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推し活と子育てを前向きに両立できる仲間を増やしたい
私は男性アイドルが長年好きで、いわゆる「推し活」をライフワークとしているオタクだ。
アイドルオタクとしてデビューしたのは小学3年生の頃。その後中学、高校、大学と経て社会人になり、オタクのまま結婚をして、去年ついに母になった。
アイドルの応援は推し活なんて言葉が生まれる前からしていることで、何も特別なことではなく、もはや人生で。
それなしに結婚や育児をすることなんて、ありえない。
そうは言っても、独身時代と全く同じように活動できるかと言うとそうはいかない。
それが原因で推し活をとるか、結婚・出産をとるか……という二択になってしまっている人の話も聞く。
しかし、さまざまな課題を抱えながらも、私は出産してからますますアイドルオタクである自分に日々救われている。
もちろん、結婚するもしないも、子どもを持つも持たないも自由で、どちらがいいも悪いもない。
でも、もしかしたら推し活と子育てを両立することで人生の良い循環をつくる、というのは希望がある選択肢なのではないか?
自分の生きがいとなる活動と、大事な家族を天秤にかけてどちらかを泣く泣くあきらめて、人生の幅を狭めるなんてあまりにももったいなさすぎる。
既にその両立を立派にやり遂げている人たちも多いけれど、母になったばかりのスタートラインに立った私だからこそ、できることがあるのでは。
自分がもがきながら得たヒントを発信し、共有することでどちらも前向きに両立できる仲間を増やしたい。
そんな夢を、持つようになった。
両立にはどんな課題があるのか
独身時代はコンサートや舞台があれば時間とお金が許す限り自由に申し込みをして、好き放題行っていた。結婚してからは、夫と事前にスケジュールアプリで共有して事前申告してから行くようになり。子どもが生まれてからは、さらにハードルが上がっている。
年始から複数の舞台やイベントに行かせてもらったが、夫に娘を見てもらうことも、娘に留守番しててもらうことも、とんでもない罪悪感を覚えた。
一緒に行く友人とも、以前なら公演前後でカフェや居酒屋に行って語り合う時間がセットだったが、そんな時間がとれないことに申し訳なさを感じた。
自分で稼いだお金とはいえ家族のために使うべきお金を、チケット代やグッズ代にかけていいのだろうか?という思いも、どこかにある。
とにかく、時間とお金の使い方に、悩みが尽きない。それもそのはず。推し活を優先順位1位にしていた人生に、どう考えても優先順位が1位の家族が登場したのだから。
「アイドルオタクな母親」の何がよいのか
人生の中であたりまえに続けてきた活動に、こんなに罪悪感を覚える日がくるなんて。妊娠中からある程度の覚悟はしていたが、実際経験するとなかなかしんどい。
果たして両立なんてしていけるのだろうか……という今後に対する不安もある。
それでも。
私にはアイドルオタクをやめる選択肢はない。
両立に課題を感じているとはいえ、やっぱりアイドルオタクでよかった!と、母になってあらためて感じているのだ。よかったことは、いくつもある。
自分の予定をあきらめなくなる
子どもが生まれてから、外出の機会がとにかく減った。自分だけのための外出なんて、簡単にあきらめてしまう。美容院とかマッサージとか、それまで定期的に行っていた予定さえ不定期になっているけれど……絶対に譲れないのはアイドルのコンサートや舞台。
これだけは、前々から夫や母に頼みこみ、申し込む日程も綿密に調整して。もちろん周りの協力あってこそだが、ここまで外出に対して本気になれるのか……と気づかされた。
アイドルオタクでなければ、きっと私は人に頼ることをもっと我慢してたし、家に引きこもっては鬱々としてたと思う。
譲れないものがあると生活にメリハリが出て、たまにある特別な日が日常の活力になる。
そんなことを教えてくれたのが、アイドルオタクとしての活動だ。
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仲間の存在に感謝できる
妊娠・出産を経て、仲良くしてくれているオタク仲間たちとの関係について、不安があった。
仲良くしてくれている仲間には独身の人たちも多く、私の環境の変化によって「別世界の人になった」と思われてしまうのではないか……と勝手に不安を感じて。
でも、それはただの思い過ごしだった。「私にはわからない世界だけれど」と前提を共有してくれた上で、変わらない関係でいてくれるどころか「すごいことをしてる」と励ましてまでくれるのだ。
以前と同じようにオタク活動ができない自分にも、母親として未熟な自分にも自信をなくす日々の中で、彼女たちの言葉はものすごい力になる。
勝手に世界を分断していたのは、私。ライフステージの違いで離れ離れになりやすくなる30代においても、変わらず友人でいてくれる仲間の存在にあらためて感謝する日々だ。
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ママの人もそうでない人もライフステージはさまざま。
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家族に感謝する機会が増える
家族の協力なしに、オタク活動なんてできない。これはもう、間違いない事実だ。
