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母ンバーグ定食


せっかくの日曜だというのに、本日わがまちは朝からあいにくの雨。おまけに肌寒かった。昨日のピーカン秋晴れから一転でしたねえ。

でも生来の引きこもり野郎としては、予定のない休日にこういうお天気なのも決して嫌いではない。家でのんびりゴロゴロするの大好きだし。くしくも昨日、お天気の良さに励まされて早起きして、掃除とか洗濯とか布団干しとか買い出しとか、ようやく使わなくなった扇風機を洗って干して片づけたりとか、たんすの中身を衣替えしたりとか、ねこベッドの敷物を冬仕様に変えたりとか、もろもろの家事はスッキリ片付いている。今日はこのまま布団でだらだらしようかな~とニヤニヤしながら、目が覚めてからもしばらく布団に寝そべり、枕の半分を占拠している横綱の腹肉をモフモフしていた。

そうしているうちに、唐突にある願望が頭に浮かんだ。ああ……粘土遊びがしたい。何かをこう、コネコネしたい。


よろしい、ならばハンバーグだ。




横綱の豊穣の腹肉+凄腕料理人衆によるバーグ・テロ=粘土遊びと云う名のハンバーグ作り

我ながらなんと流れるように自然かつ潤滑な思考回路だろう。雨音が奏でる静謐な調べに耳を澄ませながら、ひき肉をこねくり回してぺったん、ぺったん……うつくしい。実にうつくしいじゃあないか。

ということで、今夜はハンバーグを作ることに決めた。そしてせっかくなので、亡母がよく作ってくれていたハンバーグと付け合わせ、汁物も模倣してみることにする。母ンバーグ定食である。


まずはメインのハンバーグ。合いびき肉にみじん切りの玉ねぎ(炒めない)、牛乳でふやかしたパン粉、たまご、ナツメグ、料理酒……と、ここまでは母レシピ。今日はおじ上殿ぽなちゃんにならって、味噌とマヨネーズ少量を追加してみることにした。これを粘りが出るまでよーくよーくコネコネする。楽しい……粘土遊びってさ、いくつになっても何故かようにも楽しいのだろう。あと塗り絵とかしゃぼん玉も楽しい遊びだと思う。ばーちゃんになってもやってそうな気がする。気の済むまでこねくり回したら、俵型にまとめて両手の間でえっさほいさとぺちぺちして、空気を抜く。これを冷蔵庫にてしばし休ませる。

亡母の付け合わせは、男爵を揚げるか粉吹きにするかしたものと、青菜の煮びたし、にんじんグラッセが定番だった。ぽなちゃんによれば味噌マヨ入りバーグは最強バーグらしいので、男爵は最強フライポ一択。レンチンした男爵が冷めたら皮をむいて、フライポ型にカットしておく。青菜は、昨日仕入れてきた1袋78円の小松菜があったので、これをさつま揚げと一緒に煮びたしにする。味つけは白だしと料理酒とみりんで、あまり甘くしない。仕上げにいりごまたっぷり振るのは、おてだまさんを真似っこさせてもらう。にんじんはグラッセにしたかったのだけれど、あいにくバターを切らしておったので(というか切れてるのを忘れてた。あたしって……ホント、馬鹿……)、オリーブ油でさっと炒めたところに水入れて砂糖入れて、ついでにコンソメ少量も落として煮込む。こっちもあまり甘くならないように仕上げた。

そうこうしているうちに、冷蔵庫の中の肉俵がいい感じに落ち着いた頃合い。オリーブ油を敷いたフライパンで、まずは肉俵を両面をこんがりと焼きつける。ここにざく切りにしたしめじとえのきをドサッと載せて、ほんだしをパラパラ振って、ケチャップとおたふくお好みソースと料理酒を適当に回し入れる。そう、亡母のバーグは煮込みハンバーグが定番だったのです。火の通り加減に神経質にならなくていいから、5人分(かつて我が家は5人住まいでした)一気に作る時なんか便利だったんだろうなー、と思う。きのこ入りなのは、とにかく好き嫌いの激しかった私になんとか野菜を食べさせようという心遣いだったんだろうな。ハンバーグの中に入ってるみじん切り玉ねぎまで避けて食べようとするような、そら恐ろしい野菜嫌いだったもので……(恥)。あの頃の私に今出会えたら、天井から逆さに吊るしてハリセンでケツをしばき倒したい。お母さん、ホント苦労かけてごめんないさいよ。

