脚の長さの差って誰にもあるーその意味するものとは
整体に行くと、左右の脚の長さの差を
指摘されることが
多いようです。
実は、誰もが左右で脚の長さは
違っているめため、必ずしも
脚の長さの違い=ゆがみ
ではないのです。
脚の長さの差があるから、
利き足と軸足があるのですから。
と言ってしまうと、
生理的に存在するものを
「骨盤がこんなにゆがんでいますよ」
というセールストークに
利用しているように聞こえます。
しかし、本来、誰にも見られる
「脚の長さの左右差」が、
加齢や日常生活や仕事の
無理の蓄積により、
骨盤のゆがみに繋がっていくのです。
この記事では、脚の長さの差を
重心の観点から解説し、
足の長さの差が生み出す
ゆがみのセルフケアを紹介します。
1 自分の足の長さの差を
確認してみよう
まず、御自分の脚の長さの
左右差を確認してみましょう。
一般的に、脚の長さの検査をする時は、イラストの様にうつ伏せで行うか、
仰向けで行う事が多いです。
両脚を揃えて、内くるぶしやかかとを
基準にして、左右の脚の長さの差を
比べます。
しかし、自分で脚の長さの差を
調べるには、壁にぴったりともたれて、両足を前に伸ばしてお尻を落として
座る「長座位」で行うとよいでしょう。
その状態で、両足を捻じったり
床から浮いたりしない様に
ぴったり閉じて合わせます。
つま先やかかと、内くるぶしの位置を左右で比較すると、
脚の長さの差が解ると思います。
患者さんには、写真のように、
仰向き寝か長坐位のまま
両膝を曲げて立て、
骨盤の骨から膝までの長さの差を
比較する方法を行ってもらっています。
この方法では、膝がしらの位置が
手前(自分の方)に近づく側が、
脚が短く見える側となります。
この方法では、脚の長さが
何を意味するかを、患者さん自身にも
解っていただけます。
2 脚の長さの差は、腸骨の前傾側・後傾側の違い
膝を立てて足の長さの脚の長さ差を
チェックした場合、同時に「腸骨」の
前傾側と後傾側が確認できます。
「腸骨」とは、骨盤の中央より、
両側に羽を広げたような形で
見られる大きな骨です。
腸骨が前に傾く動きを「前傾」、
後ろに傾く動きを「後傾」といいます。
この動きは歩いたり走ったりする時に
自然に起こる動きで、
脚が前に出る時は腸骨が後傾し、
脚を後ろに蹴り出す時は
腸骨が前傾するのです。
イスに座って脚を深く組む時も、
脚を上にして組む側の腸骨が
前傾しています。
いつも左脚を上にしないと
脚を組めない人は、
右の腸骨が前傾している
ことが多いですね。
さて、われわれの股関節は、
腸骨と大腿骨の骨頭が連結して
動きを 行っています。
この腸骨と大腿骨頭位置関係が
崩れると、左右の脚の長さが変わって
見えます。
腸骨が前傾すると股関節の位置が
下方に移動して脚が長く見えます。
反対に腸骨が後傾すると股関節が後上方
―頭側に近づくので脚が短く見えます。
そして、脚が短く見える側に
骨盤全体が傾きます。
腸骨は、必ず左右で前傾している側と
後傾している側があります。
つまり、だれでも脚の長さの差は
あります。
3 立った時と寝た時では脚の短い側が違う⁉
私がまだ、治療師として駆け出しの頃、
患者さんの脚が短いと訴える側と、
私が検査をして短いと判定した側が
違うことで話がかみ合わず、
とまどった苦い経験を思い出します。
これは、
寝た時、あるいは座っている時と
立った時では、
脚の長く見える側、短く見える側が
逆になるためです。
寝た時に脚が短くみえる側は、
立った時には
腸骨が傾き荷重がかかるため、
脚が長く見えます。
一方、
寝た時に脚が長く見える側は、
立った時には、
腰方形筋などの筋肉により
腸骨が引き上げられる分だけ
脚が短く見えます。
例えば、
寝た状態で左の脚が短い場合、
椅子に座ると右に骨盤が傾くのに対し、
立った状態では左に腸骨が傾き、
荷重がかかります。
腸骨後傾側が荷重側となるわけです。
つまり、立った時と坐っている時では
骨盤の傾く側が逆になります。
したがって、
椅子に座って体重が掛かる側のお尻と、
立った時に荷重がかかる側の足は
逆になるのです。
4 腸骨の左右差がゆがみに変わる時
腸骨の前傾、後傾自体は
だれにでもあるもので、
左が後傾すれば右が前傾する形で
バランスをとっています。
したがって、脚の長さの差が
あるからと言って、
必ずしも骨盤が歪んでとは
言えないのです。
腸骨の左右のバランスが崩れて、
どちらかが後傾または前傾で
固定されて動きがなくなることで、
骨盤全体が後傾したり、
あるいは前傾に見えたりします。
骨盤が後傾すると、腰や膝が曲がって
へっぴり腰になります。
逆に、骨盤が前傾すると、
反り腰、出っ尻になります。
このような姿勢になっている場合、
腸骨の前傾・後傾バランスの
崩れにより、骨盤のゆがみを
引き起こしていると言えます。
その原因は、
腸骨の前傾、あるいは後傾に働く
筋肉の片使いなどにより硬くなり、
骨盤の片側の関節のどちらかの動きに
ロックが掛かることにあるのです。
腸骨の前傾に働く筋肉としては、
腸骨筋、中殿筋、大腿四頭筋
腸骨の後傾に働く筋肉は、
