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アカデミア→ベンチャー→大企業へ移ってわかった、それぞれの良し悪し

初めまして。冷凍みかんです。
私は、2019年に大学で博士 (化学系) を取ってからアカデミア→ベンチャー→大企業というステップを踏んで、現在管理部門でデータ解析に従事しています。
2024年を迎えて、私自身のキャリアパスを振り返り今後の考え方を整理したいこともあり今までの経験を一度まとめておこうと思いました。特にベンチャーから大企業へ移った経験のある方はあまりいない様に思いましたので、それぞれのメリット・デメリットを記せればと思います。

もし、博士を今後取られる学生の方やアカデミアから企業へ移りたいと思っている方々いらっしゃいましたら参考になれば幸いです。
内容については個人特定を避けるために、少々フェイクなども入っていますが論旨はぶれないようにしております。ご容赦ください。


結論

後述する部分で色々と時系列順に書いていますが、要約すると以下の点が重要になるのだと考えています。

  • 異動すると前の所属していた組織のメリット・デメリットが見えてくる

  • 中長期のキャリアパスを考えながら自分がどの様な力をつけたいかを早めに考えておきたかった

  • 自分が求めていた「自分で生きていくことができる力」は、所属している企業のカルチャーに依存する部分が大きい

  • 専門性は大事なものの、企業への転職では複数の組み合わせを買ってくれることが多い

私のプロフィール

読む前にどんな 人間が書いているのか自己紹介させていただきます。少しぼやかして書いてある部分はご容赦ください。

  • 名前: 冷凍みかん

  • 分野: 生化学・一部マテリアル系 (wet・dry両方, 博士)

  • 年齢: 30代

  • パートナー・子供: なし

  • キャリアパス: 博士取得後アカデミアでポスドク→ベンチャー企業で研究員に従事→大企業でデータサイエンティスト

私自身は、大学時代から実験と情報解析の両方に興味があり、自分で取得したデータを解析するためにプログラミングを勉強していました。
レベル感としては、得意な言語については自分でライブラリを作ったりするけど、それ以外の言語はコピペしつつ内容を変えていく程度の力だけです。

博士を取るまで

私は地方の国立大学で学部から博士まで同じ研究室で研究に従事していました。
正直、学部生の頃は博士へ行くことは毛頭考えておらず、修士についても周りの同級生がほとんど修士へ進学したため、一緒に進んだ程度の認識です。

修士の途中まではwetの実験を中心に進めていたのですが、指導してくださっていた先輩がメンタルの問題で中退してしまったため、途中でテーマを変更することになりました。
この際に、wetの実験に加えて、dryの解析を活かせる様なテーマを与えられたため、なんとなく研究を続けた方が良い気がしたため博士へ進学しました。
金銭的な心配が非常に多く元々就職が決まっていたのですが、ちょうどdryでできる学内バイトを教授が紹介してくれたため、進む決心をすることになります (論文ゼロ、学振なし)

今思えば、楽観視も過ぎる様に思いますが、この選択を支援してくれた親戚や親に感謝です (この辺りも後述のキャリア変更に関わってきます)。

その後、論文は一向に出ずオーバードクターをし、メンタルも不調になったりするのですが、今回は一旦割愛しておきます。

アカデミアでの経験

オーバードクターをした関係上、うまく学振PDへ応募することができず、企業就活もなかなか進めることができませんでした。
そもそも、私はD2の時点で論文を出せる自信が全くなかったため、一般的な大企業の博士就活へ全く応募する気力が出ませんでした (メンタルの不調もあったかと思います)。そのため、なんとか共同研究をしている先生方へ短期ながらもポスドクとして雇っていただく機会を得ることになります。

ありがたいことに、wetとdryの両方がわかっている人材という扱いを受けたため、うまく合致するプロジェクトがありました。

当時のことを振り返ってみると以下のようなメリ・デメがあった様に思います。

当時感じたメリット・デメリット

  • メリット: 日々の時間の割り当てを自由にして良い

  • メリット: 計算リソース・実験機器などベースとなる様なものが揃っている

  • メリット: プロジェクトの縛りはあるものの、自分の研究を進める上では分野・研究対象の制限はない

  • デメリット: 任期があるため、将来の不安が毎日押し寄せてくる

  • デメリット: いつ何時でもボスからの連絡・打ち合わせが発生する

当時は将来的なキャリアパスなどを考える余裕をなく、目の前の事項をどのように処理するか飲みに集中していました。また、自分の価値を上げていくというような視点ではあまり人生を考えていませんでした。特にどれだけ論文が出せるのかという点のみで日々動いていた様に思います。

今振り返るとわかるメリット・デメリット

  • メリット: 利益になるかある程度不明な部分でも学術的な進歩性があれば時間を割いても良い

  • メリット: アカデミア内でのつながりを作る上でさまざまな方と知り合いになれる (営利組織勤務だと少し壁がある)

  • デメリット: 全く異分野に関わるケイパを伸ばすにはなかなか手を出しづらい

  • デメリット: いくら論文を出しても上手く分野マッチングしなければ、企業には移りづらい

数年前のことになりますが、今振り返ると中長期的なキャリアを考える上でどのような選択を取ることができたのかという見方になります。
特に学会や発表会に参加した際には、アカデミア同士では気軽に研究の話ができますが、企業に所属すると (当たり前ですが) 守秘義務や気軽に話せない様なことも多く、真の意味で知り合いになれるかというと少々難しいところがあります。 

