この記事を最後まで読んでいただきありがとうございます。ぜひ一度野外災害救急法に触れてみてください。きっとこの記事の意味をよく理解していただけると信じています。
 毎年どこかで災害が起きる日本、東京都の首都直下地震も30年以内に70%以上の発生確率と言われています。それは、明日かもしれません。

【参考文献】
・東京消防庁HP「東京の消防」
・東京都HP報道発表資料「東京都の人口(推計)の概要(R2.6.1)
・東京防災HP「東京都の新たな被害想定について 首都直下地震等による東京の被害想定」(H24)
・総務省消防庁救急活動の現況(R元年)

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