DAY2:企業ドメインとDE&I〜withworkweek@国際女性デー カンファレンスレポート〜
はじめに
5日間のカンファレンスに際して
2022年3月7日~11日の5日間にわたってオンライン形式で開催されたDE&I推進カンファレンス「withworkweek @国際女性デー #キャリアとライフはトレードオフじゃない 」。10のテーマで行ったセッションにおける2日目の3月8日の夜に開催されたセッション内容をレポート形式でお届けします。
・企業ドメインとDE&Iの関連性
・事業成長を目指す上で多様性をどう捉えているか
・現場課題と展望 etc.
「企業ドメインとDE&I」の回では、これらを主なセッション内容として2名の登壇者をお招きしてお話しました。ぜひご覧ください。
▼今回のカンファレンス開催に先立って行った調査結果はこちら
それでは、セッション時のトークに沿ってレポートします。
登壇者の紹介
XTalent筒井:皆さん、こんばんは。本日はお集まりいただきましてありがとうございます。昨日からwithwork week、幕を切っているんですけれどもDAY2 夜の回のテーマは「企業ドメインとDE&I」とさせて頂き、2人の登壇者をお招きしています。最初に登壇者のご紹介、そして今回の調査レポートについてEnbirth代表の河合さんからご説明、後半はトークセッションという流れで進めていきます。ではAntaaの西山さん、自己紹介をよろしくお願いします。
Antaa西山さん:よろしくお願いいたします。アンター株式会社の西山知恵子です。Antaaは2016年に創業し、「医療つなぎ、いのちをつなぐ」をミッションに、医師同士を繋ぐサービスを提供しています。
創業のきっかけは、代表が整形外科の医師でして、彼が医師5年目のときに夜の当直など自分の専門領域以外の患者さんを診るシーンにおいてに、様々な診療科の医師とコミュニケーションが取れると診療の質が向上するのではないかと思ったことでした。
様々な医師の知見を共有することでもっと救える命が増えるんじゃないかという想いから会社を立ち上げました。医師向けにライブ型の勉強会、ストック型の知見共有、医師同士のQ&Aで先生方が困った時にいつでも相談できる・知見が共有できるサービスを提供しています。
私の自己紹介ですが、私自身は医療業界の経験は何もなく、新卒でリクルートに入社しSUUMOを担当した後、外資系の完全歩合制の保険会社に転職して全力で営業をやって、その後、MAKOTOという社会起業家を応援する団体に勤務したのち、デロイトトーマツベンチャーサポートに入りました。デロイトトーマツベンチャーサポートはスタートアップを支援している会社で、Antaaを自分がコンサルタントとして担当していて、支援先だったんですね。東京都の創業支援プログラムの中で半年間伴走して「Antaaの存在意義は何なのか」というのを一緒に考えたり、資金調達先の紹介やメディア掲載等の支援をしてきました。支援が終わった後に、代表から「西山さん、アンターに来てほしい」って言われました。
最初は「私、スタートアップでの経験がないので、多分何の役にも立たないと思うんですけど…」と思っていました。ここがダイバーシティに関わってくるんですけれども、代表が医者である・男性である・若いというところがあったので、今後、会社として、ビジネスとして大きくしていくのであれば、医療者以外のビジネス経験者、女性の視点、ある程度年齢を重ねて宥め役をできる人も必要なんじゃないかと思ったところがあったので、そこには私も何かしら貢献できるかもしれない、ということで入社をし、今3年半くらい経ったところです。ちなみに趣味はサウナです。
今日は「企業ドメインとDE&I」というテーマなのですが、実は医療分野においてもダイバーシティは関連深いと思っています。ダイバーシティというと、性別や年齢の話が一般的ですが、医療業界では整形外科や内科といった診療科ごと、学年・医師の年次ごと、エリアごとの区切りがあり、境目が多く存在しています。
医療現場では「この診療科の病気なのではないか」と思ったとして、その患者さん自身が実際に一つの病気しか持っていなければその診療科で済むということもあるかもしれないのですが、いくつかの疾患が絡み合っていることもあり、一つの診療科だけじゃなくて複数の診療科で診ることによって、適切な診断・治療ができるということもあると思っています。、その時にAntaaは一つの選択肢として、様々な診療科の先生同士がつながる機会を提供できたらと考えています。
