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ちらしずし

本日は桃の節句ということで、今夜の晩ごはん、ちらしずし。数年前から毎年この日はちらしずしを作っている……等と書くと、まるで「四季に寄り添ったていねいな暮らし」をしている立派な人間のようだけれど、正直者なのできちんと申告します。固めに炊いたごはんに桃屋の「五目寿司のたね」をぶちこんで混ぜているだけです。五種類もの具材をそれぞれ適切な火加減と味加減で用意するなんて、そんな偉業をぐうたら人間が成し遂げた日には、向こう三日間知恵熱でふせってしまうこと不可避。いや、たぶんかんぴょうを戻し終えたあたりで「もういいかな、よく頑張ったわ」みたいな感じになり、ちらしずしではなくかんぴょう巻きを作ってしまうと思う。


なにしろ天下の桃屋さんの叡智を集結した「五目寿司のたね」なので、味はもちろん間違いなくおいしい。甘じょっぱく煮付けられた具材たちと、ツンと鼻に抜ける酸味の効いた寿司飯のランデヴー、最高です。しっとりとやわらかなしいたけや油あげに、キュッとした歯触りのかんぴょう、ふっくらとしたにんじんに高野豆腐、そしてしゃきしゃきのたけのことれんこん。それぞれに異なる食感が楽しめる。五目と銘打ってあるのに七品目入っているのもすばらしい。


ぐうたらめんどく星人なりに一応頑張ろうという姿勢を見せて、上に飾る錦糸卵と、桃の花をかたどった(つもりの)にんじん煮だけは作っている。まあ、卵焼いて切ったりにんじん型抜きしてめんつゆで煮るだけなんですが。先日も書きましたが、自分はこの錦糸卵を作るのが絶望的に下手くそでして、糸感のまるでない短冊卵を毎年錬成してきました。が!


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なんと今年は自分史上最高にイカしたやつができた。どうだろうこれ。ぎりぎりの崖っぷちで糸に見えなくもない。少なくとも今まで作ってきた中で最も糸みに溢れている。私にしてみたらチンパンジーからホモ・ネアンデルターレンシスへの進化並みの大躍進ぶりだ。出来上がった時はシュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」が脳内で高らかに鳴り響きました。ひょっとして今夜我が家の上空にモノリスが出現していたのかもしれない。ありがとうモノリス、ぜひ来年も来てね。


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錦糸卵とにんじんの他には、桜でんぶとトビッコを添えました。酢飯が結構すっぱしょっぱいので、桜でんぶの甘さがいい仕事をしてくれる。

本当はいくらを散らしたいところだけれど、あの方、お高くていらっしゃるから……。でもトビッコのぷちぷち感も大好き。


副菜は菜の花とツナ缶をごま油と塩で味つけした即席ナムル。汁物はかの名品「松茸のお吸い物」。錦糸卵で力尽きた感まるだしのメニューだけれど、どれもおいしかった。ごちそうさまでした。


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すでに桃の節句を祝うような年頃はとうの昔に過ぎ去っているけれど、毎年二月末には雛人形を飾ることにしている。なぜかと言うと、我が雛人形には「飾るのを怠ると家族に災厄が降りかかる」というジンクスがあるからです。

子供時代は当然母が飾ってくれていたわけですが、なにしろ私のような人間を産み育ててくれた母なので、「うっかり」したり「めんどく」さがる年も、まああったわけです。その全ての年で、母もしくは父が大病したり、大怪我したりしています。母は私が21の時に脳梗塞で要介護になったので(この年も飾るのをさぼったのは言うまでもない)、その後は私がこの任務を引き継いだわけですが……27の時にさぼったらまんまと父が大怪我に見舞われました。それ以来、たとえ2月末にインフルエンザにかかろうとも、このミッションだけは完遂することにしています。両親はすでに亡くなっているけれど、もし自分がさぼろうものなら、おそらく今度は……家を出ている弟たちが危ない。自分は迷信深い人間ではないのですが、このジンクスだけはガチンコだと信じております。でも、一体いつまで続けたらいいのかしら……。自分は子供を産むことはおそらくないと思うので、辞め時がさっぱり分からない。


なんて、

まるで桃の節句がまがまがしい恐怖イベントのように書きつらねてしまいましたが


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数年前に彼女がやって来てからは、我が家の姫さまの健康を祈願するイベントでもあります。これからも気ままに健やかにお過ごしいただきたいものです。

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