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オフコース 「We are」その5 あなたより大切なこと

アルバム「We are」のA面4曲めは小田さんの「あなたより大切なこと」です。

この曲は言葉数が少ない作品です。もともと小田作品は言葉数が少ない印象があります。そのため曲の解釈は一見単純そうですが、逆に聴く者が自分なりに足していく必要がある気がします。

結局のところ、この曲は「あなたより大切なことがあるの?ないだろう」という自問自答の繰り返しなんですよね。答えは明らかなのに、ついつい問いかけてしまうっていう、うーん、小田さん自身が混乱しているというか弱気になっている時に作られた曲のような印象を受けます。

曲調がハードなので、その勢いに乗ってしまいます。その熱量に圧倒されて、聴き終わったら「あなたのことを愛するよりも大切なことがあるの」というフレーズが頭に残るだけです。でも、歌詞の内容をよくよく見ると「小田さん、どうしちゃったんだよ?」って感じです。「時に愛は」のクールさも無いし、「僕等の時代」の包み込む温かさもないですね。

ただ、鈴木さんとの関係を前提にすれば理解できる気がします。


例えば君が消えたら
帰れない 僕は 何処へも

実際、鈴木さんがオフコースの脱退を正式に表明してからは小田さんも相当悩んだようですから。オフコース自体の解散とか、自身の音楽活動からの引退とか。そこまで追いつめられたようで、この出だしの歌詞の心境だったのでしょう。


でも例えばこのまま
世界の終わりが 
来るならその時 
あなただけを連れてふたりで 逃げ出すことはできないだろう

うーん、この歌詞に小田さんの苦渋の思いが込められているように思えます。「ヤス、お前は誰にも代えがたい存在なんだよ。それは分かってる。でも、今更二人には戻れないんだ!」という、あまりにも悲痛な歌詞です。

もしかしたら、小田さんは鈴木さんから気持ちを打ち明けられていたかもしれません。「まだ迷ってるけど…云々」くらいな感じで。

小学生で知り合って、音楽活動を共にしてきたのですから、小田さんの鈴木さんに対する信頼はかなり深かったはずです。その鈴木さんからオフコース脱退を仄めかされたら相当ショックを受けたでしょう。その時の混乱した心情をそのまま歌にしたのかもしれません。だから曲調はハードになり歌詞は同じ事の繰り返しとなったのではないでしょうか。

悲痛な思いは続きます。


かけがえのないもの
それだけのために 
そのひとだけのために 
生きて行くのは
ずるいことなの 

「かけがえのないもの」とは、オフコースのことでしょうか。
「そのひと」とは、鈴木さんのことでしょうか。

このふたつを追い求めることはいけないことなのか?ずるいことなのか?俺には分からない!

小田さんは叫びます。

♪誰か こたえて♪

当時の小田さんと鈴木さんの状況はどういったものなのかは分かりません。ただ、お互いが何らかの異常事態を感じていたと思われます。この曲なんて、小田さんが「もし、そうなったら」と想像した時の自身の不安や恐れを作品にしたとしか考えられませんから。「時に愛は」や「僕等の時代」で見せた自信の欠片もありません。まさに急転直下です。当時はこの曲の勢いに目が眩み見えていませんでした。

もしそうだとしても、混乱した自分の心情をここまでの作品に仕上げる小田さんの力技は凄いですよね。

さて、自分の心情を素直に歌った小田さんですが、鈴木さんはどう答えるのでしょうか?




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