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【読書感想】エレファントヘッド 白井智之

読む前から各方面から

「キモすぎ」
「倫理観が終わってる」
「なんでこんなことするの…?」

と聞いてたのですごく楽しみにしてた本。
作者もジャンルとかも何も知らずに読みました。
感想を一言で言うなら。

「よく思いついたなこれ、キモイけど」

映画「シンゴジラ」の好きなセリフで、日本で出現したゴジラをアメリカが核で日本ごと破壊しようと提案した時に、高橋一生が言った「確かに選択肢としてはアリだけど、選ぶなよ…」ってセリフがあるんですけど、まさにずっとそんな感じ。
それやったら確かに助かるかもしれんけどやるなよ。

なんだろう、ほんとに倫理観0で書いたミステリー。
これを書ける人がいる恐ろしさとこれを読める幸福が両立されてる。
親戚が書いてたら絶対嫌な本。
でも個人的には最高に面白かった。

多分映像化されたらすごく表現がセーブされて面白くなくなると思うので、この作品は小説で読むのが今の日本の法律では一番楽しめると思います。


〜〜〜〜〜〜〜ネタバレあり感想〜〜〜〜〜〜

ここからネタバレあり。

タイトルのエレファントヘッドも読む前は意味不明だったけど、なるほどって感じですね。
「象」の頭の中で行われてるからか。
容疑者と探偵が自分なので、能力の限界値をお互いわかってるというか、できる範囲を理解した上で探るのが斬新だった。

あと、架空の舞台である多次元で世界が進行していくので、正直現実のルールとかあってないようなもので、
途中から出てきた1で死んだら他の世界でも死ぬみたいな後出しルールは卑怯に思えるんですが、
医者がそれっぽい説明をしてきてこっちとしてもよくわからんけどそうなんだろうで読み進めていくので、知識にねじ伏せられて面白さを押し付けられる感覚が良かった。
飽くまで象山達も探り探りなのでルールについて、憶測で推理する点も読者と重なって気になりにくかった。

序盤から大量に出てきた、この世界の専門用語が多くて(番組名とかタレントの名前とか)最初はなかなか入り込めなかったですが、最後までトリックに活用してたのでちゃんと意味あってすごい。

結局、誤っていた推理も(矛盾する死に方すると爆発するとか)聞いてる分には納得感があり、そこでここまで散りばめられた情報をうまいこと活用していたのでそういうのも含めてどうやって思いつくんだって感じのミステリー、めちゃすげえ。

そして何より、多次元に展開された自分の世界の中で、どれが犯人の自分かを当てるという聞いたことない設定が本当にすごい。
夢の中なのでなんでもありで、自分に起こった映像を自分に見せてアリバイを証明するとか、実はもう一人いました、とか正直何でもできるやんって思えそうな中で説得力を持たせて、成立させてるのが意味がわからない。

この何でもできるやんのツッコミをさせにくくさせてるのがこの象山のサイコだとも思う。
こいつは自分の世界を守るためなら、平気で人も殺すし欲望にも素直だけど、プライドはあるのでズルとか誤魔化しはしないだろうという安心感。やっぱり悪役が魅力的に書ける作品はめちゃくちゃ面白い。

総評して超面白かったです。

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