【短編小説】『ひいばあちゃんの桜』土梅実
(一)
大学の卒業式を終えた、少し肌寒い3月の終わり。朝のニュースは満開を迎えた標本桜のことを伝えた。
今年もそろそろ連絡が来る頃だ。
ニュースで標本桜の満開を伝えるその日に、おばあちゃんから必ず電話がある。
「もしもし、凛ちゃん。今年もひいばあちゃんをお花見に連れて行ってくれない」
ひいばあちゃんは私の生まれたときから、おばあちゃんだった。
毎年必ず、ひいばあちゃんはお花見をしり。
私が高校生になってから、お花見の案内係を母から引き継がれた。
ひいおばあちゃんは、おばあち