1年生の4・5月の算数の不思議から <数>のチャンネルを学級全体で合わせる学習:「ぜんぶといくつ」の単元より
1年生の算数に限らず、1年生の教科書は、
「なぜこんなことをするのだろう?」
「これで45分どうすればいいのだろう?」
(45分ずっと同じ内容をすることはないのですが…)
などと、1時間の授業のマネジメントに戸惑うことも多いと思います。
私自身、高学年を担任することが多いこともあり、
1年生の先生がどうやって毎日授業をしているのか不思議でたまりませんでした。
数ある不思議の中で1番の不思議は、
教科書の上の絵になぜブロック(おはじき)を置くの?
というものでした。
初めて1年生をした4、5月。
周りの先生方に習って実際に私もブロックを置く活動をやってみました。
しかし、子どもたちも
「もう分かっているよ!(はやくたし算やろう!)」
と、子どもたちの「やってみたい!」という気持ちは引き出せません。
どうしたものか…?
と悩んでいるうちに「数」そのものの単元は終わり、
たし算の単元へ。
そこで、
このたし算の単元の授業の中で生まれる子どもたちの表現から、
なぜブロックやおはじきを置くのか?
その活動を子どもたちの「やってみたい!」に結びつける方法
が分かったのです。
どこでブロック(おはじき)の価値に気づいたか?
それはたし算の初めの単元です。
教育出版では『全部でいくつ』の単元です。(旧教科書p43)
この単元のポイントは以下の通りです。
前単元までに10までの合成を学習している
「ふえるとなんびき」などの「増加」について学習する
「あわせてなんびき」などの「合併」について学習する
「増加」と「合併」の計算過程を図に表す
「増加」と「合併」の計算場面を問題(おはなし)にする
この5の「おはなしづくり」の学習で気付いたのです。
子どものノートをよく見てみると…
授業は簡単な計算練習をした後、
「6+3=9」のお話を作ることはできるかな?
と投げかけたものでした。
教科書にも練習問題の中に「おはなしづくり」の問題があるからです。
子どもたちは、
「6」や「3」にあたるものを自分で自由に決めて問題を作りました。
ランドセルを描く子
猫を描く子
乗り物を描く子
思い思いに絵と問題文を作ります。
「先生できたよ!」みんなニコニコでノートを見せてくれます。
その絵の中に興味深い絵を描いた子がいました。
6のまとまりの丸の中あったのは、
ちょうちょう2匹
車1台
お皿2つ
くま1頭
でした。
その時に、はっと気付いたのです。
この子にとっての<6>は、全部ひっくるめての<6>で、
同じものを<数>としているわけではない!
こうした世界の捉え方をしていた子に
<数>を楽しく捉えさせてあげたい…!
と思ったのです。
その子の<見え方>をもう少し深堀りする
その時の授業の板書がないので、前時の板書を載せます。
前時では「合併」を扱うために「白いちょう」を問題にしました。
授業の流れは以下の通りに進めています。
教師が絵を描く。
子どもたちが「はじめに」「つぎに」「さいごに」のカードを使って算数の問題を作る。
子どもたちが2の途中から「いつもと違うよ!」「おかしい!」と気付くので、「増加」と「合併」の違いをブロックで子どもたちが説明する。
式にして答えを書く。
単元を通して、
「はじめに」等のカードを使い、
子どもたちと算数のお話づくりを通して、
たし算の構造をつかめるようにしていました。
そのため、問題づくりの時も、
子どもたちは絵を描きながら問題を考えています。
ここに私と多くの子どもたちに無意識の大前提があったのです。
それは、「みんな同じものしか扱わない」ということです。
「白い」ちょうの中に「黄色い」ちょうはいません。
教科書を確認しても「ほぼ同じ形」「同じ大きさ」です。
よく見ると、
色違いの輪っかなどはありましたが、
授業をしている当時、私は気付くことができませんでした。
ここに、
子どもたちとブロックを置いて数を数える活動を通して、
<数>を楽しみながらみんなで理解するポイントがありました。
4・5月で実践したい1年生の「数」の学び
問題:いくつでしょう
準備:スライド(画用紙に絵を描くでもよい)
授業の流れ
「同じ形」「同じ大きさ」のものを提示する。子どもたちは数をすぐに答えるので、「本当に?」と問い返し、指差し等で確認する。(複数枚)
「同じ形」「違う大きさ」のものを提示する。初めはあまり極端ではないものにする。子どもたちは「大きさが違っても〜〜だから数えていいよ!」などとして数えるのでそれを価値付ける。
「色違いで同じ形」「違う大きさ」のものを提示する。この時点で、子どもたちの意見が分かれる。そこで「どれを数えたのかはっきりさせるものはないかな?」等と問いかけ、数えたものにブロックを置いていく。(色に着目するため)
(発展として)「違う形で同じもの」を提示する。
これだけで子どもたちと十分に楽しめる学習になるはずです。
この学習の核は「3」の活動にあります。
例えば、「3」の活動の1枚目に、
黄色い花2本
赤い花3本
青い花1本
を提示したとします。
この場合、「「6」と答える子」と、「戸惑う子」に分かれるはずです。
(もし、3や2、1と答えてくれるならさらに楽しいです。)
一瞬「戸惑う子」こそ、授業の中で大切にしてあげて欲しいのです。
「どうして困ったのか教えてくれるかい?」
などと問いかけ、理由を聞きます。
確実に「色が違うから」と話してくれるはずです。
「そうだね色が違う花があるから数えられないね。」などと受け止めると、
「先生「花」は6本だよ!」と、6と答えた子の理由が引き出しやすくなります。
この「「花」は6本」という言葉に、この学習の価値はあります。
「「「花」は」ってことは、他の数の表し方もあるの?」と問い返せば、
「黄色い花」だと「3」だよ!
「赤い花」だと「2」だよ!
「青い花」だと「1」だよ!
と次々と<数>としてみる対象が子どもから引き出せるはずです。
そこで、
「「花」とするか「黄色い花」とするかで数が変わることもあるんだね!」
と、<数>の見方を全体で共有していくことができるのです。
小学校の入学段階で、
比較的多くの子に<数>の感覚があると思っています。
そのため、
「同じ形」「同じ大きさ」にブロックを置く活動では、
教師も子どもも物足りなさを感じてしまうのは仕方のないことです。
ただ、私が出会った子のように、
<数>としてみる対象のチャンネルが周囲(学習内容)と合わずに、
周りと違った見方をして戸惑いを感じてしまう子もいるはずです。
だからこそ、
私は「色違いで同じ形」「違う大きさ」のものを提示するような活動で、
どこにブロックやおはじきを置くのかを考え、
「ちがうよ!○だよ!」ではなく、
「なんで分からないの!」ではなく、
「面白い見方もできるもんだね!」と笑顔で学んでいきたいです。
そのためには、
こうした<数>のチャンネルを学級全体で合わせる学習を、
意図的に行なっていく必要があると気付かせてもらいました。
いつかまた1年生を担任する時を楽しみに待っています。
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