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企業の英語研修で成果を上げる鍵!専門家が語る習慣化サポート|WizWe習慣化研究所インタビュー#1

WizWe習慣化研究所では、習慣化プラットフォーム「Smart Habit」のサービスを精度高く提供するために、専門の研究者が学術的な手法に基づいたデータ分析を行っています。

今回のインタビューは、「Smart Habit」のサービスに欠かせない存在である「習慣化サポーター」の役割や重要性について、企業研修を担当するHuman&IT Success部 マネジャー 郭ユーチェさんとWizWe習慣化研究所 主任研究員の丹野宏昭さんにお話を伺いました。

・HRプラットフォームカンパニー Human&IT Success部
 マネジャー 郭ユーチェ
・WizWe習慣化研究所 主任研究員 丹野宏昭


行動の継続を支援する習慣化サポーター

ー 「Smart Habit」のサービスにおいて、 Human&IT Success部(HITS)の習慣化サポーターは、主に企業研修で語学学習をする受講者様の学習習慣化をサポートしています。具体的にどのような役割を果たしているのか教えてください。
郭:
HITSの習慣化サポーターは、企業研修の受講者様が学習を継続できるよう支援しています。開講前は、受講者様が使用する学習コンテンツの手配やキックオフセミナーの準備を行い、開講中は毎週学習進捗を確認し、お電話やメッセージでフォローします。終講後は、学習の結果を分析し、次回のプログラム提案に繋がるよう運用チームと営業担当で議論を行っています。

ー 「Smart Habit」は、パートナー様との連携により企業研修向けに様々な学習コンテンツを提供しています。それぞれの研修に使用するコンテンツの選定はどのように行っているのですか?
郭:
英語研修を導入した企業様のニーズに合わせて選定します。受講者様のレベルや英語学習導入の目標に合わせて、例えば、TOEICのスコアアップを目標とする場合は、TOEIC対策のeラーニングを提案し、スピーキング力をアップしたい場合は、オンライン英会話をお勧めしています。

丹野:学習コンテンツの選定について習慣化や動機づけという側面から考えると、難易度が高すぎても低すぎてもいけませんし、学習量が多すぎても少なすぎてもいけません。難易度が高すぎたり、課題が多すぎたりすると、当然動機づけは高くなりませんので、途中離脱が発生する可能性が高まります。そういう点では、難易度を適度に低くして達成可能な量で実施することは、成功体験という意味で重要ですね。

私たちのサポートは3ヶ月、または4ヶ月、6ヶ月などで1回のプログラムを組んでいますが、本当に重要なのは、サポート終了後も継続的に学習していただけるかというところです。それが本当の習慣化だと思いますので、プログラム期間中に無理なく学習を継続することで、その後の学習習慣化の基礎をつくっていくという点では、適切な難易度で、適量を維持することが重要です。

一方で、難易度が低すぎる場合や量が少なすぎる場合は、達成感を感じることができません。誰にでも容易にクリアできるような難易度では、プログラムを完了しても、その後の習慣化や自己効力感の向上につながりにくいです。そのため、ギリギリ達成できるかどうかのレベルを自力でクリアしたという実感を得られる難易度のコンテンツ選定が、習慣化においては非常に重要になってきます。

最初の段階で「自分たちはやれる」という自信を持たせることが重要

ー プログラム開始日に行っているキックオフセミナーについて教えてください。
郭:
キックオフセミナーは人事担当者様の挨拶で始まり、その後、プログラムの概要や使用するコンテンツ、目標について説明します。さらに、チームアクティビティを行うことで、これから始まるプログラムに向けてメンバー全員で協力し合い、頑張る意気込みを確認する場としています。

ー キックオフセミナーの重要性について教えてください
丹野:
キックオフセミナーは、プログラム開始時のオンボーディング期において、受講者様のスタートの障壁、特に何をすればよいかわからないという状態を減らす、そして動機づけを高め、自己効力感や集団的効力感を強化することを目的としています。

最初の段階で「自分たちはやれる」という自己効力感を高める、さらに、「みんなと一緒ならば成し遂げられる」という集団的効力感を高めることが、プログラムがうまくいくかどうかに大きく影響します。

日本では、何かを始める際に儀式を行う文化があります。たとえば成人式や入社式、入学式などがその例です。キックオフセミナーもこれらの儀式と同様に、新たなスタートのための「気持ちのリセット」や「リブート」のタイミングを提供します。