ちなみにいつもソースに甘みは入れないのだけれど、今回ははちみつを入れてみた。これは餃子さんの真似っこ。ソースときのこがどろんとしてくるまで煮込む。

汁物は、これも亡母定番のコーンスープで。缶詰のクリームコーンを少量のお湯で伸ばして、コンソメ少量を溶かしたら、ここに牛乳を入れる。あとはくれぐれも沸騰させないように温めるだけ。牛乳ってなんでちょっと目を離した隙に鍋から溢れるんですかね?こっちが目を離す隙を感知するセンサーでも搭載してんのかな。それならそうとパッケージに明記してくれ。

スープができたら鍋を火から下ろして、バーグとは別のフライパンにて男爵野郎をアゲアゲする。なんかマジで最近毎週のように揚げ物してんな。母が見たらさぞや驚くことだろう。揚がったところに、今日はマジックソルトをちょっと振っておきました。


さてさて、役者は揃った。バーグのソースがいい感じに煮詰まってきたら火を止めて、お皿にホイ。小松菜の煮びたし、最強フライポ、にんじんグラッセもどきを添えてできあがり。あたためなおしたコーンスープと、炊きたてごはんも食卓にセットする。


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ああ、懐かしき母ンバーグ定食。バーグのデカさが我ながらすごく母っぽいわ。スープに雑にパセリが散ってんのもそれっぽい。(私からお察しいただけましょうが、亡母も相当に大ざっぱでした)


それにしても……


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なんという巨体。


食べきれるかいささか不安なので、酒は呑まずに麦茶を合わせることにした。


分厚いバーグをお箸で(お箸でバーグ、これぞ家バーグの醍醐味よ)切り取って頬張ると、炒めずに入れた玉ねぎの歯ごたえと共に、やわらかなお肉とたっぷりの肉汁が口の中いっぱいに広がる。めちゃくちゃおいしいー!ああー、これこれ!玉ねぎしゃきしゃきのバーグ!外では食べられないこの味、これぞ母ンバーグの味だ。子供の頃は「この玉ねぎさえなければ完璧だのに……」等と憎しみの呪詛の対象でしかなかったけれど、今ではこの食感がとてもうれしい。とろみのあるソースが絡むと、このしゃきっとした玉ねぎがとっても爽やかでいいんだよな。とろんとろんになったきのこ隊とも好対照。私が「和風デミソース」と勝手に呼んでいるソースも、間違いのないこってり甘辛味。はちみつが入っているせいか、いつもよりまろやかに感じられる!ケチャップのちょっと尖った酸味をうまくカバーしていて、すごくいい味だ。これからは必ずはちみつを入れようと決めた。

びっくりしたのは、バーグそのものの味。ごく少量しか入れなかった味噌とマヨネーズが、獅子奮迅の働きぶりである。ソースがついていない部分(何しろ巨体なのでそういう部位も味わえる)食べても、しっかりおいしいのですよ!バーグ自体が!塩っけとコクがしっかり効いていて、これは予想以上の成果だった。それでいて、甘辛ソースとも喧嘩しないでマッチングしているのが素晴らしいな。味噌マヨすごい……。これ、大根おろしとポン酢で食べるさっぱりバーグの時にもいいんじゃないか。今度試してみよう。

付け合わせ軍団も、甘辛こってり母ンバーグを引き立てる、よきバイプレーヤーぶり。特に小松菜の煮びたしが、この年になるとホッとする引き加減だ。洋風プレートにこういう和もの野菜があると安心するな。最強フライポは、やはり今夜も最強。カリッカリのほっくほくで、バーグソースつけてもとってもおいしい。にんじんグラッセもどきは、バター不使用なのでさっぱりとした口当たり。でもこいつがなかなかどうして、悪くない。むしろ今夜の巨体バーグには、このくらいのさっぱり加減が逆にうれしい。怪我の功名というやつか。ふわっと甘くてミルキーなコーンスープも、とてもいいバランスだった。だったのだけれど……この巨体バーグにはむしろ、おてだまさん流でお味噌汁を合わせるべきだったなー。アラフォーの口には終盤、ちょっと重たく感じてしまいました。いえいえ、最後までおいしくいただけましたけどね。ごちそうさまでした。お腹パンパン!酒呑まなくて本当に良かった。


巨体バーグと一緒にちびバーグも作ったので、明日からのお弁当はバーグ弁当の予定。ってかね、当初は普通バーグ1個&ちびバーグ5個を成形したんですよね。でも成形終わったところで「ハッ!そういや来週は祝日あるし、金曜はお休みをいただく予定じゃん!」てなことを思い出しまして。で、ちびバーグと普通バーグを連結させたら、巨体バーグが爆誕したってわけなの。

明日はもう11月になるなんてすっかり忘却の彼方だったよ。やれやれ。

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