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思考しつつ、コンパスに慣れ親しむ算数授業の工夫:3年『円と球』

3年生の「円と球」の単元の授業を紹介します。

この単元は円や球の知識を理解することに加え、コンパスの技能を習熟していく必要もあります。私の経験上、コンパスに初めて出会った子どもたちはなかなかうまく使えない子が多くいる印象です。

そこで、ひたすら円を描く練習をするのではなく、子どもたちが考えながらコンパスに慣れ親しむことができないか考えました。

授業には反省点が結構ありますが、それも含めて今回は紹介します。


「何個の円でゴールに行けるかな?」

授業の板書

長い辺の長さが15cmの長方形の画用紙の端に2色の色をつけ、子どもたちに配りました。

「黄色のスタートのラインに円がつくように直径5cmの円を書きます。」
「また、最初に書いた円につくように円をゴールを目指します。」

このように説明します。

すると、子どもたちから「何個の円でゴールを目指せるかな?」と素朴な疑問が出てきました。

子どもたちは、
「2個で行けるんじゃない?」
「15cmの画用紙でしょ?3個でいいんじゃない?」
「いや、4個必要だよ!」

などと予想を始めました。

「それじゃあ確かめてみようか!」と活動を始めました。


「ちょっとだけ足りないなぁ…」

子どもたちは思い思いにコンパスで円を描いていきます。

「4個でかけたよ!」と喜ぶ子もいますし、「2個は絶対無理!」という子もいます。思い思いの予想を確かめています。

子どもたちと関わりながらその様子を確かめていると、3個の円を描いて困っている子が複数出てきました。

「どうしたの?」と聞くと、「先生、3個の円だとちょっと足りないんだよね。困った。」と何人かの子が話してくれました。

そこで、その困りを共有します。

すると、「私もそう!3個じゃ足りない!」そんな子どもの声が上がってきました。

子どもたちには「みんなは自分の予想を試して3個の円でゴールに辿りつけそうだと思っているんだね。でも、どうしてうまくいかないんだろう?」と問いかけました。

「なんか円が斜めになっているから足りないのかな?」
などと、子どもたちから考えが出されます。

「円が斜め」というワードから子どもたちはひらめくと考えていましたが、反応があまりよくなかったので、画用紙に直線を一本引いてそこに円を並べている子の画用紙を見せました。

そこで、
「あ!団子みたい!」
「そうか!中心がポイントなんだ!」
ようやく子どもたちは気付いたようでした。

子どもたちは、画用紙に線を引き円を描いていきます。
「これで真っ直ぐゴールに行ける!」と喜んでいました。

その後、「どうしてこの直線が必要なの?」と問いかけると、「直径が3つ真っ直ぐ並ぶと15cmになるからだよ!」と子どもたちの気付きがすぐに返ってきます。「だから長方形の辺の長さと一緒になるんだね。それでゴールに辿りつけるわけだ!」とまとまり、授業は終了します。


成果と課題

今回は、正方形に内接する円の直径と正方形の辺の長さが等しいということに気付くための授業です。合わせて、コンパスの習熟を兼ねた授業です。

成果として2つ挙げられます。

1つ目は、子どもたちは直径と長方形の辺の長さの関係に着目できたことです。円の中心を結んだ線と長方形の辺の長さが等しくなるということを子どもたちが発見できたことはこの教材の良い点だと言えます。一方で、課題も含んでいるのでそれは後で触れようと思います。

2つ目は、子どもたちはコンパスで円を20回以上描き、だんだん自分の描きたい大きさの円を描けるようになってきたことです。もちろん1時間で完璧に描けるようになるわけではないので今後も習熟していく必要がありますが、「気がついたら慣れてきた」という状態を引き出せたことは良かったです。

一方で、課題もあります。

まず、この教材が「確かではない」ということです。画用紙は無地なので、真ん中に一本線を引いたところで、「長方形の辺と平行な直線とは言い切れない」ということです。並行は4年生の学習内容なのでそこに触れることは難しいです。考えられる改善策は「無地から方眼用紙にする」ことです。これだけで平行に触れずとも「円の中心を一直線上に配置する」という点を見いだすことができます。

2点目は長さと直径の問題です。「15cmの紙に5cmの円を3つ描く」では半径が2.5cmとなります。この長さが扱いにくかったです。「18cmの円で6cmの円を3つ描く」とすれば良かったと思います。そうすることで、授業中「先生、長さを変えて試していい!?」という発展的に考える子の姿をさらに活かすことができました。「9cmの円を2つの円を描く」ということもできます。



以上が「円と球」の授業の紹介でした。

今年度、私は担任外をやっており、9月の頭に急遽、3年生の担任をすることになりました。(今年度は「担任外→育休→担任外→3年生担任」という流れです)


授業ができることの楽しさと同じぐらい難しさも目の前にあります。

ただ、子どもたちが「おぉ!」と心が揺れ動くような瞬間を引き出す授業を考えています。


「特別な授業」ではありません。
このクラス、この子どもたちにしか感じられない「特別だと思える経験」です。




最後まで読んでいただきありがとうございました。

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