このスタートのタイミングで、受講者様に「やるぞ」という気持ちを持たせることができるかどうかが、プログラムの成果に大きく寄与します。気持ちに火をつけるための非常に重要な役割を担っているのがキックオフセミナーです。

ラポール(親密な信頼関係)形成を意識したコミュニケーションで受講者様とよい関係性を構築

ー プログラム開始後、受講者様の学習進捗の管理とフォローはどのように行っていますか?
郭:
まず、プログラムで決められた全体の目標数に対して、週ごとの中間目標を設定しています。習慣化サポーターは、受講者様が目標に沿って学習を進めているかどうかを定期的に確認し、目標に遅れている場合、または学習をしていない場合は、お電話やフォローメッセージを送るという対応をしています。

特に、プログラムの初期段階では、受講者様にとって習慣化サポーターは、まだ知らない人という存在です。単に「やってください」と伝えるだけでは効果が薄いため、最初の段階ではラポール形成を活用してコミュニケーションを取ります。例えば、進捗が遅れていることは言わずに、「何のきっかけでプログラムに参加しましたか?」といった内容のメッセージを送ったりしながら関係を構築していきます。私たちのフォローは、単なる進捗確認だけでなく、受講者様と一緒に学習を完走する仲間としてサポートを行っています。

また、会社の研修プログラムになりますので、研修担当者様の協力も必要です。習慣化サポーターは受講者様の進捗を研修担当者様にも定期的に報告しています。

ー 習慣化サポーターのフォローは受講者様の習慣化にどのような影響があるのでしょうか?
丹野:
習慣化サポーターによるフォローは、基本はメッセージの送信を通じて行います。前提として、ラポールが形成されていない、言ってしまえばどうでも良い存在からメッセージが送られてきても影響力がほとんどありません。実はそこが、人が伴走する価値、Smart Habitの最も重要なポイントだと捉えています。

習慣化サポーターは、ただの情報提供者ではなく、無視できない重要な仲間として受け入れられる必要があります。重要な仲間からの励ましは、受講者様の心を動かし、その後の学習行動の継続に繋がります。いかに重要な他者となれるかがラポールだと考えています。AI技術が進んでメッセージも自動生成で簡単に作れるようになっていますが、AIから「頑張ろう」、「よくやったね」と言われても、自動で作られていると思うと簡単に無視できてしまいます。

ですから、習慣化サポーターは一緒に学習完走を目指す仲間として受け入れていただくために、いかに早期にラポールを形成できるかが非常に重要です。送ったメッセージを無視せずに読んでいただけるか、習慣化サポーターが喜んでくれるから頑張ろうと思っていただけるか、そこが本質的な部分だと思いますね。

ー ラポール形成を活用するようになって変化はありましたか?
郭:
ラポール形成を活用するようになってから大きな変化がありました。例えばある企業様の研修では、活用前と後で顕著な違いが見られました。ラポールケージを活用する前のメッセージは、習慣化サポーターが送ったメッセージに対して受講者様からほとんど返信がなく、進捗も遅れがちで、基本的には一方通行のコミュニケーションが多かったですね。その結果、成果も期待ほどではありませんでした。

ラポール形成を意識してメッセージを送るようになってからは、返信率が向上しました。「好きな映画は何ですか?」といったより親しみやすい話題を投げかけた結果、気軽に返信をいただけるようになり、受講者様とよい関係性を構築することができました。その結果、進捗率や完走率の向上やスコアの改善に繋がり、担当者様からもよい評価をいただいています。

モチベーションを高め、挫折を防ぐチーム学習

ー 「Smart Habit」に導入されているチーム学習について教えてください
郭:
基本は4人から6人までの人数で1つのグループを設定しています。プログラム期間中、同じチームとして他のチームと進捗の競争しながら、月に1回チームミーティングを実施し、お互いの進捗確認や学習法の共有などをしていただいています。1人では挫折しがちな学習も、支え合う仲間がいることでモチベーションを高め、挫折を防ぐことができます。チーム学習は、学習継続の効果を高めるひとつの要因となっているのではないでしょうか。

また、チームが上手く機能していない場合は、習慣化サポーターからチームリーダーにお声かけさせていただいたり、チーム宛てにメッセージを送ったりというフォローを行っています。

ー 社会心理学の視点から見て、チーム学習にはどのような効果がありますか?
丹野:
チーム学習は、教育学や心理学で言うと協働学習や共同学習に属していると捉えています。この学習形式は、特定の条件が整えば、個人学習よりも生産的です。実際、研究によりそのデータも得られています。

