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まごころ塩むすび
最近は、家庭でもおむすびを握るときは、素手ではなく、ラップや手袋を使って、おむすびを握るのだそうだ。
だからか、個食が進んだからか、人々の中には、人が素手で握ったおむすびを食べるのが嫌だという人が増えていると聞いた。
実は、私はその逆で、ラップや手袋を使って握ったおむすびより、人が素手で握ったおむすびを食べたいと思う方。
人が素手でにぎった心を込めたおむすびの方が、断然おいしいのに。といつも思う。
だって、、、、、その方が、心が伝わりやすいと思いませんか?
以前、私は、刺繍教室に通っていた。わいわいがやがや楽しい話をしながら。手作りが好きな人は、基本何でも手作りしてしまう人が多いと私は、思っている。
ある時、午後からは仕事で途中抜けなくてはいけない時、もうちょっと、もうちょっとと思いながら、午後の時間ギリギリになってしまった。
「先生、私、仕事なので、今日はこれで失礼します。」
「えっ?今お昼でしょう。お弁当は?」
「いえ、今日は作ってきてないです。」
「じゃあ、ええと、うちに何かあったかしら?冷凍食品でもいい?」
「いいえ、先生、時間がないから、もう失礼します。」
「ちょっと待ちなさい。塩しかないけれど、おむすび握るから。」
そう言って、先生は、本当に塩だけのおむすびを握ってくれた。
私は、いいのになあと思いながら、先生のおむすびを頂いて、車に飛び乗った。
休日だからか、道はたくさんの車で渋滞していて、仕事現場に着いたときは、想定していた時間よりずっと後だった。
おなかすいたなあ・・・・・・
昼食を買う時間もなく、急いで仕事に向かおうとしたとき、ふと思い出した。
あ、先生の塩むすび。
バックから取り出して、一口ほおばった。・・・・・・おいしい。・・美味しい。
あっという間に完食した。先生のおむすびのおかげで、午後の仕事を乗り切ることができた。
どうして、塩だけなのにこんなにおいしいのかなあ?
考えた。ふと・・・・思いついた。
ああ、先生のまごころだ。
午後からお仕事大変ね。頑張ってって言ってたっけ。
先生の手から、大丈夫?気を付けて運転するのよ。お仕事頑張るのよ。そんな気持ちがおむすびに入ったんだ。
ああ、まごころ塩むすび。
手から伝わる心のおむすびは、おいしい。