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私の標本木


いつもの帰り道

線路を越えた直ぐ左側に

一本の木が立っていて

いつの間にか

私に季節を知らせる木になっている

北国とは思えない猛暑だった去年の秋

その木が実を付けるどころか

全体がぶす色になり

葉を落とすことも出来なくなった様子のまま

立っていた


何に殴られたの?


冬が来て

雪が降り積もり



生きていた

黄緑色にふくらんでいた


季節は過ぎ

もう花が咲きはじめ

何にも無かったように

黄緑は緑に変わった


もりもりとしげる葉


でも

少しだけ

違っていて

時計の短針で言えば

木のてっぺん12時から3時の間の部分

葉が繁らなくなっている


ふと鏡を見て

ここ数年の猛暑で

もしかして

私のどこかもゆがんでいるかな

私のなかのどこか

短針で言えば12時から3時の間抜け落ちているのかな

もしやもしや

でも

それは


ただの私自身の自然な老化現象?


新聞の一面で

山でナキウサギの鳴き声が聞こえなくなっているって

海ではゴマフアザラシの姿が見えなくなっているって

そんな見出しに不安になる


でもどうか

季節になればナキウサギがないていてくれますように

海では流氷に乗ってゴマフアザラシが現れてくれますように


赤く実がなる「秋」でありますように




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