香港レモンチキン
今日の昼ごはん、香港レモンチキン。大ぶりに切った鶏もも肉に、酒・しょうゆ・マヨネーズ・砂糖・おろししょうがとにんにく(チューブのもの)をよく揉みこんで下味をつけ、一晩寝かせる。鶏もも肉500グラムに対して大さじ3の片栗粉を同量の水で溶き、しばらく置いてから上澄みの水を捨て、沈殿している片栗粉(要するに、湿らせた片栗粉ですな)を肉と混ぜる。さらに乾いた片栗粉を、肉の表面が軽く粉を吹く程度にまぶしておく。
合わせるレモンソースは、レモンの絞り汁に水、はちみつか砂糖と、鶏がらスープの素、オイスターソースをごく少量混ぜて煮立て、水溶き片栗粉を加えてとろみをつけておく。鶏もも肉が結構しょっぱい味つけなので、ソースはかなり甘み強めで仕上げておく。
衣をつけた鶏もも肉は、最初は低温で静かにじっくり2分ほど揚げ、全体がまだ白っぽくて衣もちょっとしっとりしてるねぇ……くらいの所でいったん引き揚げてしばらく休ませる。その後、今度は高温に熱した油でカラッとするまで二度揚げする。仕上げにレモンソースをかけて、飾り用のレモンスライスを添えてできあがり。
というわけで、眉月じゅんさんの「九龍ジェネリックロマンス」に出てくる香港レモンチキンを再現してみました。
作中では主人公とその友人は、このレモンチキンでライチ酒を飲んでいたけれど、自分はあまりライチ酒が得意ではないので、代わりに焼酎レモンソーダ割を合わせる。
「カリッカリに揚げられた鶏肉に染みた、甘ずっぱ~いレモンソース……」という作中のフレーズ通り、二度揚げしたカリカリの唐揚げ!と、こってりした甘さに爽やかな酸味が効いたレモンソース!の、組み合わせ!めちゃくちゃおいしい!ざくざく、バリバリと噛み締める衣の奥から現れるプリンプリンの鶏肉、そこから溢れ出てくる熱々ジューシーな肉汁。一晩かけてしっかり染み込んだしょうゆとにんにくとしょうがの香りと、レモンソースが抜群のベストマッチ。濃厚な旨みと油で口内が満たされたところに、すかさず焼酎レモンソーダ割を流し込む。しゅわっとした炭酸で口の中がリセットされたら、さあもうひとつ行くか!
あかん……これ永久運動できちゃうやつだ……。
作中で「どどんっ」という効果音と共に登場したので、それを再現すべくうず高く積み上げようとした結果、明らかにいい年の女がひとりで食べるには積載過多な量の鶏もも肉が必要になってしまった。限りある胃袋スペックを最大限に利活用すべく、ごはんとか付け合わせの野菜とか用意せずにこれ一品のみで昼から酒を煽る。なんて自堕落かつ贅沢な日曜日……背徳感のスパイスが、レモンチキンをより一層おいしく演出してくれる。大満足ですゲフー。ごちそうさまでした。
休みの昼間っからこんな背徳感あふれるメニューを、しかも自分にしては珍しくちょっと手の込んだ(下味つけたり二度揚げしたり)メニューを、さらに言うならば普段は「油がはねるのが恐ろしい」という理由でめったにやらない揚げ物メニューを作ったかというと、今日は自分の誕生日だから。ここ数年、誕生日は恋人や親友がお祝いに連れ出してくれているのだけれど、なにぶんかような情勢なので、今年は落ち着いてからにしようということになった。自分はすでに世間で言うところの立派なアラフォーですが、大切な人たちにこの日を祝ってもらえるのは、子供時代から変わらずしみじみとうれしいものです。1129と赤ワインによる酒池肉林を楽しみに待とうと思います。
……と話が逸れましたが、要するにせっかく誕生日なので、ちょっといつもより手間ひまかけて肉まつりをしてみようと思ったわけです。鶏もも肉も超特売品になっていたことだし。
九龍ジェネリックロマンスは、九龍城砦をモデルにしたという世界観の中、30代の男女によって繰り広げられるラヴストーリー……と思いきや、巻が進むごとに不穏なディストピア感が漂い始め、恋心や自分の生い立ち、アイデンティティについて悩む主人公の心情から目が離せない展開になる。九龍の喧騒や温度湿度まで伝わってきそうなほど緻密に描き込まれた背景も、主人公やその想い人、友人たちの心の揺らめきが切ないほどに伝わってくる心理描写も、本当に魅力的だ。九龍は写真でしか知らないけれど、こういう世界観はものすごく好き。あと要所要所で出てくる飯テロの火力もすさまじいです。