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発展的思考へのQNKS〜UKD法を用いて〜

第1章 はじめに

私は、統合的・発展的に考えることができる児童を育てていきたいと考え、数年間研究をしてきた。統合的・発展的に考えるとは、異なる事柄をある観点から捉え、共通点を見いだして一つのものとして捉え直すこと、また、絶えず考察の範囲を広げて新しい知識や理解を得ようとすることである。
今回は、発展的思考である、絶えず考察の範囲を広げて新しい知識や理解を得ようとすることについて考えていきたい。

第2章  Q 発展的思考を生む問い

はじめに、発展的思考を生む子どもの問いをどのように生み出していくか仕掛けについて考えていきたい。
その時、
問いは生まれるものでなく、子どもが生むものだ
ということを子どもも教師も意識しておきたい。

今回は発展的思考ということで、自力解決し、解決方法を共有して、見方・考え方を子どもが顕在化した後からのことを考えていきたい。
子どもたちが、本時の問題を解決して顕在化した見方・考え方を
他の問題でも働かせられないかな
と考えていくためには、教師の仕掛けが必要だと思う。子どもたちは、はじめは解けたら満足で、他の場面でもこの考え方は使えるのかな?
とはなかなかならない。
そこで、顕在化した見方・考え方に対して、
〇〇(見方・考え方)が使えるのはこの問題(ここまでに児童が解いた本時の問題や練習問題)だけですか?
限定的な発問をすることで、もっと他の場面を意識することができるようになる。また、
この問題では偶然〇〇(見方・考え方)が使えたね
とあえて一般性のないものと断定的に伝えることで、一般性に注目するようになる。
このような発問により、
絶対他の問題でもできる!
という絶対を引き出し、
もっと他の場面を調べたい!
と子どもたちが自ら問いをもつことができるようにすることが大切だと考える。

資料1 問いを生むための発問

第3章 N 発展的思考を生む抜き出し

問いをもった後は、どのように他の問題場面を考えるか考えていきたいと思い。問いをもった段階で
他の問題を考えてごらん
と言うと、子どもたちは適当に数値を変えるだけとなる。つまり問題を作ることはできるが、発展的思考につながらないのである。
そこで、子どもたちが自ら探究的に他の問題を考えることができるような仕掛けをここで紹介していく。
私は、本時で解いた問題を縦に並べて
これらの問題で似たところを全て抜き出しましょう
と言い、子どもたちに問題の類似点を考えさせて、同じ構造の問題と捉えることができるようにしている。下の資料2の授業の時は、
たし算
繰り上がりがある
時刻の計算

などがを共通点と考え抜き出すことができていた。

資料2 同じ構造の問題と捉える仕掛け

第4章 K 発展的思考を生む組み立て

そして、これらの情報組み立てていくと、
資料2の授業の場合、
繰り上がりのある時刻のたし算
と子どもたちは考えた。つまり、現在の子どもは、
繰り上がりのある時刻のたし算では、〇〇という見方・考え方は使える
と考えている状態といえる。
このように、
同じ構造の問題、繰り上がりのあるたし算の問題では顕在化した見方、考え方を働かせることができた
と捉えることができると発展的思考が生まれやすくなる。この授業では実際に子どもから、
繰り下がりのあるひき算はどうかな?
繰り下がりのあるひき算はどうかな?

と他の問題を考え探究しようとする姿が見られた。
このことから同じ構造と捉えることで、他の問題を子どもたちが見つけやすくなることが分かった。

資料3 同じ構造の問題を見つけると他の問題が見つけやすくなる

第5章 S発展的思考を生む問題作りUKD法

子どもたちが問題の構造を理解した後、問題作りをしていきます。
他の場面でも、見方・考え方が働かせられるか
このことに目的意識をもって問題を作るように仕掛けていきます。そこでおすすめするのは、
UKD法です。
ここからはUKD法を具体的に話をしていきます。

1.UKD法とは

UKD法とは、私が作った「問題をつくるための視点」である。
子どもたちが問題を作る時
UKD(問題のレベル)を意識して、どんなレベルの問題を作るか考えていく。そして、作った問題をロイロノートの提出箱に入れ、子どもたちが自分の目標に合ったレベルの問題を選び解いていくというものである。
それでは、UKD法をさらに細かく説明していく。

2.UKD法のU

UKD法のUとは、問題レベルをあげる、アップさせることだ。このときのアップとは、本時の問題や本時で取り扱った練習問題からレベルをあげるということである。
資料3の授業でいうとUとは、繰り上がりのあるたし算から繰り下がりのあるひき算の問題にレベルを上げることである。