ベンチャーでの経験

アカデミアでの経験を数年積んだ所で、「このままアカデミアに所属し続けたところで自分は生きていけるのだろうか?」という不安に苛まれることになります。
自分は、学際的な研究やさまざまな事象を見ることには興味を覚えるものの、自分がPIになりたいのかと考えると頷けない部分があったのです。
そこで、比較的プレイヤーで居続けられるような国研の研究員などの応募もしてみたのですが、自分の力不足もあり突破することはできませんでした。

余談にはなりますが、大学・国立研究所の面接でもかなり社会実装やどのような応用先があるかを強く質問された様に思います。この点について当時の自分は答えを持ち合わせていませんでした (社会がどのように製品・価値を提供しているのかをわかっていなかったと思います)。企業に入ってみると製品化や競合他社、特許、市場調査などの経験を積みますが、正直全く身についていなかったのが反省点です。

そこで民間企業にも目を向けて、転職活動を開始しました。ありがたいことにdryの経験があったためにあるベンチャーに拾っていただくことができました。
企業での経験は、大学に10年以上いた自分にとって目新しいものばかりでした。特に初めからベンチャーの体験をする人も正直いない様に思いますが、人に価値を提供することを念頭においた事業はどの様な考え方をするのかという部分が大きく発想の転換になりました。

当時感じたメリット・デメリット

  • メリット: 決定のスピードが速い

  • メリット: 必要なものへの投資判断へのスピードが速い

  • メリット: 社員みんなが事業を目指すものとして同じ方向を向いている

  • デメリット: 扱っている技術特許に縛られすぎている

  • デメリット: 上司によってカルチャーが違い、社内の方針が定まらない

今振り返るとわかるメリット・デメリット

  • メリット: 技術開発からリリースまでのスピードが格段にはやい

  • メリット: 専門性が高く一定の分野では世界トップクラスである

  • デメリット: 潜在的なニーズ・バリューと専門性が一致するとは限らない

  • デメリット: それぞれの専門性の高さから分業化が多く、「コマンドアンドコントロール」制となっている

しかしながら、こちらにも数年属した時に以下のような不安が生まれてきました

  • 自分に子供ができた時に、自分が受けただけの教育・環境を用意してあげられるのだろうか

  • 今のベンチャーのカルチャーと自分の求めているカルチャーは合致していないのではないだろうか

上記に「コマンドアンドコントロール」制という項目をデメリットとして挙げました。これは私が最近読んだ「世界一流エンジニアの思考法」という本に書いてあったものです (特にPR・ステマではありません)。

この本にはチームビルディングの方法として

  • コマンドアンドコントロール: 上司が部下に指示をする

  • サーバントリーダーシップ: メンバーが主体で動き、上司は障害を除く

が記されています。特に「コマンドアンドコントロール」については日本企業に多いそうで、ベンチャー企業でもそのようなカルチャーになっていたのだと振り返ると思います。このカルチャーでは、自分の発想や主体性を持って仕事をすることができず「このままこの会社にいても他の会社で生きていけるのだろうか」という感覚が拭えませんでした。

注: 現在他の会社に移ったから上記のような言語化ができていますが、当時は「なんか指示されただけの業務だと今後はまずい気がする」くらいの感覚しかありません。

大企業の経験

そこでまた転職活動を開始しました。上記の経験を踏まえて、以下のことを念頭にして転職活動をしました

  1. さまざまな分野のエキスパートが所属している研究部門がある企業

  2. 海外事業が強い企業

  3. 英語の能力を伸ばすことができるような企業

  4. もっとインタラクティブなコミュニケーションを取ることができる企業

20社ほど申し込んだところ、数社から内定をいただくことが現職へ移ったという経緯になります。内定をいただいて思ったことは、やはり募集の潜在的に想定している人材を上手く読み取り、その人材に自分がどれだけ適しているかをアピールできるかというところです。

今感じているメリット・デメリット

  • メリット: メンバー間のコミュニケーションが活発

  • メリット: 上司がメンバーの主体性を尊重してくれており、自分で仕事を生んだりすることができる

  • メリット: さまざまな部門間でのコミュニケーションが闊達であり、上手く連携をとるために色々考える必要がある

  • デメリット: 意思決定のスピードはベンチャーに比べて遅い

  • デメリット: 部署間のしがらみはやはり多くなかなかプロジェクトが進まないことも多い

  • デメリット: 自分の好きな研究は全くできない (当たり前なので書くまでもないですが)

しかしながら、自分が求めていたカルチャーや自身で生きていく力をつけていくことができる様に思うため、現在はこの場所で色々と学びつつ力を伸ばしていく予定です。

今後どうするか

私は管理部門のデータサイエンティストとして、事業に従事していますが、多くのことが目新しくまだまだ学ぶべきことが多いと感じています。
特に他部署の方との連携や自分の部署内でのコミュニケーションには非常に学ぶことが多いです。

これは、先述しましたが企業文化が大きく違うことに起因している様に思います。
これまでのアカデミア・ベンチャーは「コマンドアンドコントロール」制の体制をとっていました。そのため、上から降ってきたことや依頼されたことを粛々とこなしていき、評価されることが多かったです。
専門家として尊重はされますが、それ以上の成長はなかなか望めなかった様に思います。
現在の所属では「サーバントリーダーシップ」制をとっており、それぞれの意思が尊重されており、自分で仕事を生み出すような体制をとっています。
この力をつけていけば、どの様な場所に行っても生きてはいけるのではないかと思っています。切に上手く自分と周りの好循環を生み出せるような人になることができればと奮起したいです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
まずは自分の思ったことを全て書き出してみたため、なかなか筋が取りにくかった様に思いますが、もし質問等あればぜひ。

冷凍みかん

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