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方法:センスを良くする

この記事が提供するもの

前提としての課題意識

いいセンスだ
…と言われたいのは、人類共通の普遍的欲求です。
しかし、そう言われるまでの道のりは自明ではありません。
そこで、「いいセンスだ」という評価に至る再現性の高い道筋・方法を確立したいという欲求が自然と生まれてきます。
つまり「センス」なるものをハックしたくなるわけです。

ハックするには、まず対象の構造や現象の機序についてよく理解する必要がありますが、それについては「仮説:センスとは」で筆者なりの仮説を、

…という図をもとに、次のように整理しました。

ある文脈におけるセンスとは、その文脈に関連した意図的介入を行なう主体に対して評価者(主体あるいは介入の対象と同一の場合もあれば別の場合もありうる)が見出す、感受機会(の豊かさ)、分解能、推論力、実現技量への、評価者視点での総合評価

仮説:「センス」とは

では、「センス」がこのようなものだとして、どのようなプロセスでセンスを良くすることが可能なのか、その具体的ハック手順を示すことが、本記事の課題です。

課題意識・疑問に対して本記事が提供するもの

筆者がこれまで書いた記事のまとめ+αの結果として、意図的に「センス」を良くするプロセス案として下図を提供します。

センスを良くするプロセス

0.評価者とその価値観を把握する

すごく当たり前ですが、とても見落としやすく、しかし非常に重要な点が、センスの評価を行なうのは評価者であるという点です。
評価者は介入行動の主体である場合もあれば客体である場合もあり、また、まったく見知らぬ第三者である場合もあります。

例えば、近所に生鮮食品の安さを売りにしたチェーン展開の大型スーパーができたとしましょう。
近隣住民の多くは歓迎するかもしれませんが、付近の商店街で八百屋や肉屋や魚屋を営む事業主は苦々しい顔をしそうです。
このように、同じ状況でも評価者が違えば評価が異なり、状況評価を起点に生まれるセンスへの評価も当然に異なってきます。

そして、評価者が異なることでセンスへの評価が異なるのは、評価者ごとに異なる価値観を持っているからです。
この価値観を把握することは「評価者が状況をどう評価しそうか」という、センス評価のメカニズムを推論する際に根幹となる情報です。

  • 本当は顧客が評価者であるべきなのに社内の権威者を評価者としてしまう

    • 例えば「売れるプロダクトを作りたい」…というような場合

  • 本当は社内の権威者を評価者とすべきなのに顧客を評価者としてしまう

    • 例えば「出世したい!」「給料上げたい!」…というような場合

  • 本当は自分が評価者であるべきなのに他者を評価者としてしまう

このような誤りを犯すと、たとえその後のプロセスをどれだけ賢明かつ懸命に行ったとしても、真に満足できる「いいセンスだ」的な結果を得ることは難しくなります。

冷静かつ正直に評価者を選び、虚心かつ慎重にその価値観を把握しましょう。

1.感受機会を増やす

刺激としての情報の感受は、その情報の解釈やその情報をもとにした全ての推論の大前提となります。
したがって、感受機会を増やすことは(評価者にとってより良い未来を導くであろう)センスの良い介入に不可欠なステップとなります。

感受する刺激情報は量も大事ですが、「後の祭り」を防ぐためには鮮度が、状況変化に耐えうる応用性の獲得には多様性が、それぞれ重要となります。

多様で高鮮度な情報を豊富に感受できる環境に身を置く方法は、文脈や立場やその他の要素によって千変万化で、残念ながら筆者の力量では一様に語ることができません。
しかし、筆者の経験に沿って言えば、感受機会の豊かな環境に身を置くには一定の成果 / 実績 / 能力 / 資格 / 肩書などが求められるというようなケースが珍しくなくあります。
もしまだ感受機会の豊かな環境に身を置けていない場合は、そのような環境に身を置くこと自体を最初の戦略目標とし、そのために必要な条件を満たすような介入行動を優先することを考慮する価値があるとは言えます。

2.分解能を高める

感受した情報をもとに分解能を高める具体的な手立ては、「方法:分解能を高める」に、下図のような整理で記載しました。そちらをご参照ください。

3.推論力を高める

まず「推論力が高い」という状態を、

  1. 妥当性の高い推論を

  2. 低コスト(ヒト・カネ・モノ・コト・ジカン・ココロ etc.)で

出力できる状態と仮定します。

その上で、妥当性の高い推論であるためのポイントは仮説:「妥当な推論」の構造にまとめたので、そちらをご参照ください。

また、「低コストで」という部分については、分解能を高める過程や、介入に対する状況変化予測、あるいは評価者による状況評価についての予測へ、方法:本質へと近づくで示した下図プロセスで取り組む経験をひたすら多量にこなすことで可能となります。

なぜひたすら量をこなすと低コスト化するのか…については、その理論的な背景を方法:習って、考えて、それから慣れろ。にまとめてあるので、そちらもご参照ください。

4.実現技量を高める

この方法については、領域や技術段階ごとに内容が異なり、一様に語ることはできないため、本記事では言及を避けます。

まとめ

ここまでの議論で触れた内容をまとめると、下図のようなプロセス図となります。

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