風 大久保一久の優しい世界その2「あの娘の素顔」
前回、アルバム「海風」の久保やんの「トパーズ色の街」について触れましたが、ちょっとした謎があると最後に言及しました。
その謎とは、(僕)とあの娘の出会いと別れは一瞬だったのに、どうも(僕)はあの娘の様子をある程度知っているのではないかということです。
「オフィスの窓辺でさ
タイプうってるよ」
という1番の歌詞ですね。
この謎を解くために注目したのが、同じ「海風」収録の久保やんの作品「あの娘の素顔」です。
「あの娘の素顔」
どうも「トパーズ色の街」のあの娘と「あの娘の素顔」のあの娘は同一人物のような気がしてなりません。
これを前提にこの二つの曲を聴くと、次のような登場人物と人間関係が推測出来ます。
(僕)(あの娘の彼氏)(あの娘)の三人です。そして、(僕)と(彼氏)は知り合いで、純情な(僕)と違い、この(彼氏)は遊び人です。
彼氏とあの娘が飲んでいる店に(僕)がいたのでしょうか。(僕)を見つけた彼氏は僕に言いました。
「手持ち無沙汰なら あの娘と飲むかい」
と、いつものふざけた調子です。彼氏は(僕)があの娘に少し気があることも分かっている感じです。
当然僕は気分を損ねます。
「冗談は止めてくれ」
そして、(僕)は独白します。
「あの娘がほら振り向き
不思議そうな顔をする」
この主人公の(僕)の心境が現れていますよね。(僕)はあの娘に好意を抱いていますし、なんでこんな男と付き合っているのだろうと思っているはずです。不真面目で遊び人の彼のどこにあの娘は惹かれているのか分かりません。女心の不可解なところですが、そういうところも(僕)があの娘に惹かれるところかもしれません。
「いつかくれた視線
何故か覚えて」
これは「トパーズ色の街」で話しかけられたときのことかもしれませんね。
あの時と同じ様に、(僕)は強がって自分に言い聞かせます。
「ふと僕は幼なじみを思い出していただけさ」
ここで「トパーズ色の街」であの娘がえくぼを見せながら話しかけてきた内容を推測してみましょう。
あの娘はちらっと遠くにいる彼氏に目をやり
「あの人と知り合いなんでしょう?」
突然話しかけられた(僕)はその彼氏を見て
「うん」と戸惑いながら応えたのかもしれません。
あの娘も(僕)ももっと話したかったでしょう。
あの娘は彼氏のことについて(僕)にもっと聞きたかったかもしれません。多分、あの娘と彼氏は付き合い始めたばかりの頃だったのでしょうね。
(僕)はこんな魅力的な女の子とは当然もっと会話したかったはずです。
でも、向こうで彼氏が呼ぶ声がして、あの娘は走って行った、そんな場面が「トパーズ色の街」だったかもしれませんね。
(僕)はその後で彼氏にそれとなくあの娘の事を聞いたと思われます。
「あの娘と付き合ってるの?」「あゝ、あそこのビルのオフィスで働いてる娘でね。最近付合い始めたんだ」
「そうなんだ」
「今度一緒に飲もうか?」
なんて会話が交わされた感じがします。だから「トパーズ色の街」の1番の歌詞が
「あの娘は小麦色の腕で今頃
オフィスの窓辺でさ
タイプうってるよ」
となったのでしょう。
そして、あの娘は
「いつも少し悪女ぶる
あの娘だけど
ふと暗い素顔見せては
僕を惑わす」
という、どこか悩んでいるような表情を浮かべているわけです。そして、その表情がますます(僕)の心を惹きつけてしまうという、(僕)にとっては厄介な状況に陥ってしまってるのですね。
あの娘と(僕)、どうなるのでしょうか?気になるところです。