どれだけ楽しみな予定でも、その間夫に留守番を強いること、娘の面倒を頼むこと、娘におっぱいをあげられないこと……いろいろ考えると罪悪感はどこかで常にあり、外にいてもソワソワして。帰り道はいつも足早になっている。
それでも「帰ります」のLINEをすると「気をつけて」と返信をくれて、申し訳なさそうに帰れば「特別なことは何もしてないけど」とフラットに接してくれる夫。
パンパンに張ったおっぱいを、勢いよく飲んでくれる娘。
帰宅後、勝手に感じる気まずさを解消してくれるところまで含めて、二人には感謝しかない。オタクでなければ、こんなありがたみを感じることはきっとなかった。
アイドルから生きる力がもらえる
応援しているアイドルたちは、とにかく忙しい。私たちが把握できる範囲だけでも信じられないスケジュールなのに、それ以外に私たちの知らないもろもろがあると考えると、ゾッとする。
想像を絶する大変さで、睡眠時間も不十分で、疲れているはずなのに……そんな風に一切見えないのが、彼らのプロフェッショナルなところだ。
それに比べて自分はどうか。いや、比べるなんておこがましいのだけれど……深夜から明け方にかけての授乳による寝不足に、いつ泣き出すかわからない人への対応。大変なのは間違いないけれど、彼らに比べればまだまだ序の口だ。
会社員としての仕事は休み中だけれど、自分も母親のプロとしてがんばろう、と彼らを見ていると不思議と力が湧いてくる。
推しと新たな関わり合いができる
自分が母親になったことで友人や家族との関係だけじゃなく、応援している推しとも新たな関係性を築けている。
イベントで本人と話す機会があったときには、娘が生まれたことを報告。「未来のファン仲間にしたいと思う」と伝えたら嬉しそうにしてくれたし、娘がいる中でイベントに出向くことについて大丈夫だったかと、気にかけてもくれた。
また別な推しのステージではグッズとしてぬいぐるみが発売されており、ほぼ自分のためではあるが娘のおみやげも兼ねて持ち帰った。
最初は人見知りしていた娘も少しずつ目を合わせて、新たな友達として迎え入れてくれて。そのことをSNSに投稿したところ公式アカウントから「いいね」をいただき、こちらの感謝が伝わった気がして嬉しく思った。
こんなことは母親にならなければ、経験できないことで。グッズをこんな風に迎え入れる未来が待っているなんて、数年前は想像もつかなかった。
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他にも、授乳中に見るコンテンツに困らない……など実用的なこともいろいろあるが、どれも人間関係や日々の暮らしにプラスになることばかりで。
もう私には、子育てとの両立を叶える以外の選択肢はないとハッキリ言える。
自分なりのヒントを発信しながら「読むだけのお悩み相談所」をつくりたい
推し活と子育ての両立。目指したい気持ちは強く持ちながらも、まだまだ悩みや課題も多い。
でも、一つひとつのハードルと向き合うことで周りの頼り方や、自分なりのメンタルコントロールの仕方などを少しずつ見出せている気もする。
もしかしたら、同じ悩みを持つ母デビューしたての人もいるかもしれないし、これから結婚や出産を考えるうえで漠然と不安……という人もいるかもしれない。
アドバイスなんて大層なことはできないけれど、自分はこんな葛藤があってこうやって乗り越えられたよ……!という気持ちや具体的な解決策を言語化して、共有して、少しでも前向きに暮らす仲間が増えたらとっても嬉しい。
そのためには「オタクな母」としての日々をとにかくnoteやSNSに書き残したいと思う。そしていつかZineのような形に残したい。それが一人でも多くの人に届き、仲間が増えることが夢だ。
数年前、オタク仲間にインタビューをする企画をしていたことがあった。(当時のまま旧ジャニーズ表記が残っておりますがご了承ください)
同じアイドルオタクとはいえ、それぞれに違う価値観がある。そんな普段なかなか聞けない話を深掘りしたくて、さまざまな年齢・ライフステージのみなさんに話を伺った。
インタビューする中で私の世界が広がったのはもちろん、読んでくださった方からも「こんな価値観を持った人がいるのか」「共感できる」などさまざまな反響をいただいた。
アイドルの所属事務所の新会社への移行などにより私たちを取り巻く環境が大きく変わり、いつしかインタビューも依頼しづらくなり、今は休止状態になっている。
でも、また再開することができれば、今度は結婚・出産との両立についてなどもう少し踏み込んだ話も共有して、「読むだけのお悩み相談所」として新たなものにできるかもしれない。
これも、叶えたい夢の一つだ。
今は育休中だけれど、ここに仕事まで入ったらどうなるのか。子育てといってもまだ0歳、しかもたった2ヶ月しか知らない中で、今後子どもが成長していったらどうなるのか。
既にそんなフェーズも乗り越えた先輩方に比べれば、私の経験なんて微々たるものかもしれない。
でも、そんな見えない不安ばかりの私だからこそ、これから経験しながら伝えられることがきっとあると思う。
「少子化対策」なんていったら唐突だし大袈裟だけれど。案外、趣味との両立はできるのか?みたいな一見小さそうなことが、結婚や出産、子育てなど人生プランを考えるきっかけになって社会問題の解決にもつながるのでは……とも思ってみたり。
まずは一歩踏み出すために、今日この記事を綴った。
一人でも多くの人に届き、仲間が増えるきっかけになりますように。
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