そして、医師のキャリアも、これまでとは変化してきています。例えばYoutuberの先生、、TwitterなどのSNSで活躍しているインフルエンサーの先生など、医師といっても思った以上に多様性があると思ってまして、一人一人の先生方の魅力が発揮されて可視化していくことにより、新しいキャリアを創ることができるのではないかな、ダイバーシティが生まれるのではないかなと思っています。そして、多様性を活かされるようなサービスを届けている自分たちがまずは組織としても体現していきたいと考えています。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
XTalent筒井:西山さん、ありがとうございました。では、続いてワンダーラボの中村さん、お願いします。
ワンダーラボ中村さん:ワンダーラボの中村友香と申します。ワンダーラボは2014年設立の会社で、現在47名の規模で運営しております。EdTech・教育業界のスタートアップなのですが、「世界中の子どもたちが本来持っている、知的なわくわくを引き出す」ということをミッションに掲げております。
西山さんとちょっと近いところがあるのですが、弊社・代表の川島が教育者 兼 教育コンテンツ教材のクリエイターで、例えば、数学オリンピックの問題などを作っていたりします。彼は長年子どもたちを教育現場で見ていて、世の中的には「こういうスキルを身に付けていくのが大事」ということが言われて、その中身は常々変わっていると思うんですが、子どもたちを見ていると、逆算でこれを身に付けさせていくということよりも、その時々の子どもたちを見て、あの手この手で子どもたちのわくわくを引き出していくと、勝手に子どもたちが伸びていくんですね。そのサポートをするというスタンスの方が、これから"本当に"子どもたちの力を引き出していくという上で有効なんじゃないかということで、その知的なわくわく="ワンダー"なんですが、ワンダーを大切にしていこうという意味でこのミッションと会社名にしています。
圧倒的にわくわくするSTEAM領域の教育サービスを今、開発しています。STEAMって聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれないのですが、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)という5分野の頭文字を取ったものでして、理系科目+アートといった領域です。ここを横断的に学ぶ中で思考力、クリエイティビティを育てていこうという考え方になります。このSTEAM領域の教育サービスを、始めさえすれば続けられて、思考力や創造性が育まれて効果もあるという教材を作っています。
大きく2つのサービスがあって、1つはアプリとキットの組み合わせでSTEAM領域の教育プログラムを楽しんでもらえるワンダーボックスというものと、Think!Think!という知育アプリで手軽に考える力を育むことができるというものです。Think!Think!は4歳から10歳に結構手軽に楽しんでいただけるもので、子育て世代の方でしたらひょっとするとご利用いただけている方もいらっしゃるかもしれないのですが、累積150カ国・200万ユーザーに利用いただいていて、海外の方にも少しずつ利用いただき始めているという状況です。
ワンダーラボはこのコンテンツ開発に力を入れていて、代表もクリエイターですし、パズル選手権日本代表のメンバーも在籍していて、ゲーム会社のようなクリエイティブなモノづくりをする雰囲気の会社で、ただそれだけだと「楽しい"だけ"じゃないの?」と思われてしまうので、効果を示すエビデンスを取り、海外にも拡大していこうとしているところです。このコンテンツ開発、いかに子どもたちのわくわくを引き出せるものを作っていけるか、そして子どもたちに届けていけるかというところで、今日のテーマでもあるダイバーシティ、多様性のあるメンバーが集まってくれる環境ってどういうものかということをワンダーラボ内でも議論して積み重ねてきています。本日はAntaaの西山さんと一緒に色々議論ができたら嬉しいなと思っています。
私自身は、コンサルティング業界で、いわゆるビジネスバックグラウンドでどうやったらあの企業は成長するか、といったことをしていて、代表の川島が大学時代の友人であるご縁からジョインすることになりました。本日はよろしくお願いいたします。
