姿勢に関するネット情報の8割は誤り
姿勢やゆがみに関する
ネットや本の情報は、
ひと昔、ふた昔に言われたもので、
ほとんどが間違いです。
今回は、目からウロコの
健康情報をお届けします。
目次
1 背中を反らせて胸を張った姿勢は
体によくない
2 足を組む癖は体をゆがませるという考えは大きな間違い
3 片方にだけショルダーカバッグを掛ける癖により体は整う
4 左右同じストレッチや運動では体は壊れる
5 筋力不足で体が歪むのではない
6 仰向きで寝ないと体がゆがむ―は、
半世紀前までの常識
1 背中を反らせて胸を張った姿勢 は体によくない
一般的によい姿勢といわれるのは、
見た目は良くても
体には良くないことが多いです。
体操選手が、演技の最後の
着地の際に取る姿勢。
決まるときれいな良い姿勢ですね。
しかし、両手を横に開いて
背中を反らして胸を張るのは、
体にとっては良くない姿勢です。
現に、体操選手には、
反り腰が原因の腰椎すべり症や
脊柱分離症が多くみられるそうです。
子供がスマホやゲームをしている時に、 背中を丸めていると、
「背すじを伸ばしてシャンとしなさい」と言って注意してしまいがちです。
親や祖父母世代の思う良い姿勢とは、
背筋を伸ばすのではなく
背中を反らせて胸を張る姿勢と
誤解されているようです。
それなら、ネットに良い姿勢として
推奨されている
「耳・肩・腰・膝・くるぶし」が
一直線になる状態はどうでしょうか?
こちらも、長い時間撮り続けると、
骨格を支える筋肉が疲労して、
痛みやコリに繋がります。
なぜなら、人の重心は
もともと真ん中にはなく、
左右どちらか、前後どちらかに
ズレているからです。
重心が前に偏るとつま先重心となり、
後ろに偏ると踵重心となります。
ネットの記事を見ると、
骨盤後傾の姿勢が悪い姿勢と
記されていることが
多いです。
そして、骨盤を立たせて
座りましょうと続きます。
骨盤を立たせるとは、
骨盤を中間位にすることであって、
骨盤を前傾させることではないのです。
前重心の人は、背骨の溝が
くっきりと見られる反り腰、
後ろ重心の人は腰骨が
後ろに飛び出し腰骨の溝が
見られなくなる腰曲がりになります。
腰骨が後ろに出るのは、
高齢の方の特徴で、
腰痛の原因にもなります。
そのため、前重心の原因となる
骨盤前傾の人の姿勢が
良い姿勢といわれますね。
しかし、前重心の人が、
必ずしも良い姿勢ではありません。
骨盤前傾、腰椎前弯の人は
つま先に重心が掛かり、
背部の筋肉が伸展し続けられます。
腰の筋肉は常に緊張状態にあり、
ギックリ腰を起こしやすいのです。
したがって、骨盤前傾の人も、
後傾方向に動かして骨盤を立たせる
必要があるのです。
2 足を組む癖は体をゆがませるという考えは大きな間違い
ネットや健康本には、足を組む癖は
体をゆがませるという一文が、
数多くみられます。
次に続くのは、
「なるべく足を組まないように
しましよう!」
「足を組むなら左右交互に
組みましょう!」
というくだりです。
きつい言い方になりますが、
このような考えを書いておられる方は、
なぜ、足を組んでしまうのか
ーということが解っておられない
のだと思います。
「お腹が痛くてうずくまっている人に、姿勢が悪いからお腹が痛くなるんだよ」「利き手ばかり使っているので、
右の肩が痛くなるから、
左右交互に箸を持ちなさい」
といったところで、無理がありますね。
椅子に座った状態で
足を組む癖のある方は、
たいてい、組む側の足が
決まっています。
足をあまり組まないという人でも、
左右同じように足を組んでみると、
組みにくい側があります。
どうしてこのような現象が
起こるのでしょうか?
椅子に座ると、お尻が座面に
密着している側と浮いている側が
あります。
お尻が座面に密着している側を
利き尻側といいます。
長時間のディスクワークで
片側のお尻に体重が掛かり続けると、
お尻や腰の筋肉の血行が悪くなり
硬直してきます。
さらに、利き尻側の坐骨神経も圧迫されるので、それを、何とかしようとする
防衛行為こそが、足組みなのです。
足を組む組むことで、
利き尻側に掛かっている重心が、
中心方向に移動するのです。
例えば、右足を深く組むことで、
左側に重心が移動し、 右のお尻が椅子の座面から浮き、お尻に掛かる負担が
軽減されます。
この理屈を知らないで
足組み癖をやめさせたなら、
ますます骨盤のゆがみや
坐骨神経痛はひどくなります。
もし、逆の脚を組んだら最悪です!
