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ワーキングメモリは伸ばせる? 楽しく学習するのが効果的

ワーキングメモリはどうすれば伸びますか?」
「ワーキングメモリは鍛えられますか?」

親御さんや教職員の方から、相談を受けることがあります。

人それぞれにその容量が異なるワーキングメモリは、会話、読み書き、計算、日常生活のあれこれなど、あらゆる思考、判断や行動にかかわっています。

そのため、WISCなどの知能テストで「ワーキングメモリが低い」という結果が出たら、「トレーニングなどで伸ばしてあげたい」と思うのは親心。

ワーキングメモリの発達については盛んに研究されており、まだ解明できていない部分も多いなか、現在明らかになっている範囲で説明していきます。

ワーキングメモリを子どもの発達とともに成長する

ワーキングメモリは、子どもの発達とともに成長することがわかっています。これまでの研究では、4~15歳の子どもにワーキングメモリを測るテストを実施したところ、課題成績の平均値は、ほぼ直線的に伸びることがわかっています。

ワーキングメモリの発達には、学習以外にも、運動、睡眠、食事、情動など、生活全般の質がかかわります。さまざまな要素が関係しており、たとえばサッカーなどのスポーツでは、単に身体的な能力だけでなく、相手や自分の動きを予想しながら判断すること、つまりワーキングメモリの働きの重要性が指摘されています。

その中でも「学習」は、ワーキングメモリを使います。喜びや悲しみ、恐怖といった「情動」と呼ばれる強い感情がワーキングメモリの発達に影響することもわかっているので、「この学習なら楽しい!」と感じられるような、その子どもに合った方法で学習していくのがおすすめです。

ワーキングメモリを「鍛える」より、「成長を促す」と考える

ただし、「長い時間学習すれば、ワーキングメモリの発達が早くなる」とは言えません。学力に関する研究では、重要なのは学習時間ではなく、学習の質だと言われています。ワーキングメモリの発達を促す場合も、同様と考えたほうがいいでしょう。

また、ワーキングメモリを使わない学習は、ワーキングメモリの発達には影響しません。たとえば、単に教科書をノートに写すだけでは考えるという脳の働きがないため、影響がほとんど見込めないのです。

前述したように、情動がワーキングメモリに影響するため、イヤイヤ学習するより、楽しみながら取り組んだほうが効果的です。

得意を使って苦手をフォローすると、発達が促される

保護者の方には、「能力や資質の凸凹をなくしたい」という方もいらっしゃいます。数値が低い部分を伸ばしたい、平均的にしたいとお考えになることが少なくないようです。

一方、私たちワーキングメモリ教育推進協会では、得意な部分を使って苦手を補っていく方法をおすすめしています。

子どもは学校で、多くの科目を学習しますよね。社会科の勉強でも読み書きをしているように、それぞれの科目は重なり合い、相互作用しています。好きな学習をし、得意な科目を勉強することで、考える力が伸びていきます。すると、苦手な部分を克服する方法も考えられるようになります。

国語が苦手なら「得意な部分を活かして楽しく取り組む方法は何だろう?」と考えてみよう

だからこそ、「この科目(トレーニング)さえやっておけば大丈夫」といったものを取り出すのは難しいでしょう。「算数が得意だから算数だけをやる」ではなく、「苦手な国語も、得意を活かして楽しく取り組める方法は何だろう?」と考えられたら、より効果的です。

たとえば、漢字の形を覚えるのが苦手な子どもの場合なら、「受」を「ノ」「ツ」「ワ」「ヌ」と音に分解して、得意な能力を使います。それにより、形を覚える力も少しずつついていくはずです。

子どもに意欲があるなら、科目の学習だけでなく、ワーキングメモリのトレーニングも有効です。書き写しが苦手な子どもに、点描写などのトレーニングをすると、ワーキングメモリに働きかけることができます。

学習へのアプローチと、ワーキングメモリへのアプローチ、2本の柱で考えていくとよいでしょう。

いずれにしても、「ワーキングメモリを伸ばす」を目的にするのではなく、子どもそれぞれのワーキングメモリの特性を把握して、楽しく効果的に学習する方向に舵を切ってもらいたいと考えています。その結果として、学力やワーキングメモリの発達を促すことができるでしょう。

HUCRoWを受けると、子どものワーキングメモリの特性がわかり、お子さんの学習特性をデータで知ることができます。

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ワーキングメモリの特性に合った「好き」な学習を

楽しく学習するのが効果的といわれても、実際のところ、無理なく、楽しく続けられる学習は、簡単には見つけられないかもしれません。でも、いろいろと試してみて、上手くいなかったらすぐに切り替える。そうやって、自分に合った学習を見つけているお子さんもいます。

たとえば、座談会の記事でご登場いただいた篠崎さんの息子さんは、言語領域のワーキングメモリが低く、文章を読むのが苦手だったため、さまざまなアプローチを試していました。トライしてうまくいかなかったら、そのやり方に執着せずにすぐに新しいことに取り組みました。

その中で続いているのが、語彙を増やすための新聞学習です。中学生になったばかりのころ、簡単な小学生新聞からスタートしました。最初は気になる部分の新聞を切り取って、マーカーを引くだけ。少しずつステップアップして、15歳になったいまでは、要点を3つにまとめられるようになりました。

日常生活でメモを書くにも要点をまとめられず苦労していましたが、新聞学習によって改善していったのです。

また、同じ記事の福山さんの息子さんも言語領域が低く、口頭による説明を理解するのが苦手で、一般的な授業では難しさがありました。そのため、Web上で課題をこなす通信制高校に進み、動画を見て課題を進めるスタイルを選択。動画であればわからないところを何度も確認できるから、今の学習方法が適していると感じているそうです。

子どもに合う学びのスタイルを見つけるまで、いろいろなやり方を試すのは大変かもしれません。私たちワーキングメモリ教育推進協会の母体であるインフィニットマインドでは、「こんな学習が効果的では?」とご提案することも可能です。

講師の言葉を聞き取り、設問に答える「ききとりトレーニング」や、『10分で読める伝記』シリーズの本を使って音読や文章問題に取り組む「よみとりトレーニング」、「しりとり」や「ことばのならびかえ」によってゲームのように取り組める「ことばのトレーニング」など、さまざまなプログラムをご提案できます。

学習方法を探し出そうとすると、やっと見つけたやり方に執着してしまうかもしれませんが、次々と新たな提案があれば気軽にトライできるのではないでしょうか。イヤイヤではなく、楽しく学習することが肝心ですから、ぜひ、お子さまが楽しめる方法を見つけてみてください。 

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編集協力/コルクラボギルド(文・栃尾江美、編集・平山ゆりの、アイキャッチ画像イラスト・北村侑子



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