【ファジサポ日誌】21.スルメの味~ファジアーノのサッカーは旨い~
当初は先週の町田戦のレビューを「岡山の成長・成熟」という切り口で書いていましたが、週中にファジアーノのサッカーの必ずしも好ましくない他サポからの評価について書きたいと思いだしたところ、内容がぐちゃぐちゃになってしまい、改めてテーマを設定し直しました。
今回は、岡山のサッカーが低評価になる概ねの原因と、私独自の視点でこれまでの岡山のサッカーを整理してみました。
これまでの記事以上に私自身の独自見解や想いが強い内容となっています点を予めお伝えしておきます。
匿名掲示板での岡山バッシング
バッシングの真の背景
岡山が培ってきたサッカー
岡山スタイルの確立を
1. 匿名掲示板での岡山バッシング
今さら「某掲示板」などと隠す必要もないと思いますので、はっきり書きますが「超サッカー掲示板」という匿名掲示板があります。
匿名で書き込める気軽さから、書き込みの内容は多彩、ごった煮のような掲示板なのですが、結構面白い意見や勉強になる見解もあり、定期的に見ています。
掲示板は各クラブ、カテゴリー、代表、海外クラブ等に分かれています。
岡山の掲示板も当然存在する訳ですが、これまではリーグ全体で岡山が話題になることは少なかったと思います。
私が異変に気づいたのは、ちょうど1ヵ月前ぐらいでしょうか。現在は少し落ち着いていると思いますが、岡山と対戦したあるクラブの掲示板やJ2カテゴリーの総合掲示板で非常に汚い言葉で岡山のサッカーが罵られていたのです。
私なりにその内容を整理しますと以下のようになると思います。
・ 誤審(岡山寄りの贔屓判定)
・ 岡山のプレーは汚い
・ 外国人頼みの縦ポンサッカー
・ セットプレーだけのサッカー
・ サッカーではない(ラグビーである)
・ J1では通用しない
・ 木山監督個人に対する他クラブサポからの誹謗中傷
どんな人が書いているのか分かりませんが、ここに書くのも憚られるような内容も結構含まれます。まだご覧になっていないという方には決しておススメしません。
あまりに酷い誹謗中傷について掲示板の自治が機能しないのであれば、クラブが警告や法的手段をとれば良いものと考えます。
実際、今シーズン当初、岡山所属の特定選手に対して岡山サポと思われる誹謗中傷が発生した際にクラブは公式に警告、法的手段を示唆する声明を出しました。
掲示板の内容がリアルなサポーターの総意とは思いません。
私も他クラブのサポさんと交流がありますが、総じてお互いのサッカーやクラブ事情には相互のリスペクトがあります。
ならば、一部の掲示板に書かれている内容などあえて採り上げる必要はないのでしょうし、今季上位に位置している岡山に対する嫉妬とみる向きも的を得ていると思います。そうした解釈で自己解決する問題かもしれません。
また、匿名で書き込みを行う心理学的な要素というのもあるのでしょう。
ただし、これに関しては私に論じるだけの見識がありません。
しかし、今回あえてこのテーマを選んだ理由は、一部の人から確実に「岡山のサッカー」は嫌と思われている、その嫌がられている内容について、あくまでもサッカーの側面にフォーカスして自分なりに理解したいこと、そして自分にベクトルを向け直し、そもそも岡山のサッカーとは何なのかを考えることにあります。
岡山のサッカーが嫌がられる理由は何なのか?
そして岡山のサッカーとは何なのか?
2.バッシングの真の背景
この記事を読んでくださっている方に岡山のサッカーを一から説明する必要はないのかなと思っています。
今シーズンに関して、あえて一言で述べるなら、
「伝統的堅守をベースに外国人ストライカーの得点能力を最大限に活かすサッカー」です!
えっ、一言ではない?
「縦ポン」ではない?
