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淵一助っ人クラブ[決] vol.2

戸田さんがなぜ町田商店街の野球チームを敵対視しているか、その訳を嶋田さんが訥々と話し始めた。
「戸田さん、中坊の頃、町田に遊びに行った時
カツアゲにあって、その時の相手が今度の相手チームの監督なんだって!」
「すぐ言う!」ダイアンの津田かっ?
「どっかで聞いたなぁ?
そんな何年も前の事で……まぁ、わかりました」
「そうかやってくれるの?」
「まぁ話はしてみます。結果は分かりませんけど……期待はしないでください」
「そうか。悪いね亮ちゃん!そうと決まれば
動体視力の特訓だァ!行くぞ、嶋田!
あの場所へ!」
「行くってどこに……?あぁ駅前の。
なら私は手首の運動に!頼むね、亮ちゃん」
かくして二人は駅前のパチ屋へ……、

「また助っ人かい?」
マスターの古田達也が心配そうな顔をして
聞いてくる。
「まぁ町田が相手と聞きましたから」
そう答える五十嵐の中にもある感情が………。
実は五十嵐にも戸田と似たような経験があり、
それとともに、ここから二駅で町田に出られるのだが、あちらは腐っても東京都で、こちらは相模原の田舎(と思っているのは五十嵐だけだろう)と勝手にライバル視しているのが原因と
思われる。

翌日、お昼の時間(淵一はお弁当持参で好きな場所で食べて良い)五十嵐は屋上から目あての
女の子を探した。
" 彼女は中学の時から弁当はいつもグラウンドの隅っこの花壇で食べてたっけか…… " 
案の定、そこに彼女はいてくれた。
鼻唄を響かせ ながら弁当を食べている女子の前に立った五十嵐は、いざ声を掛けようとした際
違和感を覚え妙な感じになった。
「何だ?この感じ …あっ、ジョックロック!」
そう。口ずさんでいたのは智辯和歌山の応援歌
「魔曲」と呼ばれた曲。

「日野、久しぶり!淵中以来か?」
「ビックリした〜。五十嵐じゃん?
どしたの、私に何か用?」
日野皓子は(あ〜、こいつも名前フレーミング
だぁ!忘れてたぁ)イヤホンを外しながら
聞いてきた。

「突然なんだけど、日野にさぁ確認したい事が
あるんだ。日野ってさ、トランペットは吹けるだろ?」
五十嵐はストレートに聞いてみた。
「たぶん……」
日野皓子は何故か自信なさげだ。
「たぶんって、日野が中学時代に見せた
リコーダーやフルートなどの吹奏楽器を初見で
吹けるっていう絶対(音感)ではなく、
絶対(指感)を持っている君でも無理なのか?
押すトコが3つしかないのに?」
「3つだから、なのよ」
うん?どういう事だ?
まず、日野皓子の絶対(指感)の事について……
ピアノではよく聞くのが絶対音感だけど、
これは耳コピーで演奏が出来ちゃうもの。
日野のソレは一度指の動きを見ただけで完全にトレース出来ちゃうというスゴ技!
「ピストンバルブだっけ?
3つなら日野には楽勝じゃん!」
何も知らない五十嵐は日野の気持ちを楽にする
為に軽く言った。
                                                                         つづく





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