児童虐待の定義(児虐法)
児童虐待防止法
第2条
この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
身体的虐待(同法2条1号)
児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
例)
殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する、意図的に子どもを病気にさせる。 等
※外傷が生じるおそれがある行為も禁止。
※親権者等による体罰は禁止。懲戒であっても許されない。
性的虐待(同条2号)
児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
例)
子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする 等
ネグレクト(同条3号)
児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
例)
家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない 等
・医療ネグレクト
→医療水準や社会通念に反して児童にとって必要かつ適切な医療を受けさせないこと。保護者の主観や認識の有無によってその成否が左右されるべきではない。これを認めた判例がある。
心理的虐待(同条4号)
児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届け出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
例)
言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う 等
→児童虐待についての定義がされている規定。
〈用語〉
保護者
→親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子どもを現に監護する者。『児童虐待対応手引き』(以下『手引き』」)によると、親権者や未成年後見人であっても、子どもの養育を他人に委ねている場合は保護者ではない。例えば、子どもの母と内縁関係にある者も、子どもを現実に監護、保護している場合には保護者に該当する。
児童福祉施設の長や里親に関しても、保護者に該当し得る。
※事例ごとに各行為がどの虐待類型に当てはまるか否かを認定するまでの必要性なし。
『手引き』においては、「個別事例において虐待であるかの判断は、児童虐待防止法の定義に基づき行われるのは当然であるが、子どもの状況、保護者の状況、生活環境等から総合的に判断すべき」とされる。
(参考文献)
・磯谷文明、他(2020)『実務コンメンタール児童福祉法・児童虐待防止法』有斐閣
・久保健二(2022)『児童相談所における子ども虐待事案への法的対応ー常勤弁護士の視点から』日本加除出版株
・厚生労働省「子ども虐待対応の手引き」
・厚生労働省「児童相談所運営指針」