「縦ポン」はあくまでも現象の話であって…
その話は後ほど。
本題に戻ります。
「岡山サッカーの評価が低い真の背景」
それは、ポゼッションサッカーの崇拝にあるのだと思います。
誤解がないように述べますと、ポゼッションサッカーが悪いと言っている訳ではありません。私も岡山サポでありながら、ポゼッションサッカーは好きです。こんな本を読んでいるぐらいです。
仙台や山口で監督を経て、現在は山形のコーチを務める渡邉晋氏の著作です。実はこの本は以前に岡山の(4)濱田選手も紹介していました。
私は海外サッカーはなぞる程度でしか観ていませんので、詳しくはないのですが、数年前のナポリのポゼッションは好きでしたし、レアルやバルサは言うまでもなく、昔のアーセナルなどを観ていれば、ポゼッションサッカーの美しさに憑りつかれてしまう気持ちも分からなくはないのです。
国内ではやはりフロンターレです。PA内でも細かく繋ぐサッカーには感嘆してしまいます。
しかし、サッカーは生き物であり、常に次の対策が行われるスポーツでもあります。事実、前回のEUROでは既にポゼッションは趨勢を占める戦術ではなくなっていました。フロンターレにしても状況によって戦い方を変えられる柔軟性があります。
先ほどの渡邉コーチの著作でも触れられていますが、ポゼッションの導入も現場レベルではリーグを生き残る対策という側面が強かったりするのです。
そうしたサッカーの柔軟性を無視して、ポゼッションサッカーが絶対と思う硬直的な思考や、ポゼッションサッカーを神のように崇める姿勢に二項対立的な思考スタイルが結びつき、ポゼッションが善、他は悪といったような他のサッカースタイルへの差別や敵対視に繋がっているのだと私は思います。
今回、岡山が好成績を上げていることで、注目を浴びることにより標的となってしまった。これが岡山サッカーバッシングの正体だと思います。
3.岡山が培ってきたサッカー
① 影山雅永元監督の現体験
ここまで述べてきたことは、岡山のサッカーが嫌われる外的要因といえるものです。では改めて岡山のサッカーとは何なのか、今一度ベクトルを岡山に向けてみたいと思います。
先週DAZNで配信された番組に懐かしい名前を見かけました。
影山雅永元ファジアーノ岡山監督です。
DAZN『内田篤人のFOOTBALL TIME』で日本の選手や指導者育成についてその背景や未来について語られています。
2010シーズンから5シーズンにわたり、ファジアーノ岡山を率いてくださりました。現在はJFAユースダイレクターに就任されています。
J2昇格後のファジアーノ岡山のサッカーの礎を築いた指導者であると私は認識しています。
改めて影山氏の経歴を振り返ると、岡山を指揮する以前にドイツでのコーチ歴があることに目がいきます。
影山監督が就任した当時の岡山はJ2昇格2年目。昇格初年度は18位、つまり最下位と低迷しました。
劇的な勝利を収めることもありましたが、他クラブと比べますと戦力はお世辞にも充実していたとは言えず、個人の能力差で負けていた試合も多かったように思います。
当時は何も考えずに応援していましたので、私自身にこの記事のような視点はありませんでしたから、当時のクラブの強化方針や指導方針をはっきりと記憶していません。また、そうした深部を掘り下げる報道媒体も無かったと思います。
そこで、今回、影山監督の当時の指導方針を垣間見ることが可能な材料がないか、様々な動画や文章を探しました。
その中に影山氏が現役を引退し、ドイツケルンに渡りコーチとしてドイツ人選手を指導した当時の苦労や印象に残った出来事を語っている動画がありました。
なぜ日本人の言うことを聞かなくてはいけないのかというドイツ人選手からの抵抗、英語は聞いてもらえないので途中からドイツ語でのコーチングにチャレンジしたこと、それでもドイツ人選手になかなか受け入れてもらえなかったこと、氷が張るグラウンドでも平気でスライディングするドイツ人選手の体の強さに圧倒されたこと、個の勝負にこだわりを持つドイツ人のプレースタイルなどから、その後日本でも語られるようになった概念であるデュエルや球際について語っていました。
影山氏はドイツから帰国後、U-19日本代表のテクニカルスタッフやサンフレッチェのコーチを歴任します。ここからは想像になりますが、ドイツでの経験を日本の指導に落とし込んでいた時期といえるのではないでしょうか?