当事者・非当事者間で見える世界の違い
XTalent筒井:ここからは今回の調査について、河合さんからお話をお願いできたらと思います。各社のデータについても説明いただきます。
Enbirth河合さん:株式会社Enbirthの河合と申します。どうぞよろしくお願いいたします。今回弊社で調査レポートを担当させていただいたのですが、本当に面白い価値のあるデータが集まっていますので、是非レポート全文はこちらからダウンロードいただければと思います。
今回のテーマは「事業成長を目指す上での多様性」ということで、調査レポートはジェンダーやライフステージの多様性に焦点を当てたのですが、本質的なダイバーシティはジェンダー・年齢・国籍といった属性だけではなく、キャリア・スキルの多様性、それから一番大事なのは視点の多様性だと思っています。
やはり、人それぞれ立場によって見える世界が違う、というのが一番本質的なダイバーシティではと思うのですが、実はそこに私自身、改めて気付かされることが昨日ありました。こちらは弊社で出している今回の調査レポートなのですが、オレンジと緑という色を基調にして作っていました。
これが色覚障害のある方から見ると、こう見えるのだそうです。
私自身は全く知らず、配慮が足りていなかったなと、本当に恥ずかしく思って反省しているのですが、改めてこれだけ立場・人によって見える世界が違うのだということを、強く突きつけられた事象でした。次回より、そこは気をつけて大事にしていきたいなと思っています。そして、今回の調査レポートでもそういった面で立場によって見える世界が違うということが明確に可視化されたなと思っています。
まず、こちらは制度浸透ピラミッドと呼んでいるのですが、育児や介護と仕事を両立するための制度が充実しているかだけではなく、それが本質的に組織の中に浸透しているかということを表しています。
一般的な調査だと、制度が充実しているかという観点だけで終わってしまうのですが、大事なのはその制度があるかどうかではなく、それが女性だけではなく男性も使いやすいのか、それから制度を使っても肩身の狭い思い思いをすることはないのか、制度を使っても評価や昇進に影響はないのかということです。このグラフの上項目まで取り組めて初めて、制度がきちんと運用されている、育児や介護と仕事を両立することができているという状態と言えるのです。
これは1,000人に回答いただいた結果なのですが、制度があるものの実はその制度は女性だけのものになってしまっていて男性は使いづらい、使うと肩身の狭い思いをする、評価や昇進に影響があるという数値になっています。
さらに、先ほどの視点の多様性という観点でここがすごく重要なのですが、緑=育児中の当事者つまり制度を使う当事者と、オレンジ=育児中ではない非当事者との間に、実は差があるのです。全項目で緑の方がスコアが低くなっています。
つまり、「制度を使っても肩身の狭い思いをすることはないよ」「堂々と使いなよ」と非当事者は言うのですが、制度を使っている当事者からすると「いやいや、肩身狭いって」という状態です。そして「制度を使っても評価や昇進に影響ないでしょ」と非当事者が思っていても、当事者からすると「いやいや影響ありますよね」という、これが実情なんですね。当事者と非当事者の間で見える世界が違うということはすごく大事なポイントです。これが実はワンダーラボさんの場合は、素晴らしい理想的な結果なのです。
ワンダーラボ株式会社の場合
制度があるだけではなく、しっかりと実質的な運用ができているということはもちろんなのですが、先ほど当事者と非当事者で見える世界が違うことをお伝えしたのですが、実は当事者の方が満足しているのです。全項目で緑の方がスコアが高いのです。どっちかというと、制度を使っていない非当事者が「いや、うちは制度足りていないんじゃないかな」と言っていて、ちょっと不安に思っているぐらいなのですよね。すごく良い状態で運用がなされていることが見て取れます。
もう一つ、視点の多様性という観点ですごく大事だなと思っていることがあるのですが、今回の調査では特に育休中、育休復帰後、育休を取得した経験のある方に焦点を当てて調査していますが、育休取得前と育休復帰後で当人の意識がどれだけ変化したかということを表しているグラフです。