余計に右側に負担が掛かり、
腰痛や坐骨神経痛は、ますます
ひどくなります。
もし、逆足を組むのなら、
股関節を大きく開いて、
外くるぶしを左側の膝のお皿の上に
置くとよいですね。
基本的に、体の動きは
左右非対称なので、足を組む動作も、
左右違うやり方をすればよいのです。
3 片方にだけショルダーバッグを 掛ける癖により 体は整う
体の癖を問診する時、「どちらの肩に
ショルダーバッグを掛けますか?」
とお聞きすると、
「ショルダーバッグは、
体がゆがむので掛けないように
している」
「ショルダーバッグを掛けると 肩がこるのでリュックサックにしている」
「いつも右肩にかけてしまうので、
左に掛けるように気を付けている」
などの答えが返ってきています。
まあ、ネットの記事を見るだけでも、
片方にだけショルダーカバッグを掛けると体がゆがむーというくだりが
とても多く目につきますので、
この間違いが皆さんに浸透していても
仕方がないことですね。
その記事を書いている方も、
何の根拠も実験結果に
基づくこともなく、
イメージだけで言われていると
思います。
しかし、実際に、同じ人に
右側にショルダーバッグを掛けた姿と、左側に掛けた姿を比較して頂ければ、
一目瞭然です。
掛けやすい側の肩に
ショルダーバッグを掛けた時は、
むしろカバンを掛けていない時より、
体はゆがみがなく
安定して立っているのが、
ご自分でも解ると思います。
この結果を見れば、
片方にだけ
ショルダーカバッグを掛ける癖は
体をゆがませるどころか、
体を整えることが解ります。
体が歪むことを懸念して
ワザと逆の肩にかけていたと思うと、
ぞっとしますね。
少なくとも、このような間違いを、
子供たちに押し付けることは
やめていただきたいのです。
ただでさえ、食や生活環境の変化で 弱くなりがちな子の体が、
さらにゆがんでいってしまうのです。
4 左右同じストレッチや運動では 体は壊れる
ネットでのゆがみや
姿勢の矯正法を みていると、
左右差を指摘しながら、
左右同じ運動やストレッチを
行っています。
足の長さの左右差を
指摘しておきながら、
左と右とも太ももの前側の
同じ筋肉緩めるストレッチを
行うことが多いのがその例です。
人の体は、左右非対称なので、
同じ骨盤前傾タイプでも
右重心の人は、右の腸骨は前傾
していても左は後傾しています。
この場合、
右の太ももの前面を緩めても、
左はゆるめてはいけません。
左は、太ももの後側を緩めて
前側に力をつける方法を行う
必要があります。
骨盤が右にねじれているのを
矯正するのに、左右とも同じように
捻じる運動を行うと、
腰の痛みや体の不調を
引き起こしかねません。
体のゆがみは筋肉の緊張の
左右差としておきながら
その左右差を解消する方法が
左右同じストレッチや
運動法というのが腑に落ちません。
ラジオ体操でも、左右同じ動作を
行うことで体は壊れます。
人の体は左右非対称なので、
左右同じ動きをすると
動かし難い側が必ずあります。
それを左右同じように頑張って
動かすほど、筋肉や関節に
負担を掛けるわけです。
骨盤の左右のゆがみに対し、
テレビ番組で整形外科の先生が
おっしゃっていたのは、
「人はもともと左右対称なので、
股関節や骨盤を左右対称に動かして、
その動きを体に覚えさせなければ
いけない」というものでした。
そもそも、関節の位置や角度、
筋肉の緊張バランスが左右異なるのに、左右均等に動かすことができるかも
疑問ですし、無理やり可動のない側を
頑張って動かしたとしても、 脳が左右均等に動かしたとして認知して
再現してくれるとは思えません。
運動は左右それぞれ動きの範囲で行い、動きの差が大きければ、
その原因となる筋肉の緊張バランスを
とることが必要だと考えます。
5 筋力不足で体が歪むのではない
筋力が不足すると、
骨盤や背骨がゆがみ、
姿勢が悪くなると思っている方が
多いようです。
体のゆがみの原因となるのは、
筋力不足ではなく、
筋肉の緊張バランスの差、
または、筋肉のけいれん 硬直による
筋出力の不足によります。
そもそも、
姿勢を支える筋肉は体の深部にある
インナーマッスルですので、
体表の筋肉のトレーニングでは
鍛えられません。
骨盤や背骨がゆがむと言っても、
骨がゆがむわけではありません。
骨盤や背骨を支える
筋肉の緊張バランスの差により、
骨の前後や左右の傾きやねじれ
引き起こされ、
これらを骨のゆがみと
言っているのです。
さて、筋肉の緊張バランスの差は、
体の使い方により決まる
と思われがちですが、
実は、その人が生まれ持った
重心の掛かり方により
決まっています。
ざっくりといえば、
右重心の人は、右側の伸筋、
つまり体幹や関節を伸ばす働き、
外にねじる働きがある伸筋が緊張し、
関節を曲げる働きや内にねじる
働きがある屈筋が緩みます。
左側は、屈筋が緊張し
伸筋が緩みます。
一方、左重心の人は、
左側の伸筋が緊張し
屈筋が緩みます。
また、
右側は、屈筋が緊張し
伸筋が緩みます。
この生まれ持っての緊張バランスの