その後、岡山に移り1年間のヘッドコーチ経験の後に監督に就任しますが、その後の5年間のサッカーの印象は堅守速攻。強度の高い守備を築き、鍛えた走力でカウンターを仕掛ける。とにかくよく走るチームであったとの印象が残っています。
この岡山のサッカーは影山氏のドイツでの泥臭い経験が大きく反映されているものであったと思うのです。
② 2018シーズン後半の「修行」
影山サッカーをベースに岩政大樹、加地亮といった代表経験者に多くの実力者を加えた長澤徹監督時代。岡山が初めて本気でJ1昇格を掴みにいった時代でした。就任2年目の2016シーズンは初のプレーオフ進出、プレーオフ決勝戦でC大阪に敗れ、あと一歩でJ1昇格を逃したことは岡山の歴史の大きな1ページになっています。
もちろんこのシーズンも印象深いのですが、私はその2年後2018シーズン後半がそれ以上に記憶に残っています。極端な得点力不足に陥り、最終的に15位と低迷しました。
あの頃は、負傷者が多かったという事情もありましたが、ひたすら自陣で守る時間が長く、たまにマイボールになっても、前でたった1人で張っている赤嶺真吾や斎藤和樹めがけてロングボールを蹴り上げるのみ。すぐに相手に回収されて再び自陣で鳥籠になる。そんな試合の連続でした。
「今日も多分点は取れないだろう」
そんな絶望感を抱えながらも、私は自分のサッカー観を試されている気がして、修行だと思いあえてスタジアムに通い続けました。
正直に告白しますと、この時期、私は岡山のサッカーを縦ポン1本、サッカーではなくラグビーみたいだと、まるで掲示板に書かれているバッシングのような印象を持っていたのです。
なぜ岡山は点が取れないのか?
そこに隠されている本質は、実は戦術を超えたサッカー観のようなものではないかと感じていました。自分の中での解決が難しかったのです。それが故に、点が取れない答えというのは明確に見つけることが出来ずに、現在に至りました。
③ 答えは今シーズンにあったのか?
実は最近、この2018シーズンの疑問に答えが見つかりかけているような気がします。
長澤氏が岡山の監督を退任後、京都サンガのコーチに就任したことから、何となく長澤氏の目指していたサッカーは、攻守においてピッチ上の全員で襲いかかる昨年の京都のようなスタイルなのかなと朧気ながら思っていました。
更に今シーズンの岡山のサッカー、特に後半の戦いぶりを観ていて、ひょっとしたら長澤氏もこんなサッカーをやりたかったのかなと新たな気づきが自分自身に芽生えています。ただあの頃は戦力的にも、今のようなサッカーをするには無理があった、これが現状での結論です。
④ 受け継がれるDNA
J2昇格以降は、手塚聡→影山雅永→長澤徹→有馬賢二→木山隆之と指導者が代わりながら、当然選手も入れ代わりながらJ2リーグを生き抜いてきた岡山ですが、誠実なクラブカラーが現場のサッカースタイルや選手補強、選手のプレーにも色濃く反映されている点が大きな特徴であると考えています。
それ故にピッチ上で表現されるサッカーは、これまで培ってきた、特に影山氏時代に築き上げた堅守ベースの泥臭いものになってしまうのです。
サッカーは生き物で対策であると述べましたので、これまでの歩みの中で岡山のサッカーをもっと180度転換するような改革を期待した時期も私にはありました。
しかし、クラブはこれまで受け継いできたDNAの重みを私のような浅薄な考えを持つ者よりももっと深く考えており、これまでの岡山のサッカーのベースを崩さずにJ1昇格を狙えるアイデアを持つ監督として木山監督を招聘したのです。
⑤ 木山監督に代わり何が変わったのか?