オレンジ=育休取得前に仕事に求めていたこと、緑=育休復帰後の現在仕事に求めていること、です。注目いただきたいのは、殆どの項目で緑の方が大きくなっているんですね。つまり、育休復帰前も仕事に面白さを求めていたけれども、復帰後の方がより求めているということです。強みや能力を発揮できる、スキル・経験が身に付く、裁量権がある、自分の存在意義を感じられる、社会的意義を感じられるーーこれら項目は全て、育休復帰後の方が高くなっています。では、このように意欲満々で復帰した女性たちは、育休復帰後にどうなっていくのでしょう。
上記グラフは会社側から実際にアサインされている仕事の質を示しています。オレンジ=育休前に仕事で満たされていたこと、緑=育休復帰後の現在満たされていることです。完全に逆転していまずね。多くの項目で、緑の方が低くなっているのが分かると思います。
仕事が面白いということも満たされなくなっているし、強みも発揮できなくなっているというのはすごく残念な状態なんですよね。
これだけやる気満々で仕事の質を求めて復帰したにもかかわらず、実際アサインされる仕事の質は下がってしまう。こういう自分の期待値と与えられる仕事のギャップはすごく残念です。このギャップをしっかり見ていくことが大事だなと実感しています。では、何故こんなにも差が出てしまうのでしょうか。そこにはこんな理由があるんじゃないかと思い、調べてみました。
「あなたが現在の勤務先で子どもがいるが故に経験したことのあることについて教えてください」という設問です。
それに対する回答をみてみると、20%の女性が子どもがいるが故に責任の少ない仕事を与えられているという現状があります。一方、男性の89%はこういう思いはしたことがないと回答しているのです。
同じ育児中でも、女性は配慮されるけれども男性は配慮されていないという認識ギャップですね。良かれと思って配慮しているものの、本人が期待していることと違うという、自分の期待値と相手から見える世界で与えられるものにギャップがある、というのが色んな組織課題を生み出しているのかなと思います。これが、Antaaさんの場合はとてもいい結果なんです。
アンター株式会社の場合
特にいいなと思ったのが、本人が求めているものと、与えられているもののギャップがあるとすごく不幸になってしまうというお話をしたのですが、特に裁量権がそうなんですね。裁量権って多すぎてもいけないし、少な過ぎてもいけない。本人が求めているレベルの裁量権を与えることが凄く大事なことなのですが、そこがぴったり一致しています。さらに、医療という事業柄もあるかもしれないですけれど、自分の仕事が世の中の役に立っているという項目について、Antaaの皆さんは期待値がとても高いのに対し、充足値も高い。これはすごくいい結果だと思います。皆さん高い志を持って、やりがいを持って働けているという状態をどのように実現しているのか、この後お話を聞いてゆけたらと思います。
視点の多様性を事業に活かす
XTalent筒井:各社のカルチャーが数字でも出ていて、すごく面白いデータです。では、ここからメインセッションに移ってゆきます。ファシリテーターを上原さんにパスさせていただきます。
XTalent上原:こんにちは。XTalent代表の上原と申します。今回、Antaaさんは医療ドメインかつ7人というアーリーステージで、ワンダーラボさんは教育ドメインということで、社会的インパクトという観点では似ている点もありそうです。この「企業ドメインとDE&Iと」いうテーマについて、自社組織という観点もしくは事業を創るという観点で感じられていることもあるのではないかなと思います。まずはAntaaさんから、自社を見た時にこのテーマについて感じていらっしゃることを是非教えていただけますか。
Antaa西山さん:自社の前に医療業界での話になるのですが、性別や年齢だけではなくて、診療科やエリアなどの様々な境目が存在しています。患者が診察を受ける時、目の前の先生は一人かもしれないですが、複数疾患を持ってる場合などは、その後ろに様々な診療科の先生がいると思うと安心して医療が受けられるのではないかと思っています。そして先生方同士で、様々なバックグラウンドや価値観や特徴を持っているかを互いに知る機会があり、スペシャリティを持っている人同士で違いを認めて対等に議論することが大事だと考えています。自社の行動指針の中にも「リスペクト」「フラット」というものがありまして、開発メンバーであれば技術に長けていますし、代表は医療現場のスペシャリストであって、私にスペシャリティはないけれど何でもやります!のような感じで、「みんな違う」ということへのスペシャリティを、互いに「いいところだよね」と理解しながら進めていくこと大事にしています。それは先生方に対しても、サービス設計、組織に対しても同じだと考えています。
