あなたへ

あなたが産まれたこの世界は誰も助けてくれません。　たとえあなたが深い深い井戸の底で、肉体に冷たく打ちつける現実に打ち震えていたとしても。


涙がこぼれ落ちないように上を向けなんて言う人もいるかもしれません。

でも、上を向いたところで見えるのは、良く見知った顔が、彼等、彼女等の幸せという光を背中にのぞかせながらあなたを見下ろしている景色。
好奇というおぞましいものが入り混じった視線があなたに突き刺さる。
無頓着で無慈悲な安否確認の声があなたの元に放り込まれ、それはただの不穏な波となってあなたを更に更に地底へとめり込ませる。
方向違いのお節介が落として行った、寸足らずのロープに向かってあなたは必死で手を伸ばすでしょう。

何度も跳んで。必死で跳んで。



ついには力尽きてあなたは重力に服従する。
そしてそのまま赤茶色に濁った土となるんです。