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オフコース アルバム「over」その6 「僕のいいたいこと」

オフコースのアルバム「over」B面1曲めは松尾一彦さんの「僕のいいたいこと」です。

作曲は松尾さんで、作詞は小田さんと大間さんと松尾さん。ストリングス編曲が鈴木さん。この時点でのオフコースのメンバーが結集したとも言える作品です。

しかし、誠に不思議な作品で、メロディラインが二つあり別々のメロディと歌詞が歌われますが、ある時それが合致し、再び別々になっていきます。

レコードでは表のメロディも裏のメロディも松尾さんが歌っていますが、武道館ライブでは表を松尾さんが歌い、裏メロディは小田さんが歌い、鈴木さんや清水さんがコーラスしています。大間さんのドラムも力強くて五人のオフコースの壮大で感動的なライブ演奏です。

表の歌詞

僕のいいたいことは
とくべつなことでなく
誰れもが心の中で
いつも思っていること
口に出していうのが
すこし恥ずかしくて
忘れられかけている
とてもすなおなことば

「いつも愛しているよ」
「君を愛しているよ」
ひとにはそれぞれ 
愛するひとがいて...
「いつも愛しているよ」
「君を愛しているよ」
ひとにはそれぞれ
哀しい思い出があって...

「いつも愛しているよ」
「いつも君を愛しているよ」
ひとにはそれぞれ 
哀しい思い出があって...

裏メロディの歌詞(一部聴き取れない箇所あり)

悲しくて
悲しくて
夕暮れが
冷たくて
やるせない
心を抱きしめて
季節が散ってゆく

ゆらゆら
愛して
ゆらゆら
夢をみて
ただいつも
ため息は聞こえない
心が散ってゆく

一人では
一人では
こんなにも
苦しい夜だから

暖かい
愛が欲しい
あなたを(???) 探して

このように表の歌詞は「愛している」という感情を繰り返し歌っていますが、裏メロディでは別れた事実を歌っています。

うーん、この裏メロディの歌詞って前のオリジナルアルバム「We are」の松尾作品「せつなくて」と呼応している気がしてなりません。

「せつなくて」
あきらめきれずに
君の好きな街を
歩いてただ歩いて
辛くなるだけなのに
「僕のいいたいこと」
悲しくて
悲しくて
夕暮れが
冷たくて
やるせない
心を抱きしめて
季節が散ってゆく

この一番の歌詞など、「せつなくて」の続きのような感じです。

失恋して街を彷徨い歩いて夕暮れ時になって、せつない気持ちが悲しい気持ちに変わっていく描写です。

「せつなくて」
好きだよ好きなんだ
心がちぎれるほど
「僕のいいたいこと」
ゆらゆら愛して
ゆらゆら夢をみて
…中略…
心が散ってゆく

好きだ!という気持ちが揺らいできてる感じです。街を歩いているのも夢をみているかのように現実感から遊離していってるようです。

そして「せつなくて」の心がちぎれるほどという表現から「僕のいいたいこと」では散っていくという表現になっています。終ったということです。まさにoverです。

「せつなくて」
つめたくて
夜がベッドが
あの歌さえ今は
「僕のいいたいこと」
一人では
一人では
こんなにも
苦しい夜だから

一人の夜の、一人のベッドは冷たくて、そして苦しい。君の心はまだあたたかいのだろうかと反問していたけど、今ではそのあたたかさを探しているという状況で歌は終わります。

これはもう松尾さんから小田さんと鈴木さんヘ贈った歌と解釈してしまいますよね。裏メロディでは悲しい現状があることを歌い、表ではでもまだ愛があればなんとかなるかもと問いかけているような、そんな作品です。

「僕のいいたいことは特別なことではないよ。人にはそれぞれ悲しい思い出があるけど、愛があったじゃない。このままじゃ、せつなくて、悲しくて、苦しくて、これからはそんな夜をずっと過ごすことになるよ」と。

ライブで唯一同じ歌詞を歌っている箇所がここですね。

♪
一人では
一人では
こんなにも
苦しい夜だから
♪

五人で最後の夜だったこの日、五人は何を思っていたのでしょうか。


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