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オフコース&小田和正 「冬が来るまえに」

名作アルバム「ワインの匂い」以降、オフコースは「SONG IS LOVE」「JUNKTION」「FAIRWAY」と3つのアルバムを制作する過程でバンドとしての生まれ変わりを探ってゆくわけです。そういう意味では「ワインの匂い」ほどのまとまりはないですが、2人のオフコースの魅力にバンドとしての音の厚みが徐々に加わっていく不思議な魅力を持った作品群となっていると思います。

今回は「SONG IS LOVE」の中でも私の大好きな「冬が来るまえに」をみていきたいと思います。と言いつつ、これまた解釈が難しい小田作品なんですね。

私が思うに「冬が来るまえに」は、ある一組の恋人たちがいて、そのうちの男の方が部屋を出ていく時の情景を歌ったものでしょう。そういう情景を前提に鑑賞してみます。


ふるえる肩を抱けば 
それだけつらくなるから 
うしろめたさを胸に 
この秋の日はひとりきり 

男が部屋を出ていくと決意した時だと思います。つまり彼女との別れを決意したのです。

季節は晩秋。彼女の寝顔を見る男。今日からはひとりで生きていこう。


あゝひとときの倖せに 
流されるままに生きてゆく 
新しい朝の光まぶしく 
あなたの胸におどる

晩秋の長い夜がようやく明けようとしている。このまま惰性で彼女と暮らしていくこともできる。

彼女の微かな寝息と共にわずかに動く彼女の胸。そこにレースのカーテン越しに差し込んできた朝日。その新しい光をみて男は決意を新たにする。


ことばにしてしまえば 
あなたを傷つけるから 
疲れたそのよこがお 
ただなつかしくみつめてる

別れの言葉は言わずに出ていこう。男はそんなことを思いながら彼女の寝顔を見守る。


あゝ燃ゆる想いは消えて 
かわらぬ愛はもうみえない 
あなたの嘘のないやさしさに
かえすことばもなく

男の心に入ってきた別の女性の存在。彼女に少しずつ小さな嘘を言うようになってしまった自分。彼女に対する嘘は同時に自分に対しての嘘。


私はただむなしく 
ありがとう 
ありがとう

これ以上嘘はつけない。
男はドアをそっと開ける。


透明なまどろみ過ぎても 
少女は愛の終り 
気づかずに夢みてた

彼女の安らかな寝息を感じたまま、男はドアをそっと閉める。


あゝひとときの倖せに 
流されるままに生きてゆく 
この冬が来るまえにもう一度
あなたに会いたい 

晩秋の朝の寒さが男を包む。男は不安になる。この冬をひとりで堪えられるだろうかと。ここで出ていくのをやめれば楽だろう。彼女の笑顔が見たくなるだろう。分かりきったこと。でも、それは出来ない。男は上着の襟を立てた。


私はこの寒さが 
好きだから 
好きだから

彼女とは会わずに冬を堪えていこう。冬の寒さが好きだから、きっと堪えていけるだろう。堪えていかなければならない。

男の姿は晩秋の朝の光の中へと消えていった。

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という感じで解釈してみました。寝たままの彼女に無言で別れを告げ、部屋を出ていく男。私としては、そういう情景を描くことで、この作品の解釈に納得ができました。

小田さんって映像化したイメージを最低限の言葉で表現しているような気がします。

ところで、残された彼女はどうなったのでしょう。目覚めると彼の姿がない。彼の身の回り品もない。それに気付いた彼女は…。

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