XTalent上原:提供している事業ならではの多様性の必要性を強く感じていらっしゃるのですね。ワンダーラボさんの事業も同様に多様な視点が必要だと思うのですけれど、今どういったことをお考えですか。
ワンダーラボ中村さん:Antaaさんの医療という領域もまさにDE&Iと非常に関連深い領域だと思うのですけども、教育も本当にそうで。まず私たちがサービスを届ける子どもたちは本当に様々で、例えば性格的なものもありますし、視覚障害・聴覚障害、それこそ先ほどの色覚の話もそうですし、あるいはひょっとすると入院生活をしているかもしれない、あるいはすごく自信を失っている子どもかもしれないし、すごくハッピーな子どもかもしれないーー色々な子どもたちがいる中で、企業としてサービスを提供しているともちろんターゲティングを行ったりするんですが、そういった子どもたちに「これはあなたのためのものじゃないよ」と言って閉ざすと、それは教育に向き合うものとしては違うと思っています。
もちろん、主要なターゲットの子どもたちはいるのですが、いつどんなことをしていても、常に全ての子どもたちに届けるためにはどうしたらいいのか、来てくれた子どもたちに何か少しでもいい体験をしてもらうためにはどうしたらいいかを考え続ける姿勢はとても大事にしています。
この後もお話に出てくるのかなと思うのですが、やっぱり子どもたちにすごくいいものを届けるために多様な視点を以て面白いコンテンツをクリエイティブに創っていくことが大事なので、組織のメンバーの多様性も非常に大事にしています。
XTalent上原:組織の多様性という観点だと、実際どういった多様性がワンダーラボさんの中にあるのですか。
ワンダーラボ中村さん:まさに先ほどのお話でもあったように、視点の多様性が何より大事だと思っているのですが、具体的には性別もそうですし、育ったバックグラウンド、特にエリアですね。日本だけではなく海外のバックグラウンドを持っているメンバーにも入ってもらっています。あとはお子さんがいるメンバー、いないメンバー、年齢でいうと20代から50代のメンバーまで、幅広い視点を以て創っていけるようにしています。
ダイバーシティと事業成長の繋ぎ方
XTalent上原:では「事業成長を目指す上で、多様性をどう捉えているか」というテーマに入ります。これって多くの会社で課題になっていると思うんですよね。急成長のためにめちゃくちゃハードに働かないといけない会社がある場合、そこで多様性を取り入れると足枷になってしまうこともあるかもしれません。そういう葛藤や課題感を含めてお伺いできた方がよりリアルかなと思っていますので、こちらは中村さんから是非お話いただきたく思います。
ワンダーラボ中村さん:事業成長という観点だと、特に弊社は2つあるかなと思っています。1つは、世界の子どもたちに届けていきたいと思っているので、出身国やエリアの多様性、使用言語を問わず本当に素晴らしい人に集まっていただける組織にしたいので、その時にその方がマイノリティで一人しかいないという状態だと、入っていただける可能性がとても低くなってしまいます。素晴らしい人に参画していただくための多様性という点です。
もう1つは、子どもがわくわくする斬新で新しい視点のコンテンツを創るために、コンテンツ開発を多様な視点で行うという点です。この2つが本当に事業成長に重要、マストの多様性だと思っていますので、そのためにダイバーシティ推進は社内でも共通認識として共有し、みんなで色んな努力をしています。例えば今、ご質問をいただいているようなことですね。
今課題として表面的に噴出しているわけではないのですが、もちろんあるものだと思っています。弊社は育児中メンバーの割合が高いので、「普通」というスタンスでやっているのですが、しわ寄せがないかというと発生しているだろうと思っています。特にコロナ禍は休校・休園になるなど本当に大変な状況があるので、みんなで共有して助け合っていけるか、というのはこれからも大事なテーマになると思います。
XTalent上原:実際その多様性がもたらされたことでこういうことが変わった、というエピソードはございますか。
