質問に答えてあげなかっただけで
私がアパレル店長をしていたとき、私以外のスタッフは全員新入社員というメンバーでした。
私一人で全員を面倒見てたのですが、そのせいで彼女たちから、
“もっと先輩がほしい”
という不満が出ていました。
私一人じゃ聞きたいことも満足に聞けないし、もっといろんな先輩の良いところを盗みたかったんだと思います。
彼女たちの向上心ゆえの不満なので喜ばしいことだと思っていたんですが、正直なところ、“私じゃ力不足と言いたいのか?”と面白くない感情もありましたし、“リーダーとして認めてもらえていないのか?”という不安もありました。
でも彼女たちの不満はよく理解出来たので、私の拗ねた気持ちは押し隠していました。
エリアマネージャーがお店を訪問して、スタッフミーティングを行ってくれたときがありました。
エリアマネージャーは、かつて違う店舗で店長をされていたときに私がスタッフだったので、馴染みある上司です。
彼女たちは、私以外の先輩がくることに喜んでましたし、しかもセンス抜群のキャリアを積んだ上司です。たくさんの質問を用意していたみたいでした。
1対1のミーティングを終えて、彼女たちの顔を見たら、みんな腑に落ちていないような表情でした。
感想を聞いても、「勉強になりました」とは言うのですが、表情はなんか違う。
上司は、彼女たちの不満を聞いて、少し叱っておいたと言ってくれました。
「私からもっと学べるものがもっとあるでしょう。」と私をフォローしてくれたようです。
彼女たちはもちろん私をフォローする言葉を理解していたのですが、それよりも自分たちの質問に満足に答えてくれなかったこと、一方的に話をされたことに納得がいかなかったようでした。
上司からすると、重要視しなくて良い質問だったのかもしれません。上司には限られた時間で伝えなくてはいけない話があったんだろうと思います。
ただ、自分たちの質問に答えてもらえなかったということが、彼女たちに不信感を与えていました。
私もかつては、このエリアマネージャーの部下だったので、彼女たちが感じた“質問に答えてもらえない”という不満を、私も同じように感じたことがあるんです。
「そんなことより〜」と質問を退けられると、自分が疑問に思ったところから進めないし、何度も繰り返されると、そのうち自分の考えを否定されているように感じるのです。
一方的に話を聞いていれば良いんだと半ば諦めていったのを覚えています。
彼女たちの表情を見たとき、上司の悪い癖は変わっていなかったんだなと思いました。
質問に答えてあげること、そんなに難しいことなのかな?と未だに不思議に思うんですが、ただこれだけのことがこんなにも信頼関係にひびを入れるものなんだとも感じました。
前に勤めていた会社でも今勤めている会社でも、上司・先輩方が部下である私たちを“仕事を任せてよい人間か?”と厳しい目で見るのと同様に、部下で後輩である私たちは上の人間を、“信頼に足る人間だろうか?”と厳しい目で見ていると思うんです。
上司であれば無条件で信頼してもらえて指示に従って当たり前と思い込んでしまうのは、少し横暴な考えでは?と思います。
上下関係でも信頼関係は、一から積み上げていくものですよね。