相当季節外れのHEAT-TRAINING~深部体温計-COREのススメ③
なぜ深部体温計なのか~暑熱馴化だけではない
深部体温計の大きなメリットは適切な暑熱順化で暑い中でも安全に負荷強度を上げられること、無駄に頑張ってコンディションを落とすようなことがなくなること、が考えられる。
先に挙げたようなレースやそれに向けたトレーニンをすると、熱中症のリスクが高まる。人と競ううちに無理してしまうことは多くが経験していると思う。気付かないうちに深部体温が過剰に高くなってしまうこともあるだろう。
しかし、ヒトには暑い環境でも放熱性を高めて深部体温を上げにくくし、放熱性を上げた状態でも出力を高く維持するような機能があり、その「夏の戦闘モード」にスイッチすることを「暑熱馴化」と呼んでいる。
レースやトレーニングの前に、きちんと「攻めた暑熱順化」が出来ていればオーバーヒートのリスクは大幅に低減することが出来る(断言)。
そして、安全に攻めるには機械の状態監視(CBM)のように、問題になる前に止めるためのCOREによるモニタリングが欠かせない(断言)。
また、夏のオーバートレーニング抑止においても非常に有益なツールとなり得ると考えている。
自分も何度も失敗したし、周りでも夏にコンディションを落としてしまう人を沢山みてきた。チームメイトのKK選手など、春は鬼神の強さでJBCFデビューWINからのE2もいきなり表彰台、一瞬でE1に駆け上がったが、夏には人間に戻ってしまったことがある。
これはパワーベースドトレーニングとオーバーヒートが関係していると推測する。
AISSによる実験では、運動経験者(平均70ml/kg/min←FTP5倍レベル)であってもVo2MAX-65%パワーの持続時間が外気温10℃と40℃を比べれば約80%、20℃と30℃でも30%ほど短くなる結果が出ている。
また、「限界は何が決めるのか?(アレックス・ハッチンソン)」にも深部体温と出力の相関を示唆する実験結果が例示されている。
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/studiesreports/1971_1980/S4908.pdf(AISS)
しかし、パワーベースでトレーニングをすると、ここの区間は300Wattを下限で登ろうとかここから20分5倍ペースでとか、春夏秋冬、外気温に関係なく同じ基準値を用いることになる。そうなると、冬や春に余裕だったパワーのワークアウトでも、夏は深部体温が高くなり身体にストレスをかけダメージが生じていることが考えられる。
もちろん夏に追い込み過ぎないようにすることも大事だし、パワメと心拍計があれば熱ダレは認識することが出来る。
ただ、その時に何を負荷指標とするのか曖昧になってしまうし、どこまで追い込んでよくてどこまで控えればいいか、見極めが非常にむずかしい。
これはCOREを用いて深部体温をモニタリングすれば、最適なトレーニングができる。
パワーをかけるポイントでは事前に深部体温を下げた状態で行い、熱ダレしたなかで無駄に踏まないというコントロールが出来るようになる。
また、暑い環境では出来ることだけ行い、涼しい環境~野辺山とか野辺山とか木曽とか木祖とかクーラーの効いた部屋とか野辺山とか~でボリュームを稼ぐことでメリハリの効いたトレーニングが出来る。
深部体温をコントロールすることで、しっかりフィジカルに効かせられるトレーニングが出来るだけでなく、無駄にダメージが蓄積するのを回避し、次に行うトレーニングのクオリティも高く保つことが出来る。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/trainings/22/4/22_357/_pdf
夏に高強度をやる前は水を被って、体の内側を冷やしてから。
COREの使い方~常時と経過のモニタリング
ここでは今のところ唯一の非襲性深部体温計であるCOREの使い方について、簡単に紹介する。
ちなみにGARMINのサイコンもなんらかのアルゴリズム(おそらく外気温、心拍、パワー、過去何日かのエクササイズを総合的にみている)から、暑熱順化(暑熱適応と呼ぶ)のスコアを算出してくれる。
参考にはなるが、ヒトの個人差は大きく、体温を測らないので精度の点で深部体温計を用いるのとは全くの別物と考えている。
まずCOREはチェストバンド(付属しない)で胸につける心拍センサーのように装着する。
(私は心拍センサーは光学式のものをウェアの中にそのまま入れるので、COREはバンド替わりに抗菌ゴム紐を使用)
そして、COREの操作や実績の確認は公式アプリから行う。
アプリでCOREとスマホをペアリング。電源ON状態(振るとONになりLEDが点滅する)で胸に装着すると深部体温が表示される。
表示の単位時間が変えられ、累積の滞在時間もグラフ化されるので、どのくらいの熱ストレスに晒されたのかが感覚的に把握できる。
また実績はデータとして蓄積される。
レースやトレーニングの終了後にオーバーヒートして熱が下がらない日はどのような深部体温の経過であったか、体感強度の割に心拍が高かった/低かったが深部体温のプロフィールはどうだったか、異変の原因を探る際に有効である。
また、長期的にその経過を追うことで、自分の暑熱順化が順調か落ちてきているか、などを把握することが出来る。
また、GARMINやそれ以外のサイコンでも拡張機能が用意されているものであれば、外でも常時モニタリングが出来る。
スマホを見ていなくても、深部体温が表示されるので熱中症の危険を回避したり、駆ける前には負荷を落としたり保水して冷やしておくという使い方が出来る。
GARIMNの場合は、
① ガーミンHPから拡張機能アプリをダウンロード
https://apps.garmin.com/ja-JP/apps/6957fe68-83fe-4ed6-8613-413f70624bb5
② Garmin Express(Garmin connectのID)を用いてGARMINデバイスにインストール
https://www.garmin.com/ja-JP/software/express/windows/ (WindowsPC版)
複数のGARMINデバイスにインストールする場合、面倒だが一個ずつDL→インストールする必要がある。
③ GARMINデバイスにアプリがインストールされたら、connect-IQデータフィールドでCOREの数値を表示させるよう設定する
設定画面からconnect-IQ
④ GARMINデバイスとCOREをペアリングする
設定画面から「センサー」を選択。
公式HP(ガーミン連携)
https://help.corebodytemp.com/en/articles/4422791-using-a-garmin-device-with-core
トレーニングに革命がおきる?
これについてはまだ自分が明確なエビデンスを見つけられていないが、オフィシャルHPにはヒートトレが高地トレ(低酸素)の代替になる可能性が記されている。
機序としては、「人間の身体は熱ストレスを感じると、血中の血しょうを増やす。これにより血中成分のバランスが崩れる。この乱れを整えるためにヘモグロビンを生成する。」とのことだが、合理性はあると思う。個人差はあるのは言わずもがなだが。
また、これだけでなく血液が放熱に回されることで筋肉や臓器への酸素供給が制限されてしまう。身体は酸欠状態になるため、より酸素供給能力を高める方向に順応することは十分に考えられる。
つまり、深部体温が高い状態を維持しながらであれば、より低いパワーゾーンで有酸素運動能力を向上させることが出来るかもしれない。
これにより、涼しい環境でより激しく高強度、暑い環境で緩く低強度、とうまく使い分けることでより効率的なトレーニングが可能となるかもしれない。
そうなれば、ポラライズドトレーニングの有効性を最大限活用できることにもなり、これまで超えられなかった壁を越えられるようになるかもしれない。
そうとなったら、CORE付けて、冬をもエアコンで暑くして、ローラー台で汗だくになるしかない。でもなぁ、今冬は電気代が。。。