資料4 子どもが作ったアップ問題


問題のレベルを上げたらどこをレベルアップしたのか下の資料5のように記述していく。

資料5 レベルアップしたところの記述


さらに、この問題づくりの目的意識は、顕在化した見方・考え方が他の問題でも使えるのかなので、下の資料6のように、
作った問題の解説を見方・考え方を働かせたか分かるように記述させていく。

資料6 見方・考え方が働かせられたか分かる解説

3.UKD法のK

UKD法のKとは、問題レベルを変えない、キープすることである。
資料3の授業を基にすると繰り上がりのあるたし算の問題を再度作るということである。
また、キープの問題を作った人は問題を変えたポイントを書かなくてもよいこととしています。この問題の解説については、2.UKD法のUで記述した通りである。
さらに、このキープの問題のみ、問題を作ることが難しい子どものために下の資料7のように穴埋めの問題作りのパターンも準備している。その理由は、問題を作るとはとても難易度の高い、理解力を要する活動であるからである。

資料7 子どもが作ったキープ問題

4.UKD法のD

UKD法のDとは、問題レベルを下げる、ダウンすることである。
資料3の授業の場合、繰り上がりのないたし算の問題をつくるということである。
そのとき、問題を変えたポイントも2.UKD法のUのときのように記述していく。
また、この問題の解説についても2.UKD法のUで記述した通りである。

資料8 子どもが作ったダウン問題

UKD法のUKDについて分かっただろうか。
ここからはUKD法をよりよい活動にするためのさらなる視点について考えていく。

5.UKD法をよりよい活動にするための視点

問題を作る視点UKD法だけでは、子どもたちは問題をなかなか作ることができない。その理由は、どこを変えればよいか分からないから、さらに問題を作る経験がないことでそもそも自信がないからだ。そこで問題を作る視点UKD法だけでなく、下の問題を変える3つの視点も明確にして子どもたちに提示をした。

問題を変える3つの視点
数を変える
個数(項数)を変える
場面を変える

masamasa

すると子どもたちはどんどん探究心を燃やし、他の場面で見方・考え方が働かせられるか考える姿が見られた。

資料9 問題を変える3つの視点

6.UKD法のよさ

UKD法を用いるよさは、他者と関わる力が上がることだと思う。UKD法は問題作りという難しい行為のため、かならず以下のトライアンドエラーが起こる。

考えられるトライアンドエラー
1.レベル(UKD)が不正確
2.作った問題が成り立たない、もしくは、解説が違う
3.解き方が分からない

masamasa

UKD法や問題を変える3つの視点を用いて問題を作ることは、個人レベルで必ずしも常に完璧な状態に仕上がることはない。
だからこそ個人で探究するときに問題作成者や問題を解ける子との対話が必要となる。

資料10 UKD法のよさ 対話


さらに、UKD法の間は、個人の興味関心に基づいて自分のペースで探究していくため、必要な時に必要な人と関わる非同期コミュニケーションの状態といえる。
そのため、UKD法を行うことで、
課題を解決するために必要な人と関わる力をつけることができる。

資料11UKD法のよさ 関わる力

さらに問題レベルをダウンするよさを子どもが気付くことができるとすごく大きな学びになる。
それは、過去の学習も全学年の学習も、全て同じ見方・考え方を働かせていたことに気付き、さらに学習のつながりに気付くからである。
だからこそ、ダウンするということは決して悪いことでないという価値を教師も子どもも持っておくことが大切である。
最後に、QNKSのサイクルをUKD法に入る前に回し、さらに入ってからも実は回している。

Q見方・考え方は使えるのはどんな問題のとき?
N問題を変えれる場所はどこか(問題を作る視点・問題を変える3つの視点)
K同じと捉えた構造を生かして問題を変える
S提出箱に入れ、みんなの作った問題を解き、Qに対する自分の考えをまとめる

masamasa

さらに、みんなの作った問題を解いている間もQNKSを回している。
小さなQNKSのサイクルを様々なところで回し続けることで、分かるという学びがどのように獲得できるか子どもたちも分かってくるのではないかと考える。

第6章 まとめ

今回は、発展的思考をどのように生むか、どのように考察の範囲を広げていくか、このことに注目してまとめていった。
その中で、発展的思考を作り出す思考パターンを教師も子どもも意識化すること必要な人と関わる力を伸ばしていくことの大切さを感じた。そして、UKD法は1つの問題を作る視点だが、問題を変える視点と組み合わせることで、意図を持って問題作りに挑めるようになるということが分かった。
この意図こそ探究のスタートではないかと感じた。

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