大殿筋、ハムストリングス
など
一般的に、
腸骨の前傾側ー脚の長い側は
重心側になり、
腸骨の後傾側ー脚の長い側は
荷重側になります。
5 脚の長い側に起こり易い症状、短い側に起こり易い症状
腸骨は、片側が前傾し
もう一方が後傾する形でバランスを
取ります。
腸骨の前傾側は脚が長くなり
後傾側が短くなりますが、
腸骨は、脚の短い側に傾きます。
例えば、左脚が短い場合、
腸骨が左に傾くとその影響は
腰椎が右に曲がる形で現れます。
右の脊柱起立筋が緊張して硬くなり、
前屈時のぎっくり腰をはじめ、
腰痛をおこしやすくなります。
また、
右の腰方形筋が緊張し続けることで
右の腸骨が引き上げられます。
そのため、
骨盤の上やわき腹に近い場所での
慢性腰痛が起こってきます。
右脚が短い場合は、立った時は
左の腸骨が上がりますが、
椅子に座る時は、
左のお尻が椅子の座面に密着し、
左の骨盤が下がります。
いわゆる「左利き尻」の形となり、
長時間のディスクワークで、
左のお尻の筋肉が圧迫され続けます。
したがって、
お尻を通る左坐骨神経も圧迫され
続けて流れが悪くなるのに加え、
硬直する梨状筋などの殿筋により
坐骨神経が圧迫を受け、
坐骨神経痛をおこしやすくなります。
一方、腸骨が傾く側には、
立った時や歩く時に荷重が
かかります。
そのため、膝や股関節、足の裏に
荷重がかかることで、膝や股関節、
足の裏の痛みが現れやすくなります。
このように、脚の長い側は
重心側となり、短い側は荷重側
となります。
重心の使い過ぎ、荷重の
掛け過ぎにより、
負担の掛かり過ぎる部位に
痛みやコリが現れます。
逆に、
脚の長さのバランスを整えることで、
重心と荷重のバランスがとれ、
痛みやコリが改善するのです。
6 脚の長さの左右差が一瞬で整う『足落とし』
① 『足落とし』の効果の秘密
『足落とし』は、
脚の長い側ー腸骨の前傾側と、
脚の長さが短い側ー腸骨の後傾側で、
足の落とし方を変えることで、
脚の長さの左右差を整えます。
〇 腸骨の前傾側(長足側)は、
太ももの前側の筋肉を
ストレッチしながら
腸骨を前傾させるように動かし、
最後に、
足の甲を床にポンと落とします。
反射により腸骨は後傾方向に矯正され、
脚は短くなります。
〇 骨盤の後傾側(短足側)は、
太ももの後ろ側の筋肉を
ストレッチしながら
腸骨を後傾させるように動かし、
最後に、
足の裏を床にポンと落とします。
反射により、腸骨は前傾方向に
矯正され、脚は長くなります。
② 脚の長短、骨盤の前傾・後傾の判定
自分の脚の長短が解りづらい場合、
腸骨の前傾・後傾を判定する方法で
判定するとよいでしょう。
〇 腸骨の前傾側(脚の長い側)
を調べる
椅子に腰かけて脚を組む時、脚を深く上に組む側は
腸骨が前傾しています。
いつも
右脚を上にしないと脚を組めない人は、
右の腸骨が前傾していると言えます。
〇 腸骨の後傾側(脚の短い側)
を調べる
片膝立ちをした時、
膝を立てやすい側は、
腸骨が後傾しているといえます。
いつも左膝を立て、
右のすねを床につけている、
右の股関節を開いている人は、
左の腸骨が後傾していると言えます。
③ 足落としのやり方
・用意するもの
牛乳パックで作った椅子、正座椅子、
踏み台など低めの椅子
① 左膝立ちして
右膝を曲げて床につけ、
右手で右足のすねの下方(足首の上方)を持つ
② 左手で上前腸骨棘を固定して、
右膝をつけたまま
息を吐きながら右足を持ち上げる
③ 息を 吐ききったら 右足の甲をポンと床に落とす
B 左側
① 左膝立ちして座り、
右手で左鼠径部の上を押さえる
② 左手で左膝のさらの下を
引っ掛けて、
息を吐きながら左股関節を深く曲げ
足を持ち上げる
③ 吐ききったら 左足の裏を
ポンと床に落とす
② 左重心タイプ 〔右脚短・左脚長〕の足落とし
A 右側
① 右膝立ちして座り、
左手で右鼠径部の上を押さえる
② 左手で左膝のさらの下を
引っ掛けて、
息を吐きながら右股関節を深く曲げ
足を持ち上げる
③ 息を吐ききったら 右足の裏を
ポンと床に落とす
B 左側
① 正座するように、
左膝を曲げて床につけ、
左手で左足のすねの下方を持つ
② 右手で上前腸骨棘を固定して、
左膝をつけたまま
息を吐きながら左足を持ち上げる
③ 息を吐ききったら
左足の甲をポンと床に落とす
※脚の長さのわかる人は、
長座状態で足を合わせて
あらかじめ調べておいて、
足落とし をした後の変化を
確認してください。
どちらの足落としも、
床に落ちた時に「ポン」と
音がするくらいに、意識して
止めないようにスムーズに
落としてもらうのが
効果のポイントです。
脚の長さの左右差は、多少なりとも
誰もに見られる現象です。
この左右差は許容範囲を越えると
症状に結びつくのは事実です、
私は、脚の長さの左右差を
ゆがみとして患者さんに
アピールするのではなく、
長い側、短い側に症状があるかで、
症状の原因を特定して説明します。
つまり、私も患者さんも
脚の長い側、短い側の意味を
把握したうえで、それぞれに応じた
施術方法を行います。
そうしたことで、高い効果に
結びつくのです。