1年生『ひき算』(『のこりはいくつ』『どれだけおおい』)のデザイン② おはなしづくり/図の指導/子どもの言葉でつくる算数授業
前回の記事の続きとなります。前回の『のこりはいくつ』の授業については、こちらをご覧ください。↓
『どれだけおおい』の単元では「求差」と「異種のものの数量の減法」を扱います。短い単元なので、「この2つの何が違うのか」と「求残との違い」を子どもたちが意識できるような授業にしたいと考えていました。
それでは、紹介していきます。
⓪単元のデザイン:求残と求差の違いを焦点化
教育出版の教科書では以下のような問題の順番になっています。
問題文の答えの単位に注目すると、どんな種類の問題なのかがわかります。
①は「なんこ」なので、同種の量の差を問う問題、つまり求差の問題です。②は「なんだい」なので同じく求差の問題。③は「ちがいはいくつ」なので異種の数量の差の問題です。要するに、「求差」→「求差」→「異種の数量」という単元構成です。
そこで、今回紹介する実践は1時間目の求差の問題を「異種のもの数量の減法」の問題に変更しています。
理由は、前単元の『のこりはいくつ』の違いを明確にしたかったからです。
『どれだけおおい』の単元のポイントは「1対1の対応」です。ここが求残と考え方が違う点です。1対1の対応を子どもたちが理解できれば、あとは「同種」か「異種」の違いだけです。そのため、1対1の対応が意識できるような題材がよいと考えました。
①1時間目:お寿司の問題で求残と求差の違いに焦点化
そこで、お寿司(どんぶり)の登場です。
「上にのる」イメージが「1対1の対応」です。このアイデアは私自身のものではく、算数の研究団体の大先輩のアイデアです。子どももサーモンが登場して大喜びです。
『のこりはいくつ』の単元のように、絵からお話をつくっていきます。「はじめに」のカードを貼ってサーモンの切り身を貼ると、「サーモン?マグロ?」と興味津々。「つぎに」のカードでご飯を貼ると「寿司だ!」とひらめく子。「さいごに」の文は私からの提示です。
初め、子どもたちは「たし算?ひき算」と演算に迷いがあります。ただ、すぐさま「サーモンをご飯にのせればわかるよ!」と解決の糸口を発見していきます。
実際にサーモンをご飯の上にのせ、サーモンが2つあまることから「サーモンが2枚多い」ということをはっきりします。「切りすぎで残ったんだね」という発言もこの題材ならではの発想です。
ここまで明らかになったことを、次は図で整理します。
子どもは⚪︎(サーモン)と●(ご飯)を線でつなぎ「なかよし」とします。この「なかよし」になったものを「すし」として、残った◯を「のこり」と表現しました。この「なかよし」こそ「1対1の対応」なのです。
そして、最後にこれまでの思考を式に表します。
簡単に「7ー5=2」と表現できますが、ここで難しいのは「それぞれの数が何を表しているか」です。
「7は何の数だろう?」と問うと「サーモンの数!」と明確に答えられます。
「2は?」と問うても、「サーモンの残りの数」と答えられます。
「5は?」と問うと、子どもたちが少し困ります。
「ごはん?」「サーモン?」もやもやする子が多く出てきます。
このもやもやがこの問題の難しいところです。
そこで「サーモンからごはんをひくことはできるのかな?」と問い返します。
すると「それはひけないはずだよ!」と子どもたちは答えます。「そうだよね。じゃあ、このひいた5は何の5のことだろう…?」と再度、聞いてみます。
そこで、「のっけたサーモンの5だよ!」ひらめく子がでてきました。
「どういうこと?詳しく教えて?」と聞くと、図を指し「ご飯の5じゃなくて、サーモンの5」と◯に色をつけてくれます。1対1で対応させたサーモン分の5を全体のサーモンの量の7からひくということが見えてきました。「なるほど!そう考えると「のこりはいくつみたいだね!」と、前単元との類似点も分かってきました。
②2時間目:「求差」の問題
2時間目は求差の問題です。
この問題のポイントは、バスとタクシーが視覚的にはバスの方が多そうに(長く)見える点です。そこに戸惑う子がいれば大いに寄り添い、子どもの思考を「大きさは問題じゃなくて、なかよしで調べるんだよ!」などと、大切にしたい見方を引き出していきます。
お寿司の問題と同様に「図→式→数が何を表しているか」を考えていきます。
図で◯をかいたとき「これはタクシー?バス?」と問うだけでも子どもたちの思考はゆさぶられます。図で「大きさ」が捨象され、「数」だけを取り出しという点の理解に時間がかかる子がいます。そうした子がはっきりと理解できるように、意図的に子どもたちに問いかけ、「大きさじゃなくて数だよ!」と言語化していくことが理解のハードルを下げます。
振り返ると、バスとタクシーは乗り物(車)としては同質のものですが、子どもたちは異種のものとして考えています。この点は1時間目の影響があるので、反省点として改めてどの展開が良いか考えていきたいと思っています。
③3時間目:「異種のものの数量の減法」の問題
流れは1時間目、2時間目と同様です。
ここまで積み上げると、子どももすんなりと問題の構造を図や言葉で表現できるようになっています。
板書右側の図に注目すると、椅子の図をないものと考えて「(椅子取りゲームで)負けた子がちがいだよ!」と話す子もいれば、「なかよし」が「座れた子だよ!」と図に線を引きながら説明する子もいます。
子どもたちは発表を聞きながら、「図に椅子を書いた方が正確じゃない?」などと言いながら、より確かな表現を考えていきます。そして問題文の「ちがい」をはっきりさせることができました。
以上が『どれだけおおい』の単元の紹介でした。
子どもたちは少しずつ自分で図をかき、友達の説明を聞きながら自分の考えを表現できるようになってきます。初めから「ちがい」など、教師が求めたい言葉を引き出そうと思う必要はありません。子どもの素直な表現を認め、その言葉を楽しみながら「〇〇さんは、〜〜と言って「ちがい」を考えたんだね!」と、子どもの言葉を緩やかに束ねていきます。
こうして子どもの言葉でさんすうの授業をつくっていくと、きっと毎日の算数が少し楽しくなるはずです。
ありがとうございました。
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