心が壊れたあの日。「社会人って、何だろう??」
社会人って、何だろう。
「それくらい、分かるでしょう?」
我慢することが、社会人なのか。
それとも、
一を聞いて十を当たり前に出すことが、社会人として一人前の仕事と言えるのか。
それすらも、分からなくなっていた。
私も、前職では後輩に何人にも引き継ぎ、教えたことがあるから分かる。
理解はできるつもりだった。
教える側である自分は、業務の細部まで全体像とか、気を付けるポイントとか分かっているから。無意識にさばけるレベルだからこそ、教えるのに苦労した。
専門知識が必要な部分は、初心者向けの本を隅々まで読んで、どういう風に説明したらいいかを試行錯誤した。
一回では理解できないだろうから、
何回でも聞いてねと声をかけた。
そうするうちに、旅立つ日には、
たくさんの感謝を貰った。
……もしかしたら、無意識に。
あの時の自分の気持ちを重ね合わせていたのかもしれない。
「あのね…私も時間があるわけじゃないの。忙しいの。
ちょっとは自分で、整理したらどうなの?
…次からは、分からないところを明確にしてから聞いて。」
「はい…承知しました…」
自分にとっては分かり切っている仕事を、
全くの初心者に教える苦労は、知っているつもりだった。
叱責が増える日々。
業務を理解するための資料も少なく、自己判断するための材料も少ない。
過去の資料を参考に、することくらいだった。
(どこが分からないか…分からない…)
私が理解できないのが、異常なのだろうか??
そして、質問をしても、会社のチャット機能であしらわれる日が続いた。
一生懸命、教えてもらったメモをひっくり返して調べても、
制限時間を課され始めた時には、
冷静な頭で判断ができなくなっていた。
(なんか…しんどいな…)
そう思うことすらも、怠惰なのだろうか??
「え…それ異常だね。どうしたらいいのかも分からないでしょ?」
「そうなのですか…??」
「私もね、未経験からこの仕事してるからね。分かるよ。
でも…このフィードバックは…どこ直していいかも分からないね…。」
たまたま、他の地域の支社の人が、
こっちに来てくれた時のことだった。
仕事に慣れた?と聞かれた時に、涙が勝手に流れていたのだ。
そして、今までのことを話して、どういうことに悩んでいるのかを相談していた。
「私の方からも、課長に言ってみるね!
あと、こっそり私の方に聞きにきてもいいからね。聞きにくそうなら。」
「ありがとうございます…。」
そして、自分でも信じられないことが、起きた。
その日は、あの人は在宅勤務で、気楽なハズだった。
「朝言ったことのXXXの報告を受け取っていません。」
一通のチャットが来ていた。
昼過ぎに完成して、チェックをお願いした仕事。
最後まで報告をするようにと言われていたので、納品書を提出する(クローズ)ところまでチャットで送信していた。
(もしかして、他のチャットで流れて読んでない…?)
「XXXでしたら、13:30頃に報告済みです。」
これで、大丈夫だと思っていた。
「私が聞いているのは、XXXのことです。
報告お願いしたはずです。」
ん????????
それから、何通かやり取りをしていたのは覚えているが、
どう返信したのかを覚えていない。
ただ、ちゃんと報告しましたよと言うことが癪にさわったのだろうか?
それとも、私が間違っているのか??
それが、全て。
壊れた瞬間だった。
「…もう今日は上がってください。また明日チェックしますから。」
この場で涙が出そうだった。
いや、泣いたら終わりだとおもって。
会社の門を出て、駅まで歩く道のりを歩いていた時に、
ずっと涙が止まらなかった。
(もう、頑張れない……)
心が壊れる時って、あっけなく落ちていく。
抗おうと思っても、体が思うように反応してくれない。
社会人って、何だろう??
昔はもっと厳しかった今の人は甘い?
……いや、置かれている環境次第だ。
いくら前の職場で優秀だと言われていても。
必要なスキルは会社によって違う。
もしかしたら、教える人との相性とか好かれているかとかにも、よるかもしれない。
でも、心が壊れても無理して働くことだけは。
自分を守るための、選択をしたのだ。
「……もしもし。明日についてなんですが…」
今でもあの日のことを思い出すと、
胸が張り裂けそうに、苦しくなる。
※この話は、事実を元に書いています。個人特定を避けるため、ぼかした表現が一部あります。