停滞から抜け出しつつあるLNGプロジェクト
米次期大統領にトランプ氏が決まったことで、世界のLNGプロジェクトが動きを見せてきた。
今年1月のバイデン政権による新規プロジェクトの許認可停止が、来年のトランプ就任とともに解除される見込みとなった。これにより、米国のLNGプロジェクトが再活性化する。これは中東やアフリカのLNGプロジェクトにとっては競合先が息を吹き返すということになる。
●ルワイスLNGで長期契約
中東では今年、アブダビのルワイスLNGプロジェクトで最終投資決定(FID)となり、仏テクニップ・エナジーと日本の日揮グローバル、現地NDMCエナジーのジョイント・ベンチャーがEPC(設計・調達・建設)業者に決定している。
さらにアブダビで実施されたイベント(ADIPEC)で、同プロジェクト初の長期売買契約(SPA)が締結された。契約先はドイツのSEFE Securing Energy for Europe子会社のSEFE Marketing and Trading Singapore。契約内容は15年間、年間100万トンのLNG供給である。
●KBRがカルハットLNG第4系列のFEEDを受注
また、同じく中東のオマーンで計画されているカルハットLNGでは、第4系列増設プロジェクトの基本エンジニアリング設計(FEED)業務を米国のKBRに発注した。KBRは380万t/yの第4系列の設計サービスを提供することになる。範囲には、ユーティリティ、LNG タンク、桟橋、および関連インフラストラクチャの追加または拡張が含まれる。
中東のLNGプロジェクトは、米国のLNGモラトリアムを逆手に、長期供給安定性と環境適合性の高さをアピールし、プロジェクトの開発とLNG供給契約の確保に努めてきた。
しかし第2次トランプ政権下では、米国のLNG供給能力の拡大が加速する可能性もあり、長期契約についてもハードルは低くなる。そのため、中東が新規案件を急いでいる、という見方もできそうだ。
●ロブマLNGはFIDを延期
一方、アフリカのモザンビークで、エクソンモービルなどが進めているロブマLNGプロジェクト(年産1,800万トン)では、今年ようやくFEED作業が開始された。FEED契約者はテクニップ・エナジーズと日揮グローバル、そしてマクダーモットの2グループが競合的に作業を行っている。
同プロジェクトは内戦でロブマLNG建設地が攻撃対象となっていたためで、紛争そのものは収まりつつあるものの、引き続き不安定さが残っている。
せっかく、FEEDが実施されているにも拘わらず、エクソンモービルはロブマLNGの最終投資決定(FID)を2025年から2026年に延期した。紛争による影響がまだ残っているなかでエクソンモービルは2030年の生産開始という目標は維持しているが、その目標通りに動き出せるか、不確実性が高いように思える。
日揮ホールディングスの受注契約への影響が懸念されるところだ。
●プロジェクト活発化でLNG価格の低下に期待
他には、カナダでシーダーFLNGプロジェクトが2024年6月に最終投資決定(FID)を受け、2028年後半までに操業を開始する予定。このプラントでは再生可能電力が使用される。
またメキシコでは、アルタミラFLNG2プロジェクトが2024年7月に建設資金を確保し、最初のLNG納入は2026年上半期に予定されている。
さらに米国のGolar LNGは、LNG運搬船を480億立方メートルの容量を持つFLNGに改造する最終投資決定(FID)を取得した。
IEAによると、カタールの拡張プロジェクトと合わせて、最終投資決定に達したか建設中のLNG液化プラントは、2030年末までに約2億7000万バレルの輸出能力を追加することになる。このLNG生産能力の増加は、市場のファンダメンタルズを緩和し、10年後のガス供給の安全性に関する懸念を和らげる可能性がある。
LNGプロジェクトの活発化、供給力の増加にともない、LNG価格も低下する可能性がありそうだ。
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