3年生算数「長さ」と「おもさ」QNKS〜トラブルから起きた学び〜
はじめに
3年生の2学期の算数は「長さ」の単元からスタートする。始めは、メジャー(巻き尺)を用いて身の回りの長さを測る。
メジャーは物差しの延長
私は、そう捉えて、様々なものを測る活動をスタートした。
その時、想定していたつまずきは、30メートルのメジャーで測れない長いものはどうするか
それくらいであった。
それも、物差しの経験を生かして、
つなぎ合わせる
という考え方があることをおさえて、いざQNKSをもちいて活動を始めた。
Q 教室の縦の長さは?
教室の長さはどれくらいのなの?という問いに向かって、子どもたちは、私が準備しておいたメジャーを取りに来て、計測し始めた。
するといきなりトラブルが起きた。
一つの班が不思議なメジャー(メジャーの写真 下)を持っていて困っていたのである。
この班が何に困っていたかというと、
1目盛りが1mmのはずが…何か違う。
多分5mmだけど…
となかなか絶対に5mmだと言えずにいた。
すると周りの班もその班を助けをしようと集まってきた。
その様子をしばらく見ていると、「一万をこえる数」の数直線で学んだ1目盛りの数に注目するという考え方が転移できていない子もいることに気が付いた。
そこで1目盛りはいくつ?をクラスの問いに変更した。
Q① 1目盛りはいくつ
メジャーの世界をもう一度線分図の世界に置き換えて板書をした。そして、1目盛りの長さはいくつだろう?と問い掛けた。
N① 数直線から情報を抜き出そう!
数直線をみて、1目盛りの長さを求めていこうと思う。そのために、
この数直線から分かることをどんどん抜き出そう
と言うと、
間の目盛りが10個あることや、
10cmまでの線分図
になっていることが上がった。
KS① 情報を組み立てて説明しよう!
これらの抜き出した情報をもとに組み立てていくと、
1目盛りは1cmだよ!
と声が上がった。さらに、その後、絶対に1cmであることを10÷10という式から引き出すことができた。これをもとにペアで説明を再現する活動を行った。
しばらくすると、
メジャーと数直線って同じことじゃん
と声が上がった。すると「一万をこえる数」の単元で作ったカード実践のカードを振り返り、どんな考え方を使っていたか振り返ろうとする姿が見られた。
そして、
1目盛りがいくつか考えたら分かる
という既習の知識をメジャーの世界でも使えそうと意識化することができた。
そして、この後、
みんなが困ってたことをもう一度図にするよ
と言って以下のように板書(板書下部)した。
Q② 1目盛りを考えよう
板書の下部のように数直線を示すと、
さっきと同じようにやればできる
と子どもたちは言っていた。しかし、同じように考えようとすると、
1÷2となってしまい、考えることができない。
計算でどうやって1目盛りを考えるかがクラスの問いとなった。
N② 分かることをもっと探そう!
子どもたちは、Q②の段階で情報を抜き出すことはできていた。しかし、これだけの情報では解決できないことが分かった。すると、
絶対5mmなのに!
と答えは分かるのに根拠が提示できず、はがゆい思いの子もいた。そこで、
もっと分かることをみんなで抜き出していった。すると、
この目盛りは1cmより小さい
1cmは10mm
という情報が上がった。
KS② 組み立てて説明しよう!
情報を組み立てていくと1cm÷2は10mm÷2と考えることができることが分かった。これが出た時に、はがゆそうだった子どもも
10÷2=5 だから5mmなんだ!
と晴れやかな顔になった。
これで1時間が終わってしまったので、次の時間に実際に教室の縦の長さを計測する活動を行った。
この不思議なメジャーは悩みの根元で嫌がられていたが、この授業の後はやってみたいと大人気だった。実際に教室の縦横、廊下など各々が測りたいところを測り、はじめのQをクリアしていた。
知識の転移
この1目盛りに注目するという考え方は重さのはかりでも大活躍した。
上の教科書の問題を見た時に
これも数直線じゃん!
目盛りの数が20だけど、メジャーでやったこと使えばいいだけじゃん!
と知識が転移している姿が見られた。
苦労して、本気で考えて得た知識、言語化された知識は転移可能なものになると感じ、子どもの「?」にしっかり付き合うことの大切さを実感した。
まとめ
数直線とメジャーはリンクされたもの、つまり同じと大人は見るが、この小さな差異につまずいてしまう子もいることが分かった。この小さな差異を同じと見れるように繋げていくことが大切なことだと感じた。そして、単元を超えて知識を転移できる経験をたくさんさせてあげることの大切さを実感した。
不思議なメジャーはどこから?
この不思議なメジャーを私は用意していない。
長さをメジャーを使って測る授業の前々日、班の数分メジャーを準備して職員室の棚に置いておいたのである。おそらく、体育などで使ったメジャーを誰かがそこに戻したのであろう。
この小さな行為が子どもたちの学びを深めるきっかけとなった。日常生活には学びを深める大きな要素がある。そう感じた授業だった。