まず前提条件として、グループ全体に目標があり、個人の目標とチームの目標が設定されていることが挙げられます。個人学習の場合は個人の目標達成だけが目的になりますが、チーム全体の学習量やランキング向上という目標が上乗せされることで、目的意識が高まる可能性があります。全員がチーム全体の目標をしっかり把握し、重要なものとして認識することが必要です。

Smart Habitで行っているチーム制のいいところは、チームメンバーがそれぞれ異なる役割を持っていることです。その結果、チーム内での責任感やアカウンタビリティが生じ、自分もやらなくてはいけないという意識が発生します。これがパフォーマンスの向上につながっている可能性が高いです。

もう一つの条件は、コミュニケーションをしっかり発生させられるかどうかです。例えば、ソーシャルスキルが未熟な小学生の場合は、チーム制にしてもよそよそしくなってしまい機能しないことがあります。社会人であっても、苦手な人と一緒のチームになった場合はパフォーマンスが上がらないですよね。チームとしてワークさせるための最低限のソーシャルスキルがあるという条件が満たされていれば、個人学習よりもチーム学習のほうがパフォーマンスが向上すると言えるでしょう。

ー チーム学習について、人事担当者様や受講者様からはどのような声が寄せられていますか?
郭:
多くの企業様から1人だと継続が難しいというお話を伺いますが、チーム制を導入したことで初めて継続できたという声が寄せられています。

特に印象深いのは、内定者や赴任者研修の案件です。入社前に不安な気持ちでいる内定者の皆様が、英語学習を通じて交流ができたことで、入社の不安が軽減したという副次的効果が見られました。赴任者研修の場合も、赴任先の生活に対する不安の中で、赴任先ではどういったことを楽しみたいかなど英語学習以外の話題ができたことで、英語学習も頑張れて不安も和らいだというお声をいただきました。これらは、予想外の肯定的な効果として、人事担当者様から高い評価を受けています。

行動量を数値化したランキング形式で成果の実感を促す

ー 「Smart Habit」はランキング形式を導入していますが、どのように運用しているのでしょうか?
郭:
学習進捗のランキングは週に一度更新しており、個人とチームのランキングの両方を行っています。このシステムは、進捗が良い人には自分の順位を維持するモチベーションを与え、進捗が遅れている人には順位を少しでも上げようとする動機づけになっていると思います。ただし、ランキングはあくまでモチベーション維持の手段です。時々、ランキングのためだけに学習するという方もいらっしゃいますが、ランキングが最終的な目的ではありません。研修の本来の目標は別にあり、その目標を達成するためにランキングを利用してモチベーションを維持する仕組みです。

ですから、習慣化サポーターは受講者様に対して、ランキングに過度に囚われずに、バランスよく取り組むように意識してもらっています。ランキングを強調しすぎると、それが全てになってしまう恐れがあるため、この点は注意を払っていますね。

ー ランキング形式の効果について、社会心理学の観点からどのように評価されますか?
丹野:
行動が継続されない最も大きな理由は、その行動によって良い成果が得られていないと感じていることです。行動した結果、何も起きていないと感じる場合、基本三日坊主になりやすいと捉えられます。例えば、学習はしばらく続け、テストを受けたらスコアが上がったなどのフィードバックがないと効果を実感しにくいですよね。ダイエットも同じで、3日くらい運動しても体重はすぐには落ちません。続けていれば成果が出てくる可能性はあるのですが、すぐに成果が見えない活動は飽きてやめてしまう傾向があります。

この問題を解決するために、オペラント条件付けという学習心理学の理論を活用し、行動した量自体に意味や価値を持たせます。ゲームはこの良い例で、プレイした内容に対して即座にフィードバックが提供されますよね。スコアやランキング、ステージのクリアなどが瞬時に分かるため、はまりやすい、習慣化しやすい仕組みになっています。

Smart Habitのランキングシステムも、週ごとに行動の結果を数値化し、明確なフィードバックを提供しています。学習者様にとっては、自分の進捗が可視化されるため、モチベーションの向上に繋がりやすくなります。したがって、ランキング形式は非常に合理的で効果的な仕組みとして評価することができます。

