夏の終わりに⑤

注意)以下、淫猥18禁表現があります

テントの周りを確認して中を見られないようにファスナーを最小限開けて中に入り込む。テントの中に入ると彼女の匂いに包まれる。テントに敷いてあるマットは既にビショビショに濡れていて、その水分が汗でないことは僕にはよくわかっていた。むせかえるほどの彼女の匂い、それは汗だけでなく彼女がまき散らした潮からも放たれている。その濡れたマットの上に正座をするようにして僕は座る。目の前で彼女は足を大きく開いたまま身動きしない。彼女の目をじっと見つめると、後ろに回していた手をそっと差し出してくる。差し出した手を取ろうと僕が手を差し伸べると、彼女の手は僕の手をすり抜け僕の胸を押し倒した。濡れたマットの上に倒れ込み、彼女を見上げようと思った瞬間、唇が何かで覆われた。彼女に唇を覆われ、僕の中に入ってくる。とてもキスとは言えないような暴力的な行為に、心の奥底にある何かが震えた。僕の唇は彼女に犯された。何度も何度も舌と唇で貪るようにしゃぶられ、唾液はすべて吸い尽くされた。僕の思考は完全に停止して、彼女にされるがままだった。

テントの外では相変わらず喧騒がつづいている。人の声や遠くからスピーカーで流れてくる音楽、周りを歩いている足音、、、海にいるのに波の音すら聞こえない。人混みあふれる砂浜のテントの中で、全裸の女性とトランクス一枚の男が身体をすり合わせ抱き合う。その境目にあるのはたった数ミクロンのテントのシート一枚。

彼女は僕の唇を犯しながら、体中をまさぐりはじめる。その彼女の手つきは淫らとしか言いようがなかった。その手つきに僕はいちいち反応することも出来ず、声を上げることも出来ず、唯々彼女の行為を受け入れた。彼女の手は髪の毛、首、胸、乳首、そして特に乳首は念入りに弄られる。唇を犯され塞がれた状態で乳首を弄られ、本当なら声を上げたい所だったが声が声にならず、荒いハアハアとした呼吸にしかならない。やがて乳首を弄っていた指先はゆっくりと移動してトランクスをずり降ろす。しかし下ろそうとしたトランクスに僕の欲望がひっかかってしまう。無理にトランクスを下ろそうとしていた彼女の手は僕の欲望を握り、そっとトランクスを外した。僕を襲っていた彼女の唇はすっと離れ、寝ている僕を上から見下ろすようにして声を出さずに笑った。彼女の唇は当然の事のように僕の欲望の塊を包み始めた。

数ミクロンしかないテントの生地の先には家族が笑い、カップルが話し合い、子供は走り、いわゆる夏の浜辺の光景が広がっている。そのたった数ミクロンで隔てられた空間には淫靡な空気で埋め尽くされていた。外の世界の喧騒があるにもかかわらず、彼女が僕の欲望の塊を舐める音はしっかりと聞こえている。時折、すすり上げるような音を立てられると腰椎の神経から胸椎の神経まで、下から舐められているような感覚になる。声を出そうと思ったがのどがカラカラに渇いて上手く声が出ない。さっきまで彼女が手にしていたペットボトルの水を手に取ろうとすると彼女に奪われた。彼女は自分でペットボトルの水を口に含み、僕の顔に近づいてきた。意図することが分かった僕は素直に受け入れる。彼女の唇からはゆっくりと水が注ぎこまれ唾液とまじりあい彼女の味を感じる。

もうこれが限界だった。


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