風 大久保一久の優しい世界その1「トパーズ色の街」
伊勢正三と大久保一久の二人が組んだフォークデュオの風ですが、4枚目のアルバム「海風」でフォークからAORへと路線を劇的に変えました。まさに風向きが変わったアルバムです。そして、私にとっても衝撃的でした。それまでは、正やんこと伊勢正三をメインに聴いていたのですが、この「海風」の場合、久保やんこと大久保一久の作品群が素晴らしく、聴けば聴くほど私の琴線に触れてきました。
久保やんは残念ながら昨年ご逝去されましたが、その作品は今でも私の心に響いています。
大久保一久さんのご冥福を謹んでお祈り申し上げます。
そして、そんなクボやんの「海風」における素晴らしい作品をみていきましょう。
「トパーズ色の街」
まずは何と言っても「トパーズ色の街」を取り上げないといけません。(僕)が体験したひと夏の淡い思い出をアップテンポのリズムにのせて久保やんは軽やかに歌い上げています。
当時、この「海風」を特集した番組があって、久保やんが「トパーズ色の街」を歌っているとき、バックで正やんがマラカスとか名前はわからないけどギザギザの板状のものを棒でこする楽器などを演奏してた記憶があります。懐かしいですね。
さて、2番の歌詞ですが
「年より若く見える
えくぼをつくり
話しかけてきたのさ
人見知りせず」
いきなりこんな感じで女の子が話しかけてきたら(僕)はドギマギしたはずです。でも(僕)は
「何気なく僕はそれに
その場の戯れだと
相づちうった」
心の動揺を隠して、「うん」と相づちうつのが精一杯だったでしょうね。その心境痛いほど分かります!本当はもっと話したかったはずです。しかし
「焼け付く浜辺に素足
手からサンダル下げて
むこうで呼ぶ声聞こえ
あの娘 急に
かけていったのさ」
(僕)にとってはあっと言う間の出来事でした。
たったこれだけです。
でも、(僕)にとっては鮮烈な出来事で、秋になって思い出したりするくらいの記憶となったのです。
この辺の内気な男の心の描写が見事ですね。そして、あの娘はとても魅力的な女の子というのが伝わってきます。人懐っこくて、爽やかな風を思わせる女の子でしょうね。そりゃあ秋になっても思い出しますよ。この2番の歌詞は本当に秀逸だと思います。
で、気になるのが1番の歌詞です。
「あの娘は小麦色の腕で
今頃オフィスの窓辺でさ
タイプうってるよ」
うーん。これはどういうことなのだろう?
(僕)にとっては一瞬だったあの娘との出会いと別れ。でも、どうやら(僕)は、なんとなくあの娘の事を知っているような感じですよね。
この謎を考えていくうちに、私は久保やんの優しい世界へと導かれていくのでした。