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Wの悲劇
去年の末くらいに肩関節周囲炎、いわゆる50肩が再発した。
整形外科を受診したら、レントゲンなどを撮られて、特に何も悪いところは写っていないけれど、まぁ50肩で間違い無いでしょうということだった。
自分としても、肩関節周囲炎は二度目でもあるし、基本原因不明の痛みであることもわかっていたので、それで納得して、その時は痛み止めの湿布をもらって帰った。
マッサージとかリハビリ以外に特に治療法もないので、まぁこれもやむなしだ。
ところがこの湿布を貼りはじめてしばらくすると、患部が猛烈に痒くなった。
どうやらかぶれてしまったらしい。
しかも痛みは一向に取れないので、湿布はじきにやめてしまった、やめたのだが、痒みは治らない。
そうこうしているうちに、それまで動かさなければ痛みのなかった肩が、何もしなくても痛くなった。
夜中など痛みで目が覚めたりする。
これはいよいよ困ったなと思っていたら、ここにきて肩に点々と瘡蓋ができているではないか。
ここでふと新たな疑念が浮かんだのだ。
この痒み、本当に湿布によるかぶれなのだろうか?
実は今をさること20年前、私は帯状疱疹を患った。
ご存知の方も多かろうが、これは水膨れや発疹、痒み、痛み、を特徴とするのだが、個人によって症状の出方は様々だ。
実は私の場合痒みがかなり強く、水膨れは出ずに、瘡蓋ができた。
これ、今の状況とそのままではないか?
多分昨年来の肩痛は間違いなく50肩だ。
だが最近の痒みとパワーアップした痛み、そして発疹は、同じ部位に新たに発症した帯状疱疹なのではあるまいか?
恐ろしい疑念であるが、理屈は通っている。
こうなるともう素人判断では如何ともし難いので、意を決して皮膚科を受診することにした。
それが今日のことである。
以上の面倒な話を説明すると、先生も経緯をちゃんと理解してくださって、その上で厳かに仰った。
「帯状疱疹の可能性はあります。しかしかぶれて掻きむしったために瘡蓋になった可能性もあります、要は見ただけでは分かりかねます。」
「血液検査をすれば確定しますが、時間がかかります。」
「なので痒み止めの軟膏と、帯状疱疹の抗ウィルス薬を処方しますので、一応飲んでください。」
要するに帯状疱疹じゃないかもしれないけれど、薬は出すから飲んでみて良くなればよし、というわけだ。
どうにもモヤモヤする結論だ。
帯状疱疹でなければ、再び整形外科のお世話になるしかないわけで、なんとなく堂々巡り感が強い。
どれもこれも老化のなす技だから、いっそう切ない。
病院からの帰り道、私は夕日に向かってため息をついたのである。
あと帯状疱疹の薬、薬価がえらく高いぞ。