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1934年12月4日:日光が国立公園になった日
90年前の12月4日、日光は国立公園に指定されました。環境省のサイトを見ると、世界で初めての「国立公園」は1872年に指定されたアメリカのイエローストーン、日本では1911(明治44)年に「日光を帝国公園となす請願」が議会に提出され、1931(昭和6)年に国立公園法が制定され、3年後それに基づいて瀬戸内海、雲仙、霧島が初の国立公園に指定されました。日光が指定されたのはおそらくその次のタイミングでしょうか。古い方の国立公園だそうです。トップ画像は90周年を記念して今年制定されたきれいなロゴマークを拝借しました。日光国立公園の詳細は、以下をご覧ください。
国立公園といえば、今年7月、当時の岸田総理が「すべての国立公園に高級リゾートホテル誘致」という方針だと報道されました。インバウンドを都市部から地方滞在型に誘導する1つのツールとして豊かな自然を利用しようということのようです。その後の進展は分かりませんが、2016年からすでに、インバウンド向けのハード・ソフト面の充実に取り組む「国立公園満喫プロジェクト」を環境省が推進しているのですね。その中に「国立公園ならではの宿泊施設との連携方策検討会」の議論を踏まえて取りまとめられた「国立公園ならではの宿泊施設ガイドライン(1.0)版」というのが今年10月に発表されていました。既存の国立公園宿舎事業者で、環境省とともにこれにトライアルとして取り組む公募も行われています。キーワードは、「持続可能な発展」、「国立公園ならでは」というあたりでしょうか。
国際的な知名度があるホテルが建つことは訪日客誘致にメリットがあるのでしょうが、むしろ、その場所の自然を知り尽くした、「国立公園のプロ」と唯一無二の体験ができる、多少の不便はこの素晴らしい自然を守るためなら当然だ、行きたい!とお客に思わせることができたら、ものすごくカッコいいいと思いませんか?今後注目していきたい取り組みです。
そういえば、と思って、90年前のこの日の曽祖父の感想を探してみました。
過去二十四五年間、元日光町長西山真平翁の発起により帝国立公園運動を起こし、今日正式に日光公立公園として指定せらる。対外的にはなんら影響なし、対内的のものにして無理の改善施設は大自然の美を失う虞あり。日本は世界のナショナルパークなり。局部的に公園指定の必要なし。樹木、高山植物その他の天然物の保存に力を尽くすべきだと思う。深山の猿や鹿が年々減ることなどは、一考すべきことなり。無理をせず名実ともに国立公園の伸展を願うのみ。
意外に冷静というか、冷淡な感じさえ受けます。1925年の世界旅行でイエローストーン国立公園の自然や個性的なホテルに感嘆した一方、自然保護の意味では懸念も抱いたのかもしれません。
その後、日本政府は外貨獲得のため、外国人観光客の受け入れ施設整備を計画。1940(昭和15)年(真珠湾攻撃はこの翌年というのが驚きです)日本全国で15の国際観光ホテルが建てられました。その最後が曽祖父が手がけた日光観光ホテル(現在の中禅寺金谷ホテル)です。他とはあえて異なる伝統的な純木造で小規模。風景に溶け込むことを意識していました。木材もホテル敷地の伐採林で調達しました。
90年前と、今。外国人誘致!ホテル建設!って、やってることは同じなのですね。技術がずっと進歩している現代ならではの展開に、期待です。