転がっていた鉄パイプを手に取ると 私は渾身の力を込めて 憎しみをかち割った 飛び散る血潮は風に乗って 燕の巣を赤く染めた 夢の中で見た 幼い頃の思い出は 虫が湧…
赤レンガの隙間には いつか見たあのテントウ虫 楊枝を使ってほじくってみたところ 汁を出して爆ぜた 赤い夕陽と冷たい風 干しっぱなしの雨傘に日差しがたまる 私は今…
品川駅近く。 真夜中、日付が変わった。 辺り一帯、獣の匂いが漂う。 トラックで運ばれていく家畜たち。 ビルに反響して怯える声が響き渡る。 立入禁止の看板が立つ門の…
自分の人生なんだから、幸せになるのも不幸せになるのもその人の勝手。 自分に不幸があったときに、それを人のせいにするな。 自分で選んで、自分で決めろ。 自分で決め…
【お題】 ストーカー 【本文】 憎きストーカーをついに捕らえた。 こいつは私の個人情報をどういう手を使ったのかわからないが抜き出し、プライベートを盗み見ていた。 …
【お題】 夜間ウォーキング 【本文】 高層ビルの間に歩く足音は ネオンの響きに溶かされて やがてくる不条理な出来事にも目もくれず ただひたすらに夜道に流れていく…
【お題】 産卵 【本文】 今日は娘の運動会だった。 大勢の人がいる中で、私は校庭のど真ん中で卵を産んだ。 私はPTAの役員として、教員とともに運動会の運営のお手…
【お題】 夜空 【本文】 空気が澄んでいる。 冷たい夜。 人々が至るところで、夜空を見上げている。 いつもは絶えず人々が流れているこの場所も、今は皆立ち止まり、じ…
【お題】 罪深き青年 【本文】 残響の欠片が胸に刺さり 遠くの方でこだまする 野蛮な感情は心に支配され 行き場を失い 眠気と戦いながら豪雪の中をゆっくりと歩く …
【お題】 タンカー船 【本文】 真夜中の勤務中、私はタンカー船から何者かによって突き落とされた。 それまでの記憶はほとんどないが、なぜだか意識が朦朧としていて、…
【お題】 中華街ぼいん 【本文】 中華街に彼女と旅行に行ったときのこと。 過去に何度か来たことがあったのだが、何だか当時とは様子が違う。人々が何やらピリピリして…
【お題】 塾講師 【本文】 「ついにこの日がやってきました!」 「私達は今日のために頑張ってきました」 「必ず夢は叶います!」 「私達は必ず勝ちます!」 「辛い…
【お題】 死の島 【本文】 この島では数週間前から、とある感染症が蔓延し、島民の約80%が死滅している。 その病にかかると数日のうちに、皮膚がどろどろに溶けてい…
【お題】 旅の途中 【本文】 ただならぬ気配に木々がざわめく 時の流れと緩やかに肌を撫でていく風は 私の遠い日の思い出を揺り起こす 赤く光る閃光は 遠くの方で気…
【お題】 山の恋心 【本文】 「おかーさん!」 「おかーさん!」 山々にこだまする甲高い声。 叫び声の主はこの山の麓の村に住む少女。 彼女は道中、母親とはぐれ、…
【お題】 淡い事故 【本文】 ナイフを伝って感じた、初めて人を刺したときの感触が忘れられない。 あのときは一晩中泣いて、三日三晩眠れない日が続いた。 しかし、今…
毒
2022年11月15日 23:55
転がっていた鉄パイプを手に取ると私は渾身の力を込めて憎しみをかち割った飛び散る血潮は風に乗って燕の巣を赤く染めた夢の中で見た 幼い頃の思い出は虫が湧き 酷い臭いを放って私を目覚めさせる憎しみの墓標には 悲しみと孤独の名が刻まれ私を誘い血糊のついた鉄パイプは唸りを上げてその墓標を真っ二つに叩き割った遠くで泣く二匹ののら犬私は片方の犬だけを執拗に追い
2022年11月14日 23:34
赤レンガの隙間にはいつか見たあのテントウ虫楊枝を使ってほじくってみたところ汁を出して爆ぜた赤い夕陽と冷たい風干しっぱなしの雨傘に日差しがたまる私は今 遠くに響くサイレンを聞きながらテントウ虫の残骸を掻き出して海に流したひらり ひらりカーテンが揺れる窓辺にはライフルを構えた男が私を狙っている弾丸には「約束」の文字が刻まれていた
2022年11月13日 23:36
品川駅近く。真夜中、日付が変わった。辺り一帯、獣の匂いが漂う。トラックで運ばれていく家畜たち。ビルに反響して怯える声が響き渡る。立入禁止の看板が立つ門の中をトラックが入っていくのをみた。しばらくすると家畜たちの叫び声が聞こえた。その声はまさに断末魔。私達は日々、美味しいお肉を食べる。その断末魔あっての食肉であることを忘れないようにしたい。ありがとうございます。
2022年11月12日 23:26
自分の人生なんだから、幸せになるのも不幸せになるのもその人の勝手。自分に不幸があったときに、それを人のせいにするな。自分で選んで、自分で決めろ。自分で決めたのなら、どんな結果になろうともそれを受け入れろ。人のせいにするな。
2022年11月11日 23:40
【お題】ストーカー【本文】憎きストーカーをついに捕らえた。こいつは私の個人情報をどういう手を使ったのかわからないが抜き出し、プライベートを盗み見ていた。私はまずこいつを椅子に縛り付け、右目にグーパンチをかました。のた打ち回るストーカー。しかし、どこか喜んでいるようにも見える。少しニヤついている。腹が立った私は、ニヤつく余裕がないように手の小指を折ってやった。痛がる素振りは見