ワンダーラボ中村さん:例えばコンテンツ開発でいうと、これはすごく特殊な例ではあるのですが、国によっては、隣国との過去の歴史的な背景があって、このゴールの旗の色がその国の旗のように見えてしまい、あまり好ましくない、といった視点をカンボジアバックグラウンドのメンバーからもらったこともあります。そういったことで、ユニバーサルな視点を入れることができます。他には例えばマーケティングメッセージを出す時に、社内に子育てをしている男性・女性、子どもがいないメンバーがいるので「このメッセージだとちょっと腹が立つね」とか、そういうことを本音・建前含めて、このメッセージなら届けていいんじゃないかということを普段の業務の中で議論できるというのは大きいかなと思っています。
XTalent上原:そういったバックグラウンド、知っていないと出ない意見は確かにありますよね。Antaaさんの事業の中でも議論をされることは多いんじゃないかなと思ったのですが、西山さんからみていかがですか。
Antaa西山さん:中村さんのお話と重なるかもしれないのですが、やっぱり多様なメンバーがいることの"面白さ"はありますね。
少し観点が違うのかもしれないですが、多様な価値観を持ったメンバーをどうやって自分たちの事業に繋げていくか、そして、先ほど調査データ上で評価していただいたように、自分たちのやりがいにどう繋がってくるのかという点もあると思います。お子さんがいるメンバーがいたり、自分自身は東京にいるけれど地方に一人暮らしの祖父母がいるメンバーがいたり、状況・環境が違うメンバーが、その視点をどうやって事業に活かしていくかを考えています。
例えば、育児中のメンバーだと、サービスの中で子どもに関する相談ってなると、急に自分事化して、なかなか診断がつかない希少疾患の可能性がある小児患者さんを診て「他にこういう可能性はないですかね」って他の先生に聞いている先生を見ると、自分と同じような年代の子どもを見ている先生方を応援したいなと思って事業にコミットしやすくなる。また、別の例で地方で夜中に高齢者が救急車で運ばれてきて、自身の診療科の中での判断が難しい患者さんに対して、「どうすればいいですか?」という相談があったりします。そうすると地方に自分の祖母がいるメンバーが、こういう風に一生懸命な先生をサポートしたいなというように自分事として捉えやすいと思っています。多様性をどう捉えているかという話から少しズレるかもしれないのですが、それぞれがこの事業にコミットする理由と、先生方の相談事例を組み合わせることによって「自分も頑張ろう」「役に立ちたい」と思ってくれているんじゃないかなと思っています。
XTalent上原:多様な人がいることで、それぞれのスイッチの違いをどのように活かしていくのかというのは確かにありそうですね。多様な人材がいることによって具体的な事業メリットがあるというお話は、今お聞きできたなと思うのですが、いざその企業が成長していく上で、本当に多様な状態を創るって結構苦労している会社が多いなって思うんですよね。ワンダーラボさんは恐らく比較的、男性ばかりの会社という感じがあまりなく、子育て中の人もそうじゃない人も集まっていらっしゃると思うのですが、とはいえもっとブレイクダウンしていくとこの辺は課題だと思っているところもお有りなのかなと思ったので、その辺も是非伺いたいです。Antaaさんは、これから成長していく上で、そうはいってもなかなか多様性って拡大と同時に実現しづらいものでもあると思うので、その展望もぜひお聞きできたらと思います。
ワンダーラボ中村さん:多様なバックグラウンドや視点を持っているメンバーに集まっていただくということを考えた時に、もちろん採用がすごく大事になるのですが、結局「この方はすごく素晴らしいけど、男性だから見送ります」ということはやりたくないですし、やらない訳ですね。
とはいえ、これってすごくセンシティブな話だと思うのですけれども、それを積み重ねていったら気付いたら男性ばっかりになっていたとか、そういうことというのは当然に起き得る訳なので、その前段階で「こういう方に来てほしい」ということを採用プロセスの中で共通認識を持って積極的にアプローチをかけていく。そのバランスを先手を打って見ていって、共通認識を持つというのは結構重要だなと思います。