例えば、「縦ポン」と揶揄される前線にロングボールを送る戦術は現象としてはこれまでの岡山でも多く見られましたが、前線へ繋がる確率が低く、かつ意図のないロングボールと、今シーズンのように(15)デュークや(7)チアゴの強烈な攻撃能力を最大限に活かすためのロングボールとでは戦術的な有効性は全く異なるのです。
木山体制に代わり、ロングボールに限らずゲームの各場面において戦術的な意図を感じられるようになりました。この点がこれまでの岡山のサッカーとの大きな違いであると思います。
先日の山形戦から一例を挙げてみたいと思います。
山形戦で(7)チアゴの同点ゴールに結びつくセットプレーを取ったシーンです。岡山(34)輪笠が山形(29)ディサロ、(41)樺山のプレスを受けて右の(4)濱田にボールを出します。
これまでの岡山であれば(4)濱田は前線で待ち構える(15)デュークへロングボールを出したかもしれません。
しかし、(15)デュークが落としたセカンドを拾える可能性や山形のカウンターを受ける可能性をおそらく考慮しています。
敵陣まで自ら持ち運び状況を確認すると、岡山(14)田中が動き出したスペースへフィード、山形(18)南、(26)川井が(14)田中にプレスしますが、(18)南のファールとなります。
このセットプレーで(16)河野のキックからPA内で繋ぎ、最後は(7)チアゴのスーパーゴールが生まれました。
岡山に成長を感じたのは、この場面で無条件に(15)デュークへロングボールを入れなかった点です。守備職人の印象が強い(4)濱田が攻撃の選択肢を持った状態で次のプレーに移れていたという点が素晴らしいのです。
そしてフィード先の(14)田中のスペースは山形の選手に挟まれた狭いエリアでしたが、これまでの(14)田中のプレーぶりから、この2人を突破すれば一気に数的優位が生まれる、突破できなくてもファールを貰えれば、岡山得意のセットプレーに持ち込め、9アシストを誇る(16)河野のキックに期待できる。
こんな発想、意図がみえていました。
非常に得点の可能性が高まる戦術的意図が高い攻撃といえます。
山形の流れるようなパスワークや、それを可能としている各選手の動き出しの素早さやポジション取りはとても美しいのですが、岡山の攻撃も各プレーに得点に繋がる未来図が豊かに描かれています。タイプは異なりますが、決して美しさでは引けを取らないと私は思います。
4.岡山スタイルの確立を
以上、長々と述べてしまいましたが、岡山のサッカーは長年サポーターをやっていてもその良さに気づくのに苦労してしまう、ある意味マニアックな側面を持っているのかもしれません。
スルメみたいなんですよ。噛めば噛むほど味が出る…
そんなサッカーだと思います。
ちなみにスペイン産のワインとは相性がよくないのかもしれません。
岡山のサッカーをサッカー観戦歴が浅い人や、他クラブサポにも認知してもらうためには、クラブの歴史が起因する戦術性を「岡山スタイル」として標榜し確立することも一案であると思います。岡山サッカーの認知を高めることで、無用な誹謗中傷を防ぐことも出来るかもしれません。
そのためにはやはりJ1昇格を果たして、岡山サッカーを全国にアピールする必要がありますね!
最後に岡山のサッカーがJ1で通用するかどうか?
例えば、京都や福岡、または湘南のようなスタイルは、今回述べさせていただいた私が考える岡山のスタイルと親和性が高いのかなと感じています。
上がれば残れると私は思います!
だからこそ頑張って上がれるように残り試合、精一杯応援します!
お読みいただきありがとうございました。
※一部敬称略
【自己紹介】
今シーズンから未熟な内容ながらもレビューを続けております。
ありがたいことに、最近、コメントや反応をいただくことも多くなって参りましたので、少しばかり自己紹介をさせていただきます。
麓一茂(ふもとかずしげ)
40代。社会保険労務士です。
コミュニケーション能力に長けていないにもかかわらず、人の意図、心情、人と人との関連性、組織の決定などを推測しながら、サッカーを広く浅く観ています。
公私において、全体的にこのレビューのような論調、モノの見方、性格だと思います。
1993年のJリーグ開幕でサッカーの虜になり、北九州に住んでいた影響で、一時期はアビスパやサガンをよく観戦していました。
(ギラヴァンツが産声を上げるずっと前の話です。)
ファジはJFL時代からです。
J2昇格がかかったリーグ終盤、佐川急便戦を落とした時の伊藤琢矢選手の涙は未だに印象に残っています。
ずっと何気なく一喜一憂しながら応援していましたが、2018シーズン後半に「なぜファジは点を取れないのか」考えるようになり、ちょっとずつ戦術畑を耕すようになりました。
ミラーレス一眼片手の乗り鉄です。
金沢アウェイに岡山→大垣→東京→上野→水戸→郡山→会津若松→新津→新潟→直江津→泊→富山→金沢という、周囲から不思議がられるルートで入ります。状況が許すようになれば、乗り鉄&away戦のレビューも行いたいです。