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オフコース アルバム「over」その7 「哀しいくらい」

オフコースのアルバム「over」の7曲めは「哀しいくらい」です。この「哀しいくらい」以降の曲は作詞作曲が小田さんであり、小田三部作あるいはover三部作と一括りにしてもいいと思うくらいテーマ性にあふれています。

それは、やはり鈴木さんがオフコースからの脱退を宣言した事を受けての小田さんの心情の変遷を表現したものと思われるからです。

「哀しいくらい」は、付き合い始めた男女の物語ではないと思われます。付き合い始めたばかりの男女の物語を描いた名曲には「Yes-No」があります。この曲には「Yes-No」のような高揚感が全くありません。寂寥感に苛まれている感じで満ちています。付き合っていた女性の気持ちが自分から離れている事を理解した主人公が哀しく歌い上げる曲です。

内容的には、前作「We are」の最後を飾った「きかせて」の続きとして位置付けができる作品だと思います。

「きかせて」は、心変わりをした彼女の気持ちをきかせてと問いかける主人公の物語でした。夜は短いからどうするか早くきかせてっと問いかける主人公。

「哀しいくらい」は、その彼女の気持ちが自分から離れた事を悟った主人公ですが「哀しいくらい君が好きだから」「夜よ明けないで」「見えない明日は来ないでいい」と切に願うわけです。

彼女の心が自分から離れた事は分かったけど、今ならまだなんとかなりそうと彼女に対する未練を語っているのです。

だから「顔をあげて、目を閉じて」と主人公から目を逸らし俯いた彼女に対して願っているのですね。

この「哀しいくらい」という曲によって、二つのアルバム「We are」と「over」が結びつき、「We are over」というメッセージが具現化されたと言えます。

当時はただただこの曲が好きでした。初めてこの曲がレコードプレーヤーから流れてきた途端に魅了されました。

今になって当時の舞台裏が見えて、改めて二つのアルバムを聴き直してみて、以上のような巧妙に配置された様々な仕掛けが見えてきたような気がします。

この三部作のプロローグとも言うべき「哀しいくらい」は、いきなり懺悔から入るのですよね。


僕のまちがいは哀しすぎる
いくつかの愛を通りすぎたこと
いつも言葉がたりなくて

もっと言葉を交わして気持ちを通じ合わせていれば良かった。そんな小田さんの後悔の念が伝わってきます。


今はこのまま夜よ明けないで
見えない明日は来ないでいい
哀しいくらい君が好きだから
心ひらいて

鈴木さんが会議でオフコースからの脱退を表明した時、小田さんは会議を中止して鈴木さんと二人で深夜のレストランで話し合いをしたそうです。まさにその時の小田さんの心境をそのまま表現した感じです。

同時に、「きかせて」の時は問いかけでしたが、「哀しいくらい」は逆に俺がもっときかせてあげればよかったと自省し、「短い夜」だったのが「夜よ明けないで」と切なる願いへと変化しています。

間奏はレコードではサックスでしたがライブの時は鈴木さんのギターなんですね。この鈴木さんのギタープレイに感じるものがあったのか、このあと小田さんは一瞬ですが歌えなくなるんですよね。

♪しあわせになれるね♪

の次は本来なら

♪ウーウウウウーウー♪

と続くのですが、それが歌えませんでした。その後、声が若干乱れています。そして、その小田さんを支えるかのように大間さんのドラムが大きくなっていくところもたまりません。

そして、最後の

♪君が好きだから♪

のコーラスはライブでは鈴木さんが担当してるんですよね。私はここを聴く度に胸があつくなります。

…やはり何だかまとまりの無い文章になってしまいました。頭の中には確固としたイメージがあるのですが、それを文章化するのは難しいですね。

ともかく「哀しいくらい」という珠玉の名曲が五人のオフコースの終幕の幕開けとなったのです。



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