Case Study - 番外編「本末転倒~得られない教訓」
中世のイギリスにて、
階級社会における特権階級に育った男性がいた。
しかし、彼は親と意見が合わず、
対立の結果、家を出て、外の社会に飛び出した。
(いわゆる放蕩息子というパターン)
とある女性と出会い、恋に落ち、
結婚をして、子をなしたが、
彼は生きる智慧と力に乏しかった。
…と、いうかまったくの世間知らずだった。
所詮は温室育ちの育ったお坊ちゃん。
階級意識から来る気位故か、人に頭を下げることが出来ない。
自分が何でこんな仕事をしなければならない?と、
いまや労働者階級に身を置いているのにも関わらず、
プライドの高さから周囲を見下し仕事を選り好みし、
問題を起こしてはイヤになってすぐ辞めてしまう。
自分はもっと良い仕事を与えられるべき存在であると…
こんな安い賃金でこんな雑役をしたり、
雑な待遇を受けて甘んじていい人間ではないのだと…
貴族だったときの考えや習慣を捨てられない。
そんなんだからいつも貧乏で金に困る生活。
当然ながら家賃も滞納、衣類も着た切り。
乳幼児に満足な滋養も与えてあげられない。
清貧生活を通り越して、もはや餓死寸前。
家を出た当時から着ていた立派で高級な上着。
これを売ってしまえば、いくらかは金になるだろう。
そう気づいた時にも、
それは自分の育ちの良さの証明でもあるので、
売ることを選ばなかった。
良いコート、上質なシルクのシャツを羽織る自分を、
「お前らとは違うんだと」
他人と自分を隔てる身分の証の境界線にして。
すでにそれらはとっくの昔に汚れきって、
穴があき、擦り切れているというのに…
ある日、彼が我が家に帰ると、
寒い部屋で妻と子が死んでいた。
餓死だった。
暖房もつきた寒い部屋で、
妻と子はやせ細った身体で冷たくなっていた。
彼は後悔した。
愛する人を亡くしたことを。
そして気づいた。
自分のプライドが妻子を殺したことに…
早く故郷に帰って 父母に謝罪し、
借金の申し込みをすればよかった。
いや、上等な自身の衣類を売って、
少しでも金に換えて、
生活費の足しにすればよかったのだと…
どんな仕事でも与えられたことを感謝して、
文句を言わずに働けばよかったのに…
やがて妻子の後を追うように、
飢えと渇きと絶望の中、すぐに彼も死を迎えた。
その人生を振り返り、
前述のようなことを繰り返し後悔するものの、
同じ過ちを二度と繰り返すまいと、
そのように決心するも…
人が変わるのは簡単ではない。
20世紀の終わりに日本に生まれたその人物は、
当然「彼」であったことは覚えてはいなかった。
だが、「貧乏」を憎み、「お金」に執着し、
お金のない状態とお金を失うことに対して、
過度な恐怖心を抱いていた。
そしてホワイト・カラーの仕事こそがすべてであり
名のある企業に勤務することが大事で、
人様に自慢できるような仕事であるか否かが、
仕事の価値基準だった。
もし、こちらの記事を読んで頂いて、面白かった、参考になった…とそう思って下さったり、サポート下さいましたならば、心から嬉しく思います💛