義父の息子への特別待遇
息子が生まれるまで嫁ぎ先では
孫は、女の子しかいなかった。
義父は、何故か、どうしても男の子の孫が欲しかったらしい。
だから、生まれた時には、大喜びだった。
おまけに
「ふぅさんなら、やってくれると思った」と
まるで、鎌倉時代のお世継ぎ誕生かのように
私は褒められた。
息子の父親は、自分の趣味に忙しい人だった。
自宅から車で3時間ほど、かかる彼の実家に
私一人で連れて行くのは、大変だったので
そう、しょっ中は行けなかった。
でも
行った時の歓迎ぶりは相当だった。
息子が「バナナ」と言うと
いつの間にか、義父は消える。
戻って来た、彼の手には、立派なバナナが。
誰かの御見舞に持参するような品が
テーブルの上に置かれた。
溺愛する義父
のびのび子育てが大胆な義母
息子がハエたたきを欲しがった時には
通常、使用している物が汚いからと
「彼専用のハエたたき」が用意された。
名前が書いた、それを持ち、笑いながら息子は豪快に振り回していた。
なぜか
仏壇の前に、玄関から
みんなの靴を運び、並べるイタズラをした息子。
でも
「あらあら」と笑われても
叱られる事はなかった。
もちろん
私は、あわてて平謝りしていた。
そのうち息子は
大きくなるにつれて
おもちゃを欲しがり始めた。
もはや
ハエたたきたたきの金額のレベルではない
何千円という物になって行った。
ある日、遊びに行った。
到着したが、義父がいない。
義父を探す息子
すると
義母が笑いながら言った。
「桃に、おもちゃ、おもちゃ」と言われるから海に逃げたんじゃないか、と
まぁ、義父は漁師もしていたから
海に逃げる事も出来たのだけど。
そして
息子に、おもちゃを買いに行くとなると
もちろん、家の娘や、他の孫にも買わない訳にはいかない。
でも、そこで、とんでもない
時代錯誤の「義父流儀」が
始まる。
まず
お世継ぎばりの息子は、希望通りのおもちゃを手に入れる。満足。
他の女子孫チームは、ぬりえなど
細かい物
格差が半端ない。
当然、年齢の高い女子チームから文句が出る。
すると、義母が言うのだ。
「あんた達も、くやしかったら男の子に生まれたら良かったのよ。」
今は、許されない発言である。
気を悪くされたら、ごめんなさい🙏
義父母は、昭和9〜10年生まれ
そして、これは今から30年程前の話なので。
義母のひとことで
女の子チームは、黙るしかなかった。
急に都合よく
男の子にはなれない事を彼女達はわかっていた。
何もないよりは良い。
それに、自分だけじゃないもん、と
思っていた事が推測される。
姉である娘は、さぞかし嫌だったろうと思っていた。家では、なるべく平等に、を心がけていたのだから。
ただ、そんな話を大きくなった娘としていたら
「嫌だったけど、でも、桃が欲しい!と暴れるから、おもちゃ屋さんに行く事になる。
何かは買ってもらえる。それにね、えらいね〜って、褒めてもらえる。」
娘は心の中で
『桃、暴れたら良いのに〜』と思っていたそうだ。
暴れたら、彼女は、何かは手に入るし
褒めても、もらえるのだから
それを聞いて、意外にちゃっかりしてる娘に笑ってしまい
ホッとした。
こんな事もあった。
父親の都合で遊びに行けないと
なった連休
「一人で子どもを2人連れて運転して行くのは不安だから、行けない」と言ったら
義父が、わざわざ迎えに来てくれた。
迎えに来てくれた上に
予防接種か検診までお付き合いしてくれた。
ほぼワンオペ育児の私には有難かった。
現在幸せなことに
「自分好きなタイプ」の息子
今まで、たくさんの人に守ってもらったし
助けてもらった。
そして
義父からもらった
あふれんばかりの愛情も関係していると思い、感謝している。
今、義父は天国の住人になった。
そこから見える息子の行動は
時には、私に無謀に思える。
でも
もしかしたら義父は
「元気で良し!」と手を叩いて喜んでいるのかもしれない、と思う。