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医師が研究留学する際の収入源について

医師が研究留学をする場合、収入源に関する問題はとても重要です。
一昔前は、留学先の研究室から給与は支給されず、貯金を切り崩しながら完全に赤字の状態で研究生活を送る、というスタイルがよく見受けられました。全くの無収入でも米国留学をしたい、そう考える医師が一定数おり、それだけ米国への研究留学は魅力的だと考えている医師がいるということかと思います。
しかしながら時代は変わり、現在ではほとんどの場合、収入源のない状態での留学というのは認められなくなっています。
私の所属するHarvard Medical Schoolも例外ではなく、事前に収入源を確保しなければ所属することができません。
NIH(アメリカ国立衛生研究所)がPostdoctoral Research Fellowの最低賃金というものを定めており、最低この額を確保しないといけませんという指針を出しています。

https://www.niaid.nih.gov/grants-contracts/salary-cap-stipends

基本的にはこの額以上の収入源を確保しなければ米国留学はできないと思っていただいて良いかと思います。
よって、日本にいる間になんとかしてこの額を確保しなければいけません。収入源を確保するためには大きく分けて3つの選択肢があります。
1. 所属する予定の研究室からこの額を満たすような給与を支給してもらう。
2. 医師の海外研究留学をサポートする財団が設置している助成金を受ける。
3. 1+2の合わせ技で最低賃金以上の収入を得る。


もちろん所属先の研究室から満額給与をもらえれば何の問題もありません。しかし、米国の研究室では、給与は大学等の研究機関から支給されるのではなく、その研究室のPI(Principal Investigator)から支給されることになっています。PIは研究室の運営資金(家賃、人件費、研究に使う試薬や実験機器etc...)全てを研究費から捻出しなければなりません。もちろん皆さんが魅力的な研究者で大きな研究実績がありそのアピールがPIに届けば問題ないかもしれませんが、研究室の財政状況次第では給与を満額支給するのが難しいと言われてしまう可能性も大いにあるかと思います。
一方、2の選択肢ですが、現在の円安ドル高の状況が続いており日本の各種財団が支給する助成金の額ではNIHの最低賃金に届かないことがほとんどです。私の知っている限り、最も高額な助成金でも800万円/年となっており、1ドル150円とすると53300ドル/年ほどでNIHの最低賃金には届きません。複数の助成金を受領することができれば問題ないかもしれませんが、多くの場合、各財団は他の財団との重複受給を認めていなかったり、認めていたとしても〇〇万円まで、と制限を設けており、最低賃金を助成金のみで賄うことはかなり難しいと思います。
私の場合は上記の事情もあり、3の選択肢で収入源を確保することができました。
留学先のPIからは、「日本で大型助成金(=400-500万円/年以上)に採択されたら、最低賃金に足りない分は補填してあげよう」と言われていました。
私は2024年からHarvard Medical Schoolの最も大きな関連病院の一つであるBrigham&Women's Hospitalに赴任することができましたが、前年の2023年にはかなりの数の財団の留学助成金に応募しました。幸い複数の助成金に採択されたので、現在無事に米国で働くことができています。
米国留学の財政事情について少しはイメージを持つことができたでしょうか。
次の記事では具体的にどのような財団がどのような助成金を提示しているのかについてまとめてみたいと思います。
ではまた!

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