あと、もう一つはやはり色んな働き方のメンバーに気持ちよく働いていただくとなると、仕組み化、稼働管理をきちんとしています。当然アイディアが閃いたらすぐ動けるように仕組み化をしていくのですが、あんまりやりすぎるとマニュアル化が進み過ぎちゃうとか、ちょっと面白さがなくなっちゃうとか、そういったことがないようにバランス感は課題意識をすごく持っていて、難しいなと思っているところではありますね。
XTalent上原:採用はやはり非常に悩ましい問題としつつも、意志を持つことって非常に重要ですよね。とはいえ、多様性=いろんな観点を持つということなのでまとまりにくいという懸念もあると思うんですけれど、そういう時に気を付けられていることってあるのでしょうか。
ワンダーラボ中村さん:本当にそこは大きくて、多様な中でどこを共通でもつのかということはやっぱりあります。一般的には、ミッション・ビジョン・コアバリューへの共感だと思うのですが、弊社もまさにそれでして、特に採用プロセスの中でそこにどれだけ共感していただけるか、ということはみています。あとは最終面談でも代表の川島が必ず候補者の方にお会いし、そのフィットを確認してオファーをさせていただく流れにしています。
Antaa西山さん:今の採用観点でいうと、私たちはまだまだこれから成長をしていく会社なので、現在の規模で言うと社員は7名なのですが、今年で倍にしていく中で、これまでのメンバーとはまた全然違う職種のメンバーが今後入ってくるところです。弊社はグループインしているので、親会社のメンバーが一緒にプロジェクトに入ってきてくれる、それも1人でポンッと入ってくるというよりも、プロジェクトベースで数人がアサインされるので、スタートアップでも大企業のよい部分が使えています。
そこで、自社・親会社・また外から新入社員が入ってきて今の組織とはまた違った組織になってくるとなると、採用においてどうしても社長や私が面談すると、もう目の前のこの人が魅力的にしか見えなくって来てほしいという気持ちがあまりにも強くなってしまうこともあって、親会社のメンバーにも面談に入っていただいています。そうすると、少し客観的な目線で「Antaaにこういうところがフィットしそう」とか、切り込んだ質問をしてもらったりして、みんなの目で、Antaaに合いそうだよね、むしろここは懸念だよね、でもここはこういう風にしたら潰せるよね、という風に候補者をみるというのが、今やっているところです。
今のメンバーでやっていて凄く面白くて、今後もやっていきたいなと思っている施策があるのですが、私がリクルート社にいた時に「褒メール」というものをやっていたんですね。何かと言うと、例えば私たちがチームだとすると、「今週一週間は中村さんのいいところを褒めましょう」と褒められるターゲットを決めて、そうすると上原さんや私は、中村さんの仕事を一生懸命見て、金曜日になったら中村さんの良かったところをメールにめちゃくちゃ書きまくるんですね。もう中村さん褒められデーみたいな感じで。次週になったら褒められるターゲットが変わってーといった感じで、パートメンバーも含めて全員それが回ってきて、全員でそれをやるというのを実施していて、このおかげでいいチーミングができていたなと思ったので、Antaaでも活かそうと思いました。
Antaaでは「褒メール」のように一人をターゲットというわけではなく、2週間に1回、全体会をやっているのですが、その時に「褒め褒めシート」を作りまして、スプレッドシートでマトリックスになってるのですが、褒められる人と褒める人になっていて、その人の仕事を見て褒めるところを書いてもらうようにしています。そうすると同じプロジェクトに関わっている人以外の仕事も見る・知るきっかけになるんですね。その人の日報を見て、こういう観点がいいなとか、インターンのこの人はこんなに頑張っているんだ、というのを全員に知ってもらっています。仲間の仕事を知るきっかけづくりだけじゃなく、褒められて嫌な気はしないし、「どんなに嫌なことがあっても、褒めることしか書かないでください」って決めているので、褒められてちょっとクスッと笑っちゃうみたいな。みんな、シートを書く時間じゃないのに結構スプレッドシートを開いて見てくれている、という状況もあって。違いを受け入れることというのは、組織が大きくなっていってもまだまだできることだなと思っているので、これからも続けていきたいと思っています。
XTalent上原:その取り組み、めちゃくちゃ面白いですね!非常に自己肯定感が上がって心理的な安全性も生まれそうですね。
Antaa西山さん:是非やってみてください!