2022年11月10日 20:21
【お題】夜間ウォーキング【本文】高層ビルの間に歩く足音はネオンの響きに溶かされてやがてくる不条理な出来事にも目もくれずただひたすらに夜道に流れていくまばらに行き交う人々に 道を聞くこともできないまま彷徨う青春は酔っ払いの屍を踏みつけながらイライラしているきっと不安なのだろう 心はやがて氷水を沸騰させるに違いない寝ぼけたまま 無計画に感覚だけを頼りに歩き続け
2022年11月9日 16:23
【お題】産卵【本文】今日は娘の運動会だった。大勢の人がいる中で、私は校庭のど真ん中で卵を産んだ。私はPTAの役員として、教員とともに運動会の運営のお手伝いをしていた。事件は玉入れの競技中に起きた。私は玉入れの籠を持つ係で、子どもたちが玉を必死で空に向かって放り投げる中、籠の支柱にしがみつく形で耐えていた。玉は当たると意外と痛くて、歯を食いしばり、目を閉じて終了の笛が鳴る
2022年11月8日 23:50
【お題】夜空【本文】空気が澄んでいる。冷たい夜。人々が至るところで、夜空を見上げている。いつもは絶えず人々が流れているこの場所も、今は皆立ち止まり、じっと動かない。私も人々につられて、空を見上げる。いつもどおりの夜空だが、なぜだか今夜は魅入ってしまう。周りの人々も、ずいぶん長いこと夜空を見上げている。雪が降ってきた。私達はこれを待っていたのだろうか。大して感動は
2022年11月7日 23:19
【お題】罪深き青年【本文】残響の欠片が胸に刺さり 遠くの方でこだまする野蛮な感情は心に支配され 行き場を失い眠気と戦いながら豪雪の中をゆっくりと歩く一歩一歩 後悔を踏みつけて私は今 氷の中でじっくりと 涙に覆いかぶさり懴悔する 罪深き人生を呪って
2022年11月6日 23:35
【お題】タンカー船【本文】真夜中の勤務中、私はタンカー船から何者かによって突き落とされた。それまでの記憶はほとんどないが、なぜだか意識が朦朧としていて、気づいたら甲板にいたことだけは覚えている。きっと誰かの恨みを買っていたに違いない。冷たい海に飛び込んだところからははっきりと覚えている。巨大なタンカー船の側面がすぐ側にあり、唸りをあげていた。波はどす黒く何も見えない。私は船
2022年11月5日 23:29
【お題】中華街ぼいん【本文】中華街に彼女と旅行に行ったときのこと。過去に何度か来たことがあったのだが、何だか当時とは様子が違う。人々が何やらピリピリしている様子。彼女とその違和感を共有しつつ、まぁいいか、気のせいだ、楽しもうと一旦このことは忘れた。しかし、奥に進むにつれて、時間が立つにつれて、その違和感は徐々に強まっていった。彼女が言った。「やっぱ変だよ」「なんか怖い」
2022年11月4日 23:57
【お題】塾講師【本文】「ついにこの日がやってきました!」「私達は今日のために頑張ってきました」「必ず夢は叶います!」「私達は必ず勝ちます!」「辛いときも苦しいときも耐えてきました」「全力で戦い抜きましょう!」「そして、勝利を掴みましょう!」激励。塾の講師たちは私達に最後のエールを送った。生徒たちの中には涙する者もいた。誰もがこの激励に勇気をもらい、闘志を
2022年11月3日 17:53
【お題】死の島【本文】この島では数週間前から、とある感染症が蔓延し、島民の約80%が死滅している。その病にかかると数日のうちに、皮膚がどろどろに溶けていき、最期には醜い姿になって息絶える。まさに死の病であった。感染源は気体に舞う謎の胞子で、薄暗い湿った場所に発生していることが判明している。島民は国から完全に見捨てられ、孤立状態にあった。島民はこの病になすすべもなく、ただ
2022年11月2日 23:41
【お題】旅の途中【本文】ただならぬ気配に木々がざわめく時の流れと緩やかに肌を撫でていく風は私の遠い日の思い出を揺り起こす赤く光る閃光は遠くの方で気づいてほしいと泣き出してやがてその声は 私の立っているこの地に希望という名の花を咲かせる行く先はわからないさ迷いながらゆっくりと心配はいらない 少しずつたどり着くべきところまで この身を連れて行ってくれ
2022年11月1日 23:44
【お題】山の恋心【本文】「おかーさん!」「おかーさん!」山々にこだまする甲高い声。叫び声の主はこの山の麓の村に住む少女。彼女は道中、母親とはぐれ、一人野山をさ迷っていた。もうすぐ日が暮れる。このままではまずい。少女は焦りと恐怖で、べそをかきながらも一生懸命叫びながら歩き回った。すると、草むらから音がした。唸り声が聞こえる。きっと野犬か狼に違いない。少女は固まっ
2022年10月31日 20:16
【お題】淡い事故【本文】ナイフを伝って感じた、初めて人を刺したときの感触が忘れられない。あのときは一晩中泣いて、三日三晩眠れない日が続いた。しかし、今や何も感じない。あれから十数年、世の中は荒廃した。生き残っているものはごくわずか。多くの者は謎の感染症により、異形の者と化した。理性を失った人の形をした何かは、生き残っている私達を狙って、舌舐めずりしながらそこらを徘徊