差が、椅子の背もたれに
もたれ掛かって座り続ける、
中腰で作業を続ける、
右や左に傾いたり捻ったりして 作業をするなど、重心を使い過ぎることで、
筋肉の緊張バランスの差が
大きくなり、許容範囲を越えます。
この時、屈筋か伸筋のどちらかが、
過度の緊張により硬くなることで
その動きにロックが掛かり、
骨盤や背骨、関節の向きが
変わるのです。
このことからも、筋力の衰えは、
さほどゆがみには関係ないのです。
ただ、加齢により骨盤を支える筋肉
が衰え、重力に逆らえなくなって
下がる現象や、膝を痛めて
ギブスを巻いたことで、 膝の前側の筋肉がやせて膝のお皿の骨が
下がることがあります。
このような特殊例の
インパクトが強いため
誤解されていますが、
普通に生活している子供や青年が、
筋力が衰えて体がゆがむことや
痛みが出ることは考えにくいのです。
その顕著な例として、当院に
「伏臥上体反らしが苦手で、
競艇選手になる試験を2度落ちている」という青年が来院されたことが
あります。
いくら背筋を鍛えても全く効果がなく、年齢的に最終チャレンジとなる
3回目の試験の前に
藁をもすがる形で来られたのです。
この方の骨盤は過度に前傾し、
脊柱は過剰前弯しています。
骨盤が前傾しすぎているので、
骨盤を後ろに動かして反らす動作が
できないのです。
ずいぶん前になりますが、
バラエティー番組で、お笑いタレントのサバンナの八木さんが、
アイドルやモデルの女の子と並んで、
伏臥状態反らしの成績を競い、
別の回答者が一番成績の良い人を
当てるという趣旨の企画がありました。
筋トレをしていることで有名な
ムキムキタレント 八木さんに
人気が集中しましたが、
その結果は散々。
何も運動していないアイドルの
女子にも負けるというものでした。
「前屈は得意だけど、
反らすのは苦手なので、
背筋のトレーニングをかなり頑張りましたが、全くダメなのです」
という言葉が印象的でした。
この様に、前方への重心の偏りによる
骨盤前傾の歪みは、 筋トレによっては解決しません。
ということは、筋力とは関係ないこと
になります。実は、立位体前屈は、
後ろ重心の者にとっては
苦手なことが多いのですが、
後ろに重心が偏るほど、
伏臥上体反らしは
よい数字が表れるのです。
ところで、かの競艇選手を目指した 青年ですが、伸筋を緩めるストレッチをしてもらい重心を後方に移動させるようにしてもらったものの、
試験まで一ヶ月を切っていたことも
あり、試験は失敗でした。
その頃は、この記事の重心ケアも
まだ確立していなかったことも
ありますが、生まれ持ったものを
変えていくことは大変です。
競艇はスピード系スポーツなので、
競技自体は、前重心の選手が
有利となりそうなのに なぜ、
上体反らしを重視するのでしょう?
後ろ重心のタイプが
圧倒的有利となる伏臥上体反らしを、
運動能力の指標とすることも
問題となると思います。
6 仰向きで寝ないと体がゆがむ ーは、半世紀前までの常識
いまだに、「仰向きに寝ないと
体が歪みますか?」「
横向きに寝る癖があるので、
仰向きに寝るように努力しています。」といわれる方がいます。
仰向き寝は、腰や肩にかかる負担が
一番大きい寝方です。
現に、ぎっくり腰や五十肩の方で、
仰向きにはねられない方が
多くみられます。
そのため、何十年前から、
楽な方を上に横向き根をするのを
推奨していましたが、
最近では、医師の先生も、
呼吸器や循環器への負担が少ない
横向き寝を勧めめられるように
なりました。
骨盤前傾の反り腰の人は、
仰向きに寝ると腰の下に手のひらが
楽に入るほどのトンネルができ、
その分 仙骨に負担が掛かって
痛みが生じることも。
逆に、骨盤後傾の腰椎後弯の人は、
後ろに曲がった腰が無理やり伸ばされるため、痛みが生じやすく、
膝を立てないと寝られない人も
見えます。
また、左右に重心が偏ると、
骨盤が重心側に傾き、重心側のお尻に
体重が掛かって寝にくくなります。
重心側の肩甲骨は下角が開いて
二の腕を巻き込ませます。
非重心側の肩甲骨は下角が開いて
二の腕を巻き込ませ
下角が閉じる形で巻き込みます。
どちらの巻き込みも、仰向きに寝ると、肩や腕が巻き込むことで、床から浮き不安定になります。
首や肩のコリや痛み、四十肩・五十肩の症状のある側は、ほとんどの場合
床から浮いて不安定になっています。
肩に痛みがある場合、
仰向きに寝ると痛みが増します。
仰向きに寝づらい、
仰向き寝で痛いのは、
仰向き寝の体勢でゆがみが
強調されるから。
そして、さらにゆがみが
ひどくなっていくのです。
このように、ネットや本の情報は
必ずしも正しいとは限りません。
特に姿勢や骨盤のゆがみに関しては、
かなり間違いも多いですね。
大切なのは、御自身や親世代は
ともかく、子供世代に
間違った情報で、
姿勢の癖を治させないことです。
姿勢の専門家として、
切にお願いする次第です。
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