ワンダーラボ中村さん:2週間に1回のサイクルでやる、というのはかなり浸透してないとできないですよね。
Antaa西山さん:そうですね。みんなが日報を書くチャンネルがあるのですが、私たちは行動指針が10項目あり、その内の1項目を選んで書いてそれに対して自分ができたとかできなかったを報告してもらうんですね。例えば「窮地の仲間を助ける」というのがあるんですけれど、そこで「今日は僕はAさんに助けられた」というのが書いてあったりするので、そういったものを見ながら書いてもらっています。
XTalent上原:ちなみに1つ質問がきています。
Antaa西山さん:みんなやっているかもしれないですけれど、Slackのスタンプを活用しています。例えば「ありがとう」って言葉では言いづらいかもしれないけど、ありがとうスタンプとかニコニコしてるスタンプとか。あとは行動指針のスタンプを作ってるんですね。そうすると、行動指針に「これが良かったよね」ってあれば押しやすくなると思うので、褒められるの苦手かもしれないけど、スタンプ付けられてそんなに嫌だな…とは思わないと思うのでスタンプは活用しています。
あとは褒めるは、「書く時間もこの時間内で書いてね」と決めていて、、全員強制的に関わるんですよね。嫌だなと思っている人もいるかもしれないですけれど、自分が自身の仕事を知ってもらって褒められて嬉しかったら、他の人にもしたいって思うかなと。そもそも何故それをやっているかというと、やはり私たちのサービスの中で、先生方が「Give First」でやってくれているからなんですね。見返りもないのに、誰かが相談したら回答してくれてという風に「Give First」なので、私たち自身がGive Firstである必要があると思っています。自分がしてもらって嬉しかったことは、サービスにも活かしたいなと感じると思うので、このありがとうが生まれる循環を仕組みの中で、褒める褒められるというのに自分たちが慣れてサービスに活かしたいと思って取り組んでいます。
多様な人の声をどう拾うか
XTalent上原:褒め力のトレーニングになりそうですね。では、最後の設問ですが、「現状課題と展望」ということで、これから取り組まれていきたいこと、まだまだこういう課題があるということ、率直なお話を伺えたらと思います。西山さんからいかがでしょうか。
Antaa西山さん:やはり組織が大きくなっていく時に、色んなスペシャリティの人が入ってくることに対して、褒め褒めシートのような仕組みだけじゃなく、プロジェクトとしてうまくいくとか、事業としてうまくいくことを想定した時に具体的な課題にはまだ出くわしていないので、そういったことを先に経験している方がいたら聞いてみたいです。ただ、乗り越えた先にある未来があるので、、そこに必要な人が入ってくることをわくわくしながら採用を頑張ろうと思います。
XTalent上原:そういった観点で中村さんからはいかがですか?
ワンダーラボ中村さん:色んな課題が随時出てくるので、1つあるのは、今までだとみんなで「これってどうやったらよくできるのかな」ということを話し合えたのですが、人数が増えてきた時にそれを全員で話し合う訳にもいかない規模になってくるんですね。当然そういうカルチャーや組織担当のメンバー、マネージャーメンバー中心に話したり、あるいは関心を持っていそうなメンバーにヒアリングをしたりしながら進めるのですが、そこで本当に「これが欲しい」「大事だ」と思っている人の意見を拾えているだろうか、やっているつもりだけになって実は拾えてないんじゃないかなど、そういったことが今後考えられる課題になってくるかなと思っています。分かった気にならない、やっている気にならないように自戒しながら、いかに意見を言っていただけるかということを組織全体でやっていくということが、1つ課題だと感じています。
XTalent上原:確かに、その「拾う」というのが今どんどん社内のコミュニケーションがオンラインなっていくにつれ、肌感で掴みづらいというのはどこの会社でも起きているのかなと思います。何かそこで、こういった担当を1人置こう、こういった取り組みをやっていこうなど考えられていることはありますか。
ワンダーラボ中村さん:最近そういった組織、コミュニケーションをテーマに動いてもらうメンバーに参画いただきました。あとは弊社は出社をしてもしなくてもいいというスタイルにしているのですが、出社したいと思うきっかけ作りのためにランチをサポートしたり、あるいはこれは私が半分プライベートでやっているだけなのですが、週に1回ピザパーティーを会社でやっていて、そういったところでちょっとずつお互いにカジュアルに言いたいことを言えると思ってもらえたらいいなと。
XTalent上原:組織としても個人が何か想いを伝えたり、知ったりという場づくりの取り組みをされているのですね。
ワンダーラボ中村さん:それをし続けるしかないのかなと思っています。
XTalent上原:もっともっとお話しできそうなことがたくさんあると思っているのですが、いいお時間になってまいりましたので締めたいと思います。すごく具体的なお話から考え方のお話までありがとうございました。
登壇者の皆さん:ありがとうございました!
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