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「どっこいしょ」 老婆はちゃぶ台に手をついて立ち上がった。数歩歩いて柱に手をつく、その柱には古い柱時計がぶら下がっている。 「あんたも年を取ったな…… ここに来て何年になるかね~」 老婆はそう柱時計に話しかけた。 この柱時計は夫の哲夫が生前、友人の骨董品店からタダ同然の値段で買ってきたものだ。すぐ壊れてしまうと思っていたのだが、二十数年間狂いもせずに動き続けている。 「あんたにゼンマイを巻くのも一苦労になったよ。やっぱり歳をとったね、私も……」 そんなこと