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オフコース 「Yes-No」
オフコースはシングル「さよなら」をリリース後僅か3か月後の1980年3月にシングル「生まれ来る子供たちのために」をリリースしたわけですが、これは小田さんの「企画もの」的な意味合いのものでした。そして、また3か月後の1980年6月に出したシングルが「Yes-No」です。
「Yes-No」は、ある意味、小田さんが満を持して世に問うた作品と言えるのではないかと思ってなりません。「これがオフコースサウンドなんだ、Yes?それともNo?」っていう感じでしょうか。
もちろん私は「Yes」でした。当時、私はこの「Yes-No」に魅了されました。冒頭のフリューゲルホーンの静寂感から始まって、メンバーそれぞれが奏でる躍動感や一体感、歌いだし直前の転調による戸惑い。恋に落ちた男の心理をこれほど見事に表現しているイントロを私は知りません。
私事で恐縮ですが、当時初めて女性と付き合う機会を得た私。その私のデートに臨む心境がこのイントロそのものでした。家を出るときは勇者の旅立ちです。頭の中ではフリューゲルホーンが鳴り響いていました。待ち合わせ場所へ向う道中は「あれを話そう」とか「どうすれば自然と手をつなげるだろう」とか期待で胸が高鳴り、ドラムやギターやベースやキーボードが鳴り響きます。実際に彼女が現れた瞬間そういう想いが全て吹き飛び頭の中が真っ白になるという転調。
バンドとしてのオフコースは「愛を止めないで」でエンジンが始動し、「さよなら」で加速し、「Yes-No」で遥か上空へ飛翔していった印象が私にはあります。この3曲は全て歌い出しがセリフであり、それだけに聴く人の心を引き付けるキャッチャーさがあるのでしょう。
オフコースの内情を知る由もない当時の私はただオフコースにハマっていきました。オフコースに対しては「Yes」のみでした。
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これは「Yes-No」のシングルジャケットですが、今改めて見直すと左端の鈴木さんの他のメンバーに対する微妙な距離感が鈴木さんのオフコースに対する「No」を表しているように思えてなりません。しかし、オフコースはこれ以降名曲の数々を作り出していきます。鈴木さんのプロとしての矜持なのかもしれませんね。