ー プログラムの締めくくりに行う終了式について教えてください。また、終了式で印象的だったことはありますか?
郭:
終了式はすべての案件で実施しているわけではありませんが、行う場合、受講者様全員に再集結していただき、数ヶ月間の研修を振り返ります。英語学習の研修では、英語でプレゼンテーションしていただいたり、ランキングの発表を行ったりしています。効果測定をしている場合はスコアの伸びのランキング上位者を発表することもあります。

特に印象に残っているのは、スコアの伸びのランキングを発表する瞬間です。このプログラムを通じてこんなにスコアが伸びた人がいるのかと、受講者の皆様が非常に驚かれることがあります。そのリアクションがいつも印象的ですね。

また、スコアが大きく上がった方や進捗が良かった方から「プログラムに参加して、継続の重要性を理解し、毎日コツコツ頑張った」と言っていただけた時に、その方に大きな変化をもたらすことができたと実感します。

ー 心理学的観点からみた終了式の役割について教えてください
丹野:
終了式は、心理学的に非常に重要な役割を果たします。基本的に、他人の存在は個人の動機づけを高め、習慣化を容易にします。一人でできる人がいるということは前提になりますが、人から褒められたり、行動を認められたりすることはうれしいですし、一緒に頑張ってきた他の人たちとの経験の共有は動機づけに大きく影響します。

終了式では、受講者様がこれまでの努力を振り返ります。一緒に頑張った仲間からのポジティブなフィードバックは大きな動機づけとなり、プログラム終了後の行動継続、さらには、自己効力感を高めることに繋がっていくと考えられるため、終了式は単なるイベントではなく、受講者様の学習経験を確実に次のステップに繋げるための重要な場となります。

習慣化サポーターのやりがいは、受講者様・研修担当者様からの感謝の声

ー 受講者の皆様からは「Smart Habit」のサポートについてどのような声が届いていますか?
郭:
学習者様からのフィードバックは非常に肯定的で、多くの声を受け取っています。例えば、「これまでは挫折することが多かったけれど、このプログラムを通じて継続できるようになり、今後も続けていきたい」というコメントや、「TOEICのスコアが向上し、赴任に向けて自信がついた」というような声が寄せられています。このようなコメントをいただくと、その方にとって人生の中での結構濃密な期間になったのではないかと思い、とてもうれしく感じます。

また、習慣化サポーターとの間に築かれた関係性についても、非常にポジティブな評価をいただいています。プログラム終了時には、学習者様から習慣化サポーターへ「○○さん、3か月間本当にありがとうございました」、「とても良い思い出になりました、楽しかったです」など、直接感謝の言葉をいただくこともあります。

ー 習慣化サポーターのどういったところにやりがいを感じていますか?
郭:
学習継続やスコアアップなど、学習者様のポジティブな変化を感じたときやプログラムが楽しく、良い思い出になったなどの声を聞くと、非常にうれしいですね。また、研修担当者様から、「WizWeさんに依頼して本当に良かった」、「会社に良い報告ができそう」、「これからもWizWeさんと一緒に研修を続けていきたい」などといったフィードバックをいただけることがあります。こういった声を聞けた時は、私たち習慣化サポーターの努力が実を結んでいる証であり、最もうれしくやりがいを感じる瞬間です。

ー 最後に、社会心理学的に習慣化サポーターのフォローが習慣化にどう影響しているのかまとめていただけますか?
丹野:
まず1つ目として、行動量や学習量に応じたフィードバックを行うことで、受講者様へ成果の実感を促しています。英語学習はしばらく継続してからテストを受けないと成果を実感しにくいものですが、行動量や学習量を数値化することで、自分の努力が目に見える形で表現されます。この数値が伸びていくことで、学習した成果を感じることができるため、習慣化サポーターはフィードバックでその気づきを与えているという点において、動機づけを高め、三日坊主を防ぐ役割を果たしていると思います。

2つ目は、習慣化サポーターが無視できない存在としていることで、受講者様は「人に見られている」と感じ、行動しようという気持ちになります。習慣化サポーターとラポールが形成できていれば、伴走してくれている、見守ってくれていると感じ、無視できなくなって学習の継続に繋がります。これはAIではなく人がサポートしている影響です。

3つ目は、ラポール形成され、重要な他者となった習慣化サポーターからのポジティブなフィードバックは自己効力感を高めるという影響があります。他者から自分の努力を認めてもらえると、それだけで動機づけが増します。AIが生成する自動配信メッセージのフィードバックでは響かない可能性が高く、自分の行動を認めてくれている他者が習慣化サポーターとして存在していることが、習慣化においては非